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2008年の米大統領選挙は、ブッシュ大統領が2期8年の任期制限で不出馬、チェイニー副大統領も早々と不参加を表明し、1952年以来現職の正副大統領が共にいない選挙となる。両者がそろって予備選挙にも参加しないのは、1928年以来80年ぶりのことになる。現職不在の選挙とあって、名乗りをあげる候補者が相次ぎ、正式に立候補を表明もしくは資金集めのための「準備委員会」を設置した有力候補は、民主党が9人、共和党が10人にのぼっている。 民主・クリントン 共和・ジュリアーニ優勢も情勢は不透明最近のラスムセンリポートやCNNの調査を見ると、民主党ではヒラリー・クリントン上院議員、共和党ではジュリアーニ前ニューヨーク市長が優勢を保っているが、政党間の戦いでは優位を確立した候補はまだいない。ニューズ・ウィークの調査では、共和党のジュリアーニ前市長は民主党のクリントン上院議員に1ポイント、黒人のオバマ上院議員に2ポイントの差をつけているが、2004年の副大統領候補だったエドワーズ前上院議員には逆に3ポイントのリードを許している。エドワーズ候補自身は、民主党内部の支持率はクリントン、オバマに次いで3位だが、最初に党員集会が行われるアイオワ州では1位という調査もあり情勢はまだ不透明だ。2月には早くもネバダ州で民主党候補者のフォーラムが予定されるなど指名争いが本格化する。民主党が予備選挙・党員集会の日程変更両党の候補者指名争いにも劣らず熾烈を極めているのが、各州の予備選挙・党員集会の実施日を巡る先陣争いである。全国党大会で大統領候補の指名選挙に出席する代議員の多くは各州ごとにコーカス(党員集会)やプライマリー(予備選挙)で選出されるが、民主・共和両党とも、最初にアイオワ州の党員集会、続いてニューハンプシャー州の予備選挙を行い、そのあと各州の予備選挙が解禁となって6月まで続くというのが最近の流れであった。ところが、民主党全米委員会は、昨年8月、2008年の選挙日程を大きく変更することを決めた。1月14日のアイオワと22日のニューハンプシャーの間の19日にネバダの党員集会を割り込ませ、29日にサウスカロライナの予備選挙を前倒して実施したあと、2月5日に他州の予備選挙・党員集会を解禁するというものである。ニューハンプシャーが反発・クリスマスの投票もこれに対して、強く反発しているのがニューハンプシャー州である。ニューハンプシャーは、かってはアイオワに先立って全国で最初の予備選挙を実施してきており、「同州での勝利なしには大統領候補にはなれない」と言われるほど、その後の選挙戦に極めて大きな影響を及ぼしてきた。2004年の予備選挙でも、“忘れ去られていた”民主党のケリー候補がアイオワに続いて連勝、一気に指名争いのトップに躍り出てそのまま独走した。同州は、全米委の決定の前に州法を改正し、「全米最初」の地位を守るために、予備選挙の日程を変更する権限を州務長官に付与している。全米委は決定を守らず1月22日以前に実施すれば代議員の数を半減すると罰則規定を設けているが、「ネバダの後塵を拝することだけは許されない」として、ガードナー州務長官も前倒しを示唆している。場合によっては、2008年1月1日以前、ことし中にクリスマス・キャロルを歌いながらの投票もあり得るといった観測も出ている。フロント・ローディングの増加ニューハンプシャーの予備選挙以上に注目を集め、また、選挙戦に大きな影響を与えそうなのが、予備選挙・党員集会の「フロント・ローディング」(前倒し)である。大統領候補の指名争いでは、各州がより大きな影響力を発揮しようと、「解禁日」以降できるだけ早く予備選挙や党員集会を実施しようとする。これが「フロント・ローディング」と呼ばれるもので、1988年に南部の16州が、3月の第1火曜日に予備選挙や党員集会を実施した。「スーパーチューズデイ」と呼ばれ、指名争いの中心的役割を果たすようになったが、これ以降「フロント・ローディング」の動きが加速され、「解禁日」に予備選挙や党員集会を実施する州が増え、「ミニスーパーチューズデイ」(ジュニアーチューズデイとも呼ばれる)が誕生した。