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北の国からのエッセイ

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晩秋の然別湖

 北海道は紅葉真っ盛りです。
 とはいっても九州と四国を足してもなお広い北海道です。
 すでに紅葉が終わった所もあれば、これからの所もあります。
 大雪山国立公園の東大雪にひっそりたたずむ然別湖(しかりべつこ)に、紅葉終わりかけを承知で出かけてきました。

高速道路開通
イメージ 1 然別湖は十勝地方にあります。
 ということは札幌からは日高山脈を越えていくことになります。
 日高山脈は北海道を東西に分断する大山脈で、この山脈で道央と道東の気候も産業もがらりと変わります。
 明治以来の北海道の開拓は、日高山脈を境に別々に進められ、それを繋ごうとする歴史でもありました。
 東西の往来は明治40年、難工事を克服するため人柱まで埋めて作ったと言われる狩勝(かりかち)トンネルによって実現しました。


 先頭としんがりに機関車2両をつけて、SLは狩勝峠をあえぎあえぎ上った。トンネルを抜けると、石炭を釜に入れていた機関士の顔は真っ黒だった。

 狩勝峠を走ったSLは、オールド鉄道ファンにとって忘れがたい思い出だとおもいます。(写真:すでに廃抗となった狩勝トンネル入り口、06年10月)

イメージ 2 大動脈だった狩勝峠に代わって昭和40年に日勝(にっしょう)峠が完成し、初めて車で東西を行き来できるようになりました。
 しかし日勝峠は海抜1024m、冬期は圧雪アイスバーンとなって危険で、世界的にもトップクラスの厳しい峠と言われてきました。
 その後、高速道路で東西を繋ぐ北海道横断高速道路(道東自動車道)の建設が進められ、一部ですでに部分的に開通しています。

 この道東自動車道の建設で、数年前、自民党議員が
 「(人口希薄で)車がクマと衝突するような所に、なぜ高速道路が必要なのか」と国会で噛み付きました。
 すると当時、自民党議員だった地元の鈴木宗男議員が「衝突したのを見たことがあるのか」とクマのように怒って恫喝し、同僚議員を謝らせたという曰く因縁の高速道路でもあります。

 そしてついに今月22日、日勝峠に変わる道路として 十勝清水とトマム間 に高速道路が完成し、開通式が行われました。
 私はこの開通式のニュースをテレビで見てびっくりしました。
 開通式には北海道知事だけでなく、隣に中川昭一自民党前政調会長、帯広市や遠く釧路市など道東の主要首長、民主党の代表まで出席してテープカットしているではありませんか。
 もちろん知事の反対側の隣には、宗男議員も胸を張っていました。
 わずか20キロちょっとの開通です。まだ札幌までつながったわけではありません。
 それなのにこの出席者の顔ぶれを見て、道東の人たちがどれだけ待ち望んでいた道路であるかを、改めて思い知らされました。
 いずれは札幌までつながる道路で、日高山脈を克服する新たな大動脈が保証された瞬間でもあったわけです。

たたずむ然別湖
イメージ 3 前書きが長くなりましたが、私たちの自然観察団はたまたま開通式の翌日、この高速道路を通りました。
 中には紅葉より、この高速道路を通りたかったという道東出身の女性がいたのには驚かされました。
 いろいろな思い入れがあるのでしょう。

 樹海ロードと言われる黄葉真っ盛りの道路を快適に走ること4時間、然別湖につきました。
 4時間でも予定より1時間ほど早く、部分的とはいえ開通した高速道路の威力は抜群です。
 然別湖は静かにたたずんでいました。
 海抜810mの高いところにあるだけに、紅葉もほぼ終わりです。
 10日前に訪れたらすばらしかったにちがいありません。

 然別湖は大雪山系の中では唯一の自然湖です。
 数万年前の火山の爆発によって陸封されたサケが進化し、オショロコマとなって生育しているところで知られています。
 また湖の周囲は原生林で、生きた化石と言われるナキウサギの生息地でもあります。

イメージ 4

 私たちは昼食にオショロコマを食べた後、思い思いに湖畔を散策しました。
 中にはナキウサギを見に森に入り、姿は見えなかったものの鳴き声を聞いてきたグループもいました。
 黄色に黄葉していたはずの湖畔のダケカンバは、すっかり色褪せています。
 けど落葉寸前のダケカンバの林群もそれなりに趣があります。
 しばらくすると雨が降ってきました。
 音を立てて降ってきたなと思ったら、雨はアラレに変わりました。
 急いで引き返しました。

イメージ 5 湖畔に足湯がありました。
 温泉の湯煙が立ち上っていましたが、寒くて靴を脱いで足を温泉につけようとする人は誰もいませんでした。

  葛しげる 霧のしずくぞ 然別(しかりべつ)

