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6月24日付けの「ワシントンポスト」のデビッド・イグナティス氏のコラムは実に興味深い。
外交政策の権威者であるキッシンジャー氏、ブレジンスキー氏、そしてスコークロフト氏の3人の見解が偶然にも一致している。彼らの共通するメッセージは、「急激に変貌する世界情勢において、米国のパワーを謙虚に捉え、各国との対話を積極的に推進すべき」とのことである。 これらは外交の基本であるにも拘らず、ブッシュ政権は過去6年間、正反対のことを行なってきた。3人の外交の権威者の主張は、米国のイメージを向上させるために対話を進めるのみならず、地球規模で変化する国際的なルールや機会を学ぶ必要にある。 ニクソン政権とフォード政権の国務長官キッシンジャー氏は、「過去数百年間、我々が経験しなかった勢いで国際システムが変化している。かつては、米国は解決策のある問題と取り組んできたが、今や長い時間をかけて調整する時代にさしかかっている」と述べている。 カーター政権の大統領補佐官のブレジンスキー氏は、「国際政治の覚醒が発生しており、世界はより不安定な状態で渦巻いている。我々がかつて対処してきた問題と異なる新しくかつ変化する激しい政情と取り組むのは容易でない」と伝えている。 フォード政権と先のブッシュ政権の大統領補佐官を務めたスコークロフト氏は、「全く異なる世界において、力の行使という伝統的な手段は通用せず、国境を越えた新たなる行為者と如何に取り組むかにある」との意見である。 3人ともワシントンの国際戦略問題研究所の相談役であるが、イラク問題については、それぞれ異なるスタンスを持っている。 ブレジンスキー氏は、最初から一貫してイラク戦争に批判的である。スコークロフト氏は、イラク侵攻に反対し、ネオコンに批判的であるが、ブッシュ家と親密である。キッシンジャー氏は、イラク戦争を支持し、ブッシュ大統領とライス国務長官に定期的にアドバイスを提供している。 イラン問題に関し、キッシンジャー氏は、今後どの方向に向かうかの交渉をイランのトップレベルと静かに行なう必要があると述べ、ロシア問題に関し、ブレジンスキー氏は、現行の意見の相違を誇張して劇的に表現すべきでないと述べ、中国問題に関しては、スコークロフト氏は、中国の安定は不可欠だと主張している。 次期大統領へのメッセージに関しては、「米国は世界の問題を解決するための部分的な役割を演じ、世界の声に耳を傾けるのみならず、潜在的な敵国との対話を推進することが肝要である」との認識で共通している。 3人の老賢人の文殊の知恵を生かすことにより、不確かな激動するグローバル社会を乗り切ることができるだろう。(中野 有) |
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「私のスポーツは柔道であり、娯楽競技でない」。これは、プーチン大統領の2008年のロシアの大統領選挙の行方をほのめかす言葉である。
ロシア憲法では、大統領の2期以上の継続は認められていなく、プーチン大統領の継続は技術的に不可能である。しかし、プーチン大統領は、一度は地に落ちたロシアの威厳を回復させ、ロシアの興隆をもたらした立役者であり、プーチン大統領の身の振り方が注目されている。 KGB出身であり、東洋の格闘技を修めたプーチン大統領の奥に潜む戦略を、解読するのは米国にとって容易でない。多くの憶測が飛び交うミステリアスな状況である。 ワシントンのウッドローウイルソンセンターで、ロシア戦略のシンポジウムが開催され、冷戦終焉時の米国のモスクワ大使やレニングラードの総領事などロシアの専門家などが集まり興味深い議論が展開された。 今日のロシアの急速な回復は予測をはるかに超えるものであり、とりわけ、米国の対ロシア外交戦略の失敗は、クーデターによるゴルバチョフ大統領の失脚とプーチン大統領による権力の集中を事前に防御できなかったことにあるとの意見が聞かれた。 なるほど、ロシアの対米外交戦略は、エンルギー価格の高騰に伴うロシアの経済発展とともに反米色を際立たせている。新たなる冷戦やコールドピースの再開であるとの見方もある。 中国、インドなどの新興勢力が台頭し、新たな国際秩序の構築が、予測できない速度で進展する中、ロシア陣営にとってプーチン大統領の存在感は不可欠である。そのような状況の中で、世界大戦という異常事態において米国のフランクリン・ルーズベルト大統領が特例として4期にわたり大統領の地位を占めた例を挙げ、プーチン大統領の続投との野望も聞かれる。 しかし、現実的選択として、2008年の大統領選挙では、プーチン大統領に最も忠実な部下に大統領のポストを暖めさせ、2012年の大統領選挙にプーチン大統領が返り咲くとの見方が有力である。 経済担当のイバノフ第一副首相と社会問題担当のメドベデブ第一副首相の二人が、次期大統領のフロントランナーとして脚光を浴びている。二人ともプーチン大統領への忠誠心は高い。しかし、大統領という権力を掌握することにより、将来への予測は不確実なものとなるのは世の常である。 柔道家プーチン大統領の戦略は、如何なるものか。来年の米国の大統領選と共に動向をモニターする必要があろう。(中野 有) |