カリフォルニアなどの“大きな州”が予備選挙を前倒し来年は、民主党では、ニュージャージーなど10州が、「解禁日」の「ミニスーパーチューズデイ」に予備選挙・党員集会の実施を決めている他、代議員数の多いカリフォルニア・フロリダ・イリノイの3州も参入を計画している。特にカリフォルニアは、民主党の強いところでかつ全米一の代議員数(2004年は441人)を持ちながら、前回はケリー候補の勝利がほぼ確実になっていたため、「スーパーチューズデイ」の予備選挙では存在価値をアピールできなかった。「一票を有効に行使したい」という有権者の願望が強く、また予備選挙の重要度が増せば候補者の広告収入の増加など経済的効果も大きくなるため、シュワルツェネッガー知事も「関与を深めよう」と前倒しを推進している。指名争いが序盤戦で終結の可能性も前回「ミニスーパーチューズデイ」に参加したのは7州で、選出された民主党の代議員は全体の8%弱であったが、来年カリフォルニアなどが参入すると、全体の35%近い代議員が選出される見通しである。「ミニ」が3月の「スーパーチューズデイ」に取って代わり、序盤戦で早々と指名争いに事実上のピリオドを打たれる可能性もある。民主党全米委は遅い時期に予備選挙などを実施する州には代議員数を増やすボーナスを与えるとしているが、日程変更は資金調達や選挙戦術の変更など指名争いに大きな影響を及ぼすことは確実で、最終決着がどうなるか注目される。(仁平 俊夫) |
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2007年01月29日
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ロシアのプーチン大統領とインドのマンモハン・シン首相の会談がインドで行われたその日、たまたまインドに滞在中で、現地の英字紙ヒンドゥー・タイムスやタイムス・オブ・インディアなどの報道を目にする機会があった。帰国してから日本の報道を読み返してみると、いくつかの異なったトーンの存在に気づく。 一つは当然の話ながら、インドの視点からするこの会談の意義付けである。中華思想では人後に落ちないインドのことだから、これまでも正しかったインドの国策ないしは外交政策にまた一人支持者が現れた、という位置づけである。NSG (原子力供給国グループ)を中心とする原子力問題については特にその印象が強かった。このあたりは、バジパイ前首相のいわば政敵である国民会議派のシン首相になっても、対露政策が一貫していることのコンテクストで読むと、味わいは深い。(蛇足ながら日本で民主党が政権を取ったらこれを期待できるのであろうか?) 第二に、対米国を意識した論調である。武器の調達先を従来のロシア(ソ連時代から)一辺倒から大幅に対米傾斜を強めているインドが、改めて戦闘機と軍用輸送機のロシアとの共同開発を謳うと同時に、ロシアのGPS(全地球測位システム)への参加を表明している点をことさらに強調する報道は、中国との三ヶ国協力拡大の重視とともに、米国よ耳を傾けよ、と言わんばかりである。 第三は、世界の一流国としての自国の位置づけである。これは第一の点とも関連するが、これまではともすると世界で認められたインド人、世界が認めざるを得ないインドの経済力、といったトーンが強かったのに比して、世界世論とまではゆかないが、世界政治情勢をリードする一員としての自負が垣間見える。日本の報道が、単にインドとロシア(いわゆるBRICs)のコンテクストで捉えているのに比して、際立った特徴を示しているといってよいだろう。 さまざまな国内矛盾を抱えながら、とにもかくにも11億の国民が「民主主義体制」を維持している、というのは驚異というほかはあるまい。わが国との関係において、同文同種、一衣帯水の間にありながら共通の対話文化・政治文化を見いだしかねている中国との決定的な差異はここにある。にもかかわらず、インドを巨大市場としてしか見ない日本、それとてもインドのIT能力の活用について欧米のはるか後塵を拝している日本、それを象徴的に表現した報道姿勢かもしれない。
(入山 映) |
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