 当地を初めて訪れた 水原秋桜子 の感動が伝わる歌碑が、足湯の奥に立っていました。


厳冬の世界と温泉
 然別湖はまもなく氷点下の世界に入ります。
 1月から2月になると常時氷点下20度まで下がり、周囲13.8キロの広い湖は結氷して70cmの厚い氷で覆われます。
 その頃、湖面には直径7mもある円形の浴槽が作られ、湖畔からポンプで温泉が注ぎ込まれて氷上の露天風呂が誕生します。
 星がきらめく満天の下で入る氷点下の温泉は大変オツなもので、10年ほど前、当時、東京に住んでいた私は、この露天風呂に入りに当地を訪れました。

 混浴ですので若い女性でも入ってこないかなあと待つこと数十分、あきらめてゆでだこになった私は浴槽を降りるとき、薄暗い氷でできた階段を踏み外してすってんころりん、眼鏡がすっ飛び臀部をしこたま打ちつけてしまいました。
 帰京後しばらく整形外科に通う羽目となりました。
 また、ゆでだこは急速に熱を奪われて震えが収まらず、衣類は表裏前後確認することなく身に着けたものの、靴下をきちんとはくことができませんでした。

 足に引っ掛ける形で長靴に足を入れて湖畔の宿に戻りました。
 懐かしくもある然別湖は、何事もなかったように静かに冬を待っていました。
 またこの冬も氷上露天風呂が登場することでしょう。

イメージ 6

 湖正面の山は、形が上唇です。
 天気がよければ湖面に山が映って下唇ができます。
 俗に「唇山」と呼ばれている写真の山と湖は、太古から変わらぬ姿なのかなと思いました。(寄稿=望田 武司)



望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

紅葉 & 黄葉

イメージ 1 9月中旬大雪山系から始まった紅葉は山から里へ、そして北から南へと広がりました。
 札幌郊外の野山も紅葉が見ごろです。
 じっくり味わおうと中旬、仲間と一緒に郊外の定山渓の森に入りました。

 紅葉は気温が8℃以下になると急速に進むと言います。
 寒気の到来で札幌は1週間ほど前から急に冷えこみ、この日の最低気温は3.1℃、初霜を記録しました。
 定山渓は札幌の山手の郊外にあるだけに、都心よりも気温は低く、渓谷となっている豊平川の両岸は見事に色づいていました。

赤い葉
イメージ 2 山の色づきで目立つのはなんといっても赤、紅葉です。
 ヤマモミジが色鮮やかです。
 京都などのもみじの名所で見受けられるイロハモミジの変種です。

 百人一首でこんな歌がありました。

  奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋はかなしき


 猿丸太夫は秋はかなしいと歌いましたが、鮮やかな紅葉をみるととてもそのような気持ちにはなりません。
 この辺りは鹿はいますが、「熊に注意」という立て札を見てぎょっとしました。
 いずれにしても「モミジといえば紅葉、紅葉といえばモミジ」 まさに掌状のモミジは紅葉の横綱です。
イメージ 3
 赤く色づくのは必ずしもモミジだけではありません。
 おいらを忘れては困るよ、とヤマウルシが複葉の葉を赤く染めていました。(写真)
 赤色と言うよりは紅色です。
 森で一番早く色づくツタウルシとともに、ヤマウルシは触れるとひどい目にあいますが、遠めで見る限り森のキャンパスの重要な一員です。



        イメージ 4  イメージ 5
 こちらはヤマブドウです。(写真上左)
 こちらも紅色ですが、ツル性ですので垂れ下がっています。
 またヤマウルシと比べ葉が厚ぼったく感じます。

 ヤマブドウの葉を見ると、どうしても目を皿のようにして周囲を見渡します。
 ありました。ありました。
 ヤマブドウの実がたわわになっています。(写真上右)
 残念ながら手の届くところではありません。
 手の届くところはとっくに人間の口に入ってしまったのでしょう。
 それにしてももったいない。
 鳥や動物のえさになるのか、そのままひなびてしまうのでしょうか。
 ヤマブドウだけでなくコクワ、マタタビなども見つけることができ、参加者は「高枝鋏みがあればなあ」と口をあんぐりです。

黄色の葉
イメージ 6

 森が色づくのは赤だけでなく、どちらかと言うと黄色が多いです。
 森を歩いているとぷ〜んと甘い匂いが漂ってきました。
 カツラです。(写真)
 見渡しますとハート型の黄葉をつけている大木に出会いました。
 昔懐かしいカラメル、砂糖を焦がしたような匂いです。
 カツラの語源は「香出」からの転訛で、古事記では「香木」と表現されており、昔から香りで親しまれている日本の代表的な高木です。
 英語でも katsura tree で立派に通用します。
 黄葉した葉を揉みますと、一層香りがあたりに漂います。

