高山植物の宝庫 樽前山
北海道は緯度が高いため、低い山でもちょっと登れば高山植物を観察できます。
梅雨のない北海道、27日札幌から2時間弱の支笏湖に近い活火山樽前山(1041m)に足を延ばしてきました。
プリンのドーム
樽前山といえば、火口のなかにプリンのような溶岩円頂丘(ドーム)があって、世界的にも珍しい三重式活火山として知られ、学術的に貴重なため頂上部分は北海道の天然記念物に指定されています。
有史以来、噴火を続け、いまなお噴煙を上げています。
しかし、木を見て森を見ずといいましょうか、近づけば近づくほど頂上まで行かない限り山の全貌はわかりません。
20kmほど離れた高速道路のパーキングエリアから今年4月下旬撮影した樽前山です。
まだ残雪のある樽前山ですが、噴煙を上げている中央のドームには雪は積もっていません。
残雪が消えかかっている外輪山の少し上あたりがちょうど7合目付近です。
その7合目までは車で行くことができます。
私たちはそこから山を登るのではなく、横に歩いて雪はすっかり融けた山腹のお花畑を散策しました。
なにしろサークルのメンバーは、年金受給年齢に達している人たちが大半です。
頂上をきわめるよりはお花畑で十分といった集団です。
樽前山のお花畑
歩き始めて10分もしないうちに山腹に大きく広がる高原にでます。
すると一面の白い花にびっくり。
丸いぼんぼりのような イソツツジが私たちを迎えてくれました。
山にあって イソツツジとはいかに?
どうやらエゾツツジと呼ぶべきところを、誤ってイソツツジと呼ばれたらしいです。
イソツツジは強い芳香を放ちます。
1cmほどの花を無数につけ、近づくと濁りのない白さが神秘的です。
綿毛をつけた花があちこちにみられます。
峰を這うミネヤナギです。
高木のヤナギのイメージとはほど遠く、樽前では樹高が50cmもないヤナギです。
樽前山の主役・脇役
樽前の外輪山を横に見ながら隣の風不死岳(フップシダケ)に向かって山腹を暫く歩きますと、樽前山の主役とご対面です。
イワブクロ(写真上)です。
岩にへばりついており、花冠が袋状で鐘形になって咲いています。
火山の砂礫地にいち早く進出するパイオニア植物で、大雪山など
道内各地の山でみられますが、樽前山にとりわけ多いことから
タルマイソウとも言われています。
何となくグロテスクで、色もくすんだ薄紫の地味な花ですが、
栄養状態の悪い砂礫地でも育つ逞しい植物でもあります。
どちらかといえば白系の花が目立つ植物群の中で、色のついた花に出会うとうれしくなります。
オオバスノキです。(写真中)
ツツジの仲間で、花は紅色を帯びて鐘形です。
黄色い花にも出会いました。
ウコンウツギです。(写真下)
ウコンウツギは平地では1〜2mほどの低木ですが、ここでは岩にへばりついており、樹木とは思えません。
太平洋から吹き付ける強い風、酸性度の強い土壌など、樽前山に見られる花々は、環境の悪いところでも形状を変えて、踏ん張って咲き誇っています。
山腹の高原には木らしい木はなく、砂礫地が続いているだけです。
このため照りつける直射日光をさえぎるものはなく、女性は帽子の下にタオルをたらすなどの日除けに工夫をしています。
大噴火
4万年前、この地の大噴火で火口が支笏湖となり、石狩川の流れを太平洋から日本海に変え、膨大な火山灰で札幌を含む石狩周辺の地形を作った、有珠火山帯の一角が今歩いているところです。
その名残ともいえる酸性度の強い土壌はいまなお植物の生育を妨げており、当地を歩きますと平地とはいえ、自然の驚異が脅威となって伝わってきます。
そして、どんな小さな山でも自然を侮ってはいけないという気持ちを強くもたせてくれます。
秋に白玉のような実がなり、サロメチールの香りがする シラタマノキ(写真左)です。
葉が米粒のような コメバツガザクラ(写真右)などの高山植物が、次々に観察されます。
みな直径1cm以下の小さな花ばかりです。
中でも面白いのは イワヒゲです。大雪山以来の観察です。
幹が地を這い、枝が髭のようにぶら下がっています。
山男を連想させる名前の割には花は白くてとても可憐です。
超近距離でシャッターを切るせいか、どうしても髭に焦点があって、花がぼけてしまいます。
腕が悪くて何度挑戦しても同じで、こんな写真しか添付できず申し訳ありません。
大雪山より1ヶ月も早くイワヒゲを観察できるとは思いませんでした。
霧の支笏湖
樽前山7合目から風不死岳に向けての数百メートルのトラバースは、高山植物のオンパレードでした。
高山植物は大雪山だけではないと強く思いました。
満足して下山し、支笏湖に降りると、湖は霧に深く覆われ、周囲の山々は全く見えませんでした。
山の高い部分がピーカンの良い天気とは全く想像できません。
支笏湖は名物チップ釣りの真っ盛りです。
しかし、チップは日中深い湖底に移動するためこの時間、ボートを出す太公望は誰一人おらず、支笏湖はひっそりとした森の中にたたずんでいました。 (寄稿=望田 武司)
望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。
|