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劉纉さんからの久しぶりのメールが届いた。安倍首相と胡錦濤主席の日中首脳会談について中国の大学生たちの反応だ。彼女たちの、現地の新聞などの報道、インターネットなどを通じての感想は安倍首相の訪中で、靖国問題で冷え込んでいた日中関係の改善へ向けて好感視していた。以下、メールを紹介する。
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安倍さんの訪中のことについて、私が見た限り、インターネットでは過激な発言は思ったよりずっと少なかったようです。(政府が何かしているのではないだろうか)。新聞では、傾向性を見せない報道(評論、解説などコメントを控え、事実中心の報道の意)が多いという印象です。多くの新聞では、安倍さんが戦争について謝罪したことが大きな見出しになり、「日中共同プレス発表」のことも大きく取り上げられた。 「安倍さんの態度変化」を評価一方、「靖国問題について明言せず」という報道も主な内容となり、面白いことに、「安倍の態度が昔と変わった」ことに焦点を当てる新聞が多い。楽観的になったかというような印象が受け取れます。私の友達では、このことについて興味を持ってない人も結構いました。クラスメートのある女の子に聞いたら、「え、訪中?」と知らなかった顔をしました。 安倍さんの印象、肯定的でも続いて安倍さんのことについて話したら、「安倍は小泉より好きかも」「安倍の奥さんは大のペ・ヨンジュンファンだと聞いた」「外祖父は戦犯だけどね・・・本人はどうかな」と、意外に肯定的な印象でした。日中関係改善へ楽観視?ある男の子に聞いたら、「日本政府は馬鹿なことしなければ、関係回復は確定だろう」「でも、もし安倍が靖国に行ったらね、もうすべてがおしまい。中国政府は意地でも屈さないかも」と、少し楽観的(?)な考えを見せました。安倍さんは中国で人気になるかも^_^(冗談)私、個人的には、まず訪中してよかったと。会って話してが何よりだと思います。そして今回の訪中で多くのことで両政府が一致したことはとてもよかったと思います。複雑な世界戦略をほっといて、中日関係だけで言うと、良いことでしょう。これからもこのようなことがたくさんあるように。 ただし、今回のことは、北朝鮮が核実験を行うとの宣言を背景にしたもので、その点について深く考える価値があると思います。実はこのごろ、ネットでは(日本の)訪中より北朝鮮のことが注目されています。 ※日中首脳会談直後の大学生たちの印象、しかも、日本語を学ぶ学生たちという事情を考えても、若者たちの素直な感想が伝わってくる。(政府が何かしているのではないだろうか)との洞察は鋭い。「安倍首相夫人がヨンさまファン」であることを知っているなど情報化時代をまざまざと映し出している、ことを改めて実感させられる。 (園木 宏志) ※劉纉さんは湖南省出身。現在、清華大学日本語学科の4年生(21歳)。2004年10月から1年間岩手大学 教育学部に交換留学。2005年10月に清華大学日本語学科に戻りました。「日中の相互理解のためになりた い」が希望なだけに、日本語の文章も、お読みになってお分かりのように抜群です。 |
劉纉の中国レポート
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日中関係が政治的に芳しくない時期、市民レベルの交流が何よりも大切です。そんな時、中国の名門、清華大学で日本語を学ぶ女子大生、劉纉さんと縁ができ、中国レポートをお願いしました。 第3回の今回は滋賀県で起きた中国人女性による園児2人殺しへの彼女の感想です。 最近、とてもびっくりしたニュースがありました。中国人女性が日本で園児を2人も殺したニュースです。中国人として、恥ずかしい、申し訳ない気持もありますし、あの女性に対して怒りのほか、悲しい気持ちも抱いています。 どうしてこんなことになったのでしょうかと、ずっと考えていました。日本人の友達とも、このことについて話しました。私が中国の新聞やインターネットから得た情報が不十分で詳しい事情はわからないが、いくら精神的に病んでいても子供2人の命って、とても許せないですね。ルームメートもみんな驚愕し、私と同意見でした。中国人全員を代表する資格はないが、やはり中国人として言わせていただきたい:申し訳ありませんでした。 このことから考えたのは、日本で暮らす中国人―広く言えば外国人―の精神状態と日本社会の仕組みです。私は日本にいた時(留学1年間)は、みんなからやさしくしてもらって、楽しい生活を送っていました。