イメージ 7 カエデ科の植物は紅葉するのが多いですが、中には黄葉するのもあります。
 イタヤカエデです。
 比較的大きな掌状の葉が、板を敷くように重なっていることからこの名がつきました。(写真)
 樹液には糖分が多く、アリがよく樹皮を往復する木でもあります。
 どんぐりの実をつけるミズナラも見事に黄葉していました。
 ミズナラは赤茶けて落葉するのが多いだけに、黄色はとても新鮮に感じます。




紅葉のメカニズム
 森をちょっと歩くだけでも色鮮やかな樹木にであいました。
 植物は春の花だけでなく、秋の葉の色づきも花に勝る美しさです。
 落葉樹はなぜこんなに色づき、しかも赤と黄色に分かれるのでしょう。

 秋になって気温が低くなりますと、樹木は根から水分を吸収する作用が衰えます。
 この状態のまま通常通りに葉から水分を発散すると、樹木は枯れてしまいます。
 そこで気温が下がると葉と茎の付け根部分の組織がコルク状に変化し、水や養分の流れを制限します。
 これによって葉の中で光合成によって作られた糖分は枝に行けなくなり、蓄積されてしまいます。
 一方 葉を形成する葉緑体の中には葉を緑に見せる色素クロロフィルと、黄色のカロチノイドが含まれています。
 春から夏にかけてはクロロフィルの量が多いため緑になりますが、秋になって水や糖の流れが制限されてクロロフィルが分解されると、緑色が消え、今度は隠れていたカロチノイドの黄色が表に出てくるため、葉は黄色く見えます。また赤くなる葉は、蓄積された糖分がアミノ酸によって、アントシアンという赤色の色素が合成されるため赤く見えます。
 これにより葉が緑から赤や黄色へと変化していくように見え、私たちの目を楽しませてくれます。

イメージ 8 紅葉の美しさは、いかに多くの糖分が葉に蓄えられたかと、葉緑体がいかに早く分解されるかにかかっています。
 昼夜の気温の差が大きいほどクロロフィルの分解が早まりますので、気温の落差は紅葉にとっては重要なポイントといえます。(写真:ミズナラ





イメージ 9 しばらく歩くと面白い紅葉に出会いました。
 赤と黄色を共有している紅葉です。
 ハウチワカエデです。(写真)
 天狗のうちわに似た葉は満月に映え、日本情緒たっぷりのカエデです。
 別名メイゲツカエデといわれています。
 ハウチワカエデは通常真っ赤に染まりますが、なぜ一部だけしか赤くなってないのでしょう?
 同行した専門家曰く、土壌や風通しなどの植生条件による違いや、樹木の個体差などの違いが影響しているとのこと、人間の個性と同じようなものと考えればよいということでした。
 「寒いときに鼻の頭が赤くなるようなものですね」
 回転のよい参加者から、わかりやすい喩えが入りました。
 一同笑いながら妙に納得です。

北国の四季
イメージ 10 わずか2時間ちょっとの森の散策でした。
 春の若葉、夏の緑、秋の紅葉、そして冬の銀世界・・・
 秋の森に入りますと四季がはっきりしている北国を一番強く実感します。
 札幌の初雪の平年は10月27日、あと1週間もすれば定山渓にも初雪がちらつきます。(寄稿=望田 武司)



望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

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冬目前 リス大忙し


イメージ 1 先日、近くの稲荷神社の境内を散策していると、家内が突然 「リスがいる!」
夢中でシャッターを押しました。
よく見ると口より大きいオニグルミを咥えています。
じつにかわいらしい。
リスはじっとはしていません。
めまぐるしく動き回ります。
カメラで追いかけるのが大変です。
ファインダーからすぐ消えてしまいます。


イメージ 2 北海道には エゾリス (写真)と、 シマリス とが生息しています。
一番の大きな違いはシマリスは冬眠するのに対し、エゾリスは冬眠しません。
従ってエゾリスは冬の間の食料をせっせと運んで木の股や土の中などに埋めます。
この時期一番忙しい時です。
食料はクルミだけではありません。
ミズナラやカシワの実のどんぐりなど、堅い木の実ならほとんど食料として保存します。
エゾリスは体長は比較的大きいのに対し、シマリスは手のひらにのるくらいです。

