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朝日新聞の偏向報道を指摘する、というのではニュース性もないようなものだが、いくらなんでも、という事例に8月23日夕刊で遭遇したのでこれは指摘しておくべきだろう、と筆を執った。まず、当の記事をお読みになっていない読者のために、やや長文になることをお許しいただいて全文を転載する。 2007.8.23 朝日新聞夕刊 窓 川上泰徳
陸上自衛隊が昨年まで駐留していたイラク南部のムザンナ州のハッサーニ知事が、道路に仕掛けられた爆弾で爆死した。 日本政府にとっては一貫して駐留に協力した“恩人”である。「日本が来て、イラクの復興はサマワから始まる」と人々に夢を語った。来日したこともある。 94年夏にサマワ州知事室で記者会見をした。私を見つけると、のっけから「自衛隊の駐留に反対している新聞だな」と牽制した。批判を認めないかたくなな政治姿勢という印象だった。 知事はサマワの北にあるルメイサの出身だった。「援助の恩恵が、知事の地元や部族にかたよっている」と市民から批判が強かった。サマワ市内では知事を非難する落書きがあちこちで描かれた。 ムサンナ州は咋夏、イラクで初めてすべての治安権限が多国籍軍から州に移譲された。その治安責任者である知事の車列が爆弾テロの標的になったのだ。車が往来する道路に爆弾を埋めて待ち伏せる手法は、周辺住民の協力がなければ出来ない。 知事が属するイスラム最高評議会(SIIC)と、対抗するサドル師派との同じシーア派勢力間の対立とみられる。 自衛隊は幸いにも、政治抗争に巻き込まれる前に撤退した。一方で駐留が地域の対立を生み出した面も否定できない。 撤退からわずか1年後の親日派知事の悲報は、日本の復興支援に期待をかけたジャパネーズ・ドリームがサマワで実らなかったことを物語る。 筆者はサマワ州の事情も、州知事の人となりも知悉しない。論点はそこにあるのではなく、爆弾テロという卑劣な行為に関する記事として、これは看過できない要素をいくつか含んでいることを問題にしたい。 道徳の教科書ではないから、この論説がテロ行為に対する非難を明示の形で述べていないことはとりあえず不問に付そう。川上氏にとってテロ行為に対する憤りよりも、知事の人柄からそれもやむを得なかったと言わぬばかりの問題意識であることこそ問題である、と指摘したい。この論考が決してそういう意図ではなく、全くそういう含意はない、というのなら、川上氏は少なくとも文筆をもって責任ある発言をすべきではない。 頻発するイラクにおける道路脇に仕掛けられた爆弾によるテロは、周辺住民の協力がなければ出来ない、というのが仮に事実であったとしよう。それでは同様の手段によって爆死したこれまでの米軍を含む被害者は、周辺住民に協力させるような落ち度があったという点こそが問題であり、それなかりせば悲劇は未然に防げたと川上氏は言いたいのだろうか。あるいはその側面を指摘することこそがジャーナリストの使命だとお考えなのだろうか。 爆弾テロは「政治抗争」によるものであり、それに自衛隊が「巻き込まれ」なかったことこそこの事件において注目・慶賀されるげきことなのだろうか。再びそれが真意でないのだとすれば極めて軽卒甚だしい筆致であり、記者会見における故・知事の指摘ももっともだといわれても仕方がないように思われる。「政治抗争」がテロという手段に訴えてしまう、その風土とそれを招来した大国の責任こそが問われるべきではないのか。 これ以上の冗言を連ねるまでもなく、その他にも数多い問題点は既に明らかであろうと思われる。このブログが川上氏の目に触れることを切に期待したい。(入山 映)
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