しかし、本当に長期で日本に暮らす外国の人(留学生じゃなく)はどんな気持なのか、短期滞在で国費奨学金をもらっていた私には、わからないのです。日本社会或いは各地域でどういう風に外国人を受け入れているのかも、一般の日本人は自分の町に住んでいる外国人に対してどう考えているかも、知りません。自分の勉強不足を痛感しつつ、国際コミュニケーションの難しさを、改めて感じました。 (今、私は院生になって国際コミュニケーションについて勉強しようと考えるようになっています。) この事件でもうひとつ気になったのは、マスコミの報道です。私がこの事件を知ったのは、中国の新聞『青年参考』からでした。しかし、新聞一面を占めたその記事では、女性が精神病になった原因は、主に日本社会にあるとばかり書いているのです。日本人の気持や国際的な影響など、あまり触れていませんでした。その記事に結構いらいらしました。そこで、日本のインターネットで調べてみたら、事件の残虐さや遺族の悲しみばかり強調する記事で、事件の原因について深く分析し、納得できるような文章を見かけませんでした。さらに心配になったのが日本のテレビ、主流新聞がこの事件をどう報道していたのか、一般の日本人にどんな心理的な影響が与えられたか、このことは政治に利用されないか、などのことです。 マスコミの報道は、一般民衆の考え方に大きな影響力があります。でも、実は私、日本のマスコミにも中国のマスコミにも、少し不信感があります。時によって「これでマスコミの洞察力なのか」「本当に調べたのか?」「本当に客観的に見ていたのか」「もっと責任のある報道をしてよ」と言いたくなる時もあります(もちろん全部そうじゃないと思いますが)。(劉纉) ※この原稿は私宛ての個人メールで届いたものです。あの滋賀県の園児2人殺害事件。加害者が中国人だったことから劉さんはショックを受け、悩み、中国、日本のマスコミ情報を元に感想を吐露していた。昨年10月までの1年間、日本に留学、日本、日本人と接した彼女は、「中国人を代表して」として「謝罪」したことに私は感動しました。知る限り中国人がこの事件で謝ったことを私は知りません。 このメールには、考えさせるものが多くありました。 その中に、いくつかの疑問、質問があり、私なりに答えを返信メールで以下のように説明しました。 ●中国のマスコミが「原因は日本社会にある」については→「一面だけを取り上げている。(共産党が指導している訳ではないが)その方が今の日中関係の中では読者の関心を呼ぶから」と説明。(中国の新聞は市場経済下で販売競争をしており、“売らんかな”の下では「反日記事」は売れる傾向にあるという) ●「日本のマスコミも、事件の原因を深く分析しているのを見かけない」については→毎日新聞北京支局員の加害者・鄭さんの実家(北辺の黒龍江省)での取材記事(2月21日付朝刊)を示し、マスコミの中にも一面的ではない、よって来たった原因の一端に迫っていることも紹介した。 さらに、劉さんへのメールでは、「鄭の行為は絶対許されない。原因は彼女の病気だった。日本社会で、それが亢進したとはいえ。それでも、このことが冷え込んでいる今の日中関係の中で、日本人の中国人に対する悪感情を助長することになる恐れもないことはない。心配している」ことにも触れておいた。 劉さんは、「このメールは感情的なので『中国レポート』としては使わないで」との申し出があったが、この便りは多くの日本人に読んでもらいたく、敢えて劉さんに掲載をお願いし、了承されたので掲載しました。 (園木 宏志) ※劉纉さんは湖南省出身。現在、清華大学日本語学科の3年生(21歳)。2004年10月から1年間岩手大学教育学部に交換留学。2005年10月に清華大学日本語学科に戻りました。「日中の相互理解のためになりたい」が希望なだけに、日本語の文章も、お読みになってお分かりのように抜群です。写真もすべて劉さん撮影です。若い中国の大学生の目線による「中国レポート」をシリーズで送ってもらうことになりました。 |
