フクロウ見参
季節の移り変わりは早く、森も樹の葉が広がり空を覆って暗くなってきました。
そして匂いも感じられるようになりました。
梅雨のない北海道はこの時期さわやかに晴れ上がり、日中の最高気温は札幌でも25℃を越えることがあります。
けれど、森の中は直射日光がさえぎられ、快適な森林浴にひたれます。
オゾンが一杯
セリ科のオオハナウドが大きく成長して、傘模様の白い花があちこちで目立ちます。
エゾハルゼミがうるさく鳴く森を歩いていますと、顔見知りの人に声をかけられました。
「フクロウがいたよ」
この女性、家庭のわずらわしさから解放されたいと、ヒマさえあれば森を歩いている重量級おばさんです。
帰りかけの私はUターンして、午前中歩いた反対方向の森に再び入りました。
バズーカ砲のような望遠レンズをつけた早耳の一群がすでに腰を据えていました。
カメラが向いている森の上部を見やりますと、葉が生い繁っているだけで何も見えません。
目を凝らしますが、葉が邪魔をしてなかなかフクロウを見つけることができません。
珍しい鳥がいる時には必ず居合わせる常連のセミプロさんもいます。
指で指す方向を追っていきますと、高木の上部の枝にエゾフクロウが3羽も止まっているではありませんか。
幼鳥 フクロウ
この森ではフクロウは時々見かけますが、ほとんどが冬で、夏に観察できたのは初めてです。
葉が生い繁っている上、フクロウが人を警戒して奥地に入ってしまうためです。
それが遊歩道から見えるところにいるとはびっくりです。
最初に撮影できた写真です。
3羽ともお尻を向けています。
人間を警戒しているのでしょうか、それとも寝ているのでしょうか、朝からずっとこの姿勢だそうです。
持久戦です。
3羽ともヒナから孵ったばかりの幼鳥で、少しは飛びますがほとんど枝にしがみついて、親鳥が餌を持ってくるのを待っているようです。
「こちらに向いたよ」
突然 双眼鏡で観察していた人の声が響きます。
一斉にカメラを構え、パチリパチリパチリ。
大の男がいうのも恥ずかしいけど、クリリとした目が「メチャかわいい」。
ちょっと目をつぶると「はい、チ〜ズ」
フクロウに向かって声をかける女性アマチュアカメラマンもいます。
森に笑いが響きます。
フクロウ百態
暫くするともう一羽がこちらに向いてきました。
さらにもう一羽も・・・
なにか、3羽で遊んでいるようです。
まるで「いない、いない、バー」をしているようです。
「3羽とも もうちょっと寄って」
「真ん中のフクロウ 目を開けて」
より良き構図を求めるカメラマンのリクエストはどんどん高まります。
フクロウ君はそんな人間の欲望には馬耳東風、再び「いない、いない、バー」です。
長い時間、体をそらしてカメラを構えている人間の方が「イナバウアー痛」を感じてきました。
ふところ深い森
最初にフクロウを観察したのが16日です。
以来、本日までの3日間、連日、地下鉄とバスを乗り継いで森に通っています。
そのたびにフクロウは数十メートルの範囲で場所を変えています。
生い繁る葉と枝で、思うようにフクロウは撮影できません。
皮肉なことに三脚を持ち合わせてなかった初日が、一番よく撮影できたポジションでした。
重装備で出かけた2日目以降まだ一度もシャッターを押す機会がありません。
フクロウはまもなく森の奥に姿を消すと思われます。
30年間この森で自然観察している先生からファックスが届きました。
「15年ほど前に作成した自然ガイドに掲載して以来の迫力あるフクロウ観察であり、森の奥深さを改めて感じた」と書かれていました。
もうしばらく森通いが続きそうです。(寄稿=望田 武司)
望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。
|