5日、ブルッキングス研究所とSAIS(高等国際問題研究所)が、イラク問題解決に向けた新しい政策を発表した。キャピタルヒルの米軍の撤退論と一時的に米軍の増強を主張するホワイトハウスとの葛藤の中で、これはなかなかユニークな妥協案であると考えられる。
イラクを3分割(シーア派、スンニ派、クルド族)しようという大胆な発想である。この大胆な発想も、ザンビアで平和部隊の経験を持つブルッキングス研究所のオハロン研究員の発想であり説得力があるようだ。
国連の発表によると、ヨルダンやシリアに逃れたイラクの国外難民は200万人、国内の難民は170万人、そして毎月5−10万人の難民が増えている。イラク国内の宗教間の報復、言い換えれば、民族の浄化が深刻化している。90年代初頭のボスニアの民族浄化では、国際的支援が遅れ、2万人が犠牲になった。人口規模から考えると、イラクの場合は、100万人の犠牲が生まれる可能性がある。
米軍の劇的な強化が期待できない状況において、イラクの内戦や民族浄化を回避する唯一の解決策は、ソフトなイラクの分割を進めることであるとの主張である。
多数派のシーア派は、連邦制、クルド族は自治政府、そして連邦制に反対するスンニ派の構図になっている。報復の根源は、シーア派の統治に反抗するスンニ派にあるとすると、スンニ派が求める地方分権制度を、シーア派の納得がいく形で進めることが現実的である。
イラク全体においては、シーア派は中央から南方に、スンニ派は、南から中央に向かって移動する傾向にある。また、バグダッドの南部はシーア派、北部と西部はスンニ派が集中している。現在ある18の地域を宗派間で、強制的なハードの分割でなく、自発的なソフトな分割を行なう政策である。
オハロン研究員は、このソフト分割政策の実施メカニズムとして、次の重要な要素を挙げている。第一、米軍の撤退でなく米軍が住民の移動を保護、第二、周辺諸国の干渉から守る、第三、雇用の創出、第四、石油収入の分配、第五、地域機構の設立。
ソフト分割政策を実施するのに困難が伴うが、イラク情勢が悪化するにつれてイラク国民が、次第に分割政策を一つの選択肢として考察する可能性が高まっている。民族浄化という悲劇を回避する予防外交の視点からも、国連と米国の協力でソフト分割政策が実施されることを期待する。 (中野 有)
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