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日中関係が政治的に芳しくない時期、市民レベルの交流が何よりも大切です。そんな時、中国の名門、清華大学で日本語を学ぶ女子大生、劉纉さんと縁ができ、中国レポートをお願いしました。今回は中国の最大の行事「春節の準備風景」=第1回=に続いて第2回「春節本番」です。 <除夜の晩餐&「団欒」> 春節本番は、除夜の晩餐から始まります。 一家団欒でお喋りをし、料理を楽しみながら春節特別番組(日本の紅白歌合戦と似たようなもの)を見て、12時のカウントダウンを待って新年を祝う。これが中国春節の一般的な風景です。 私の家の場合、毎年この晩餐を祖父の家で食べる。父側の4人のおばさんも家族連れで集まってくるので、全部で18人。トランプゲーム、お喋り、料理の支度、酒を勧める声、テレビの音…祖父の小さな家は 週末の小型市場みたいに賑やか。食事中、H君はこっそりと私に 「ちょっとうるさくない?」と言った。 確かに少しうるさいかもしれないが、中国人にとって、このうるささこそが春節なのです。みんなで集まって楽しく騒ぐことに、春節の主題となる「団欒」の意味が、一つの世代から次の世代に伝わるのではないかと、私は思う。 <拝年(年始回り)&1234567> 1日は父側の祖父家。2日は母側の祖父家。3日は自分の家でみんなを待つ。4日に一番上のおばさんの家。5日に二番目のおばさんの家…今年の春節はいつもと同じぐらいに忙しい。家に入ったらまずお祝いの言葉を言い、子供はこの時、お年玉をもらう。そして一緒に食事をし、楽しく一日を過ごす。春節の前に各家が用意していた1週間分の料理は、実際にこの年始回りのためです。 実は、何日にどこの家に行くかは、昔から決まりがあるらしい。中国語で「一子二婿」、つまり、一日に息子が自分の両親家に行き、2日に婿が妻の両親家を訪ねる、という言い方があります。 祖父の話では、昔、春節の時、1日から15日まで、毎日何をするかが決まっていて、15日間で、一つの完全な春節の儀式になるらしい。それは今、面倒くさくて、みんなやっていないが、「1234567」という数字に、たくさんの謂(いわれ)があります。 例えば、春節には、街のお店が殆ど休む。新年が明けて店を再開する時、みんな5日を避ける。5日に店を開けると、この一年間、儲けられないといわれているから。それに対し、6日や7日が人気。「6=順(調)」、「7=上(昇)」だからです。 時間の決まりだけでなく、言葉や行動にもいろいろな決まりがあります。例えば、新年にお皿やコップなどを壊してしまったら、「歳歳平安」と言わなければならない。中国語では「歳」と「砕ける」の「砕」と発音が同じで、こう言うと元々良くない兆しがいい縁起になると言われています。 <爆竹の重要さ> 春節の時の爆竹の重要さは、私も今年になって初めてわかった。 除夜の晩餐が始まる前に、爆竹で食事の始まりを宣告する。大晦日夜11時半頃になると、外から爆竹の音が聞こえてくる。零時に近づけば近づくほど、その音が大きくなり、零時ごろに最大値になる。それは夜空を響かせ、天地がひっくり返るような音。その音以外何も聞こえなくなる。この騒ぎは12時半頃まで続く。 年始回りの時も、客1組が訪れると、爆竹1本を鳴らして歓迎します。客が帰る時も、爆竹で見送りをします。 新年にお店が再開する時も、最初に爆竹でみんなに知らせ、新年に運が向いてくることを祈る。 爆竹と同じように、花火も一つの伝統行事。夜になると、子供が花火を楽しむ姿が、春節の伝統的なシーンです。日本の花火と違って、中国の花火は多彩で豊かな生活を意味するもので、中国人の希望や新年への期待が寄せられています。 「中国の春節はうるさいね。日本の新年とぜんぜん違って。ごめんね。」 しかし彼はこう答えた。 「最初にうるさいと思ったけど、この天地がひっくり返るような爆竹の音を聞いて、みんなの喜ぶ様子を見て、どうして中国人が春節にならないと新年の感じがしないか、わかったような気がする。この気迫に比べて、日本の新年が静か過ぎるかもしれないね。」 各民族によって新年の祝い方が違う。中国の祝い方では、爆竹が一番重要な位置を占めているかもしれない。 <春節を守る?> 今、民俗学界では、「春節を守るべき」という声があります。春節は西洋化している、昔の風習が失われている、春節の真意がなくなっている。だから、春節を守らなければならない、という説である。 確かに、今の春節は昔と比べて、簡単になっている。でも、変化というものも重要ではないでしょうか。 守るべきものは、春節の形ではなく、その裏にあるもの――団欒、家族、一つの民族としての共同精神と、私は思う。 そして、どんなに変わっても、春節は春節ということに変わりはない。春節の思い出も、世代から世代へ、ずっと伝わるでしょう。(原稿は2月5日着) ※劉纉さんは湖南省出身。現在、清華大学日本語学科の3年生(21歳)。2004年10月から1年間岩手大学教育学部に交換留学。2005年10月に清華大学日本語学科に戻りました。「日中の相互理解のためになりたい」が希望なだけに、日本語の文章も、お読みになってお分かりのように抜群です。写真もすべて劉さん撮影です。若い中国の大学生の目線による「中国レポート」をシリーズで送ってもらうことになりました。 |