イメージ 3
上の二枚の写真をご覧ください。
左はクルミを埋め込んだあと木に登ったエゾリスです。
右の写真は今年5月、市内の円山公園で観察した冬眠明けのシマリスです。
体に縞模様がついているのではっきり区別できます。
また冬眠しないエゾリスは、寒さに耐えるため剛毛がふさふさとしています。
これに対しシマリスはスマートで柔らかさを感じます。
シマリスは雪が降った途端に、いつも観察できる所から姿を消してしまいます。
ああ冬眠に入ったんだなと思います。
これに対しエゾリスは少々の雪でも食料を保存しようと懸命です。
しかも一箇所だけでなく、あちこちで埋め込みます。
白一色になりますと、土の中に埋めた木の実をどのようにして探し当てるのか不思議です。
超能力があるのかしら。
専門家に聞いてみました。

 エゾリスも木の実を埋めた場所をよく忘れるそうです。
この話を聞いて毎朝のように眼鏡を探している私は、なんとなく親近感を覚えました。
忘れられた木の実から芽が出ます。
エゾリスは森作りに一役買っているといえます。
私はといえば、布団のそばにあった眼鏡を踏み潰して「ああまたやっちゃった」散財に一役買っています。
それにしても リスはかわいい。
この半年間で観察できたエゾリスの生態をご覧ください。
ほのぼの感を与えてくれます。(寄稿=望田 武司)

イメージ 4  〜岩山(札幌市内 4月)
イメージ 5 ◆〔酲攷肯啗園そばの民家のベランダ(8月)
イメージ 6  藻岩山(8月)
イメージ 7 ぁ)務て賛正楴蕷匱次複儀遏
   “ お〜い、えさ頂戴 ”

望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

60代初体験のつぶやき

 長寿化時代に入って定年退職からの時間は、一昔前なら想像もつかないくらいほど無尽蔵にある。
 寝てるうちにお迎えが来ないかと待っていると、朝目を覚ますと息をしている。
 こうなると家庭内動物園でえさが出てくるのを待っている。
 クマのようにごろりとしているのも楽しからずやではあるが、達磨さんになって生活習慣病の総合デパートになりそうだ。
 きょうもゴロゴロ・・・毎日うさん臭そうな顔をする家内と朝昼晩食事するのも精神衛生上よくない。
 少しでも社会のお役にたつならばと思って、退職後、観光ボランティアを始めた。もう3年になる。

観光ボランティア
 本州からの観光客に対し、単なる観光案内だけでなく、ウオーキングガイドといって求められれば大通公園や時計台、北大などを一緒に回って案内している。
 案内所の場所が変わって、今月から重要文化財の道庁赤レンガの中で詰めている。
 観光ボランティアも少しづつ市民権を得ているようだ。

 観光を町の柱にしようとする札幌では、観光ボランティアに対する需要は多く、この夏からは思いもよらなかった体験をしている。
 観光バスガイドである。
 人生右肩下がりの、くたばり加減の者が「何で物好きなことを」とお思いかもしれないが、これがまた実に楽しい。

札幌ヒルズ循環バス
イメージ 1

 札幌商工会議所とJRバスが共同で新しい観光コースをつくった。
 札幌都心に近い所にある大倉山・円山・藻岩山を回る循環バスである。(写真:右から三角山・大倉山、左に切れているが円山、藻岩山と続く)
 札幌に一度はお見えになった人なら耳にするか、あるいは足を運んだであろう山々である。
 名づけて「札幌ヒルズ循環バス」

< さすがに広い石狩の平野も、札幌市街の南西に連なる大小の山々に行く手を阻まれる。

  藻岩山・円山・双子山・大倉山・それに前後して三角山、手稲山と続く山々。

  札幌で春が来たといい、雪がきたというとき、いつもこれらの山々のたたずまいが鏡になる・・・ > 

イメージ 2 札幌出身の野外彫刻家、本郷新のエッセーを紹介するまでもなく、札幌の人はこれらの山々が皮膚感覚に中に入り込んでいるということを、純粋道産子でない私にもよく理解できる。
 標高250〜500mほどのこれらの山の麓を走る循環バスは、ことし8月から試験的に運行された。
 いわゆる路線バスでないため、チケット(\1500)を購入しなければ乗車できない。
 7箇所のステーションを2台のバスが30分ごとに循環し、客は好きなところで降り、好きなところで乗ることができる。
 乗り降り自由のバスである。
 ボンネットのあるレトロ調のバスが旅情を誘う。
 またこの間の施設の入場料、利用料はすべて無料である。

ビューポイント
イメージ 3 多くの客はまず藻岩山のロープウエーで頂上までいって、眼下に広がる人口189万の札幌の街並みに目を見張る。
 定山渓から流れてくる豊平川の大扇状地に形成された碁盤の目の街ということがよくわかる。
 天気の良い日は日本海から遠く大雪山系まで眺望できる。
 また藻岩山には見事な落葉広葉樹が繁っている。
 明治時代に藻岩山を訪れたアメリカの高名な植物学者が
 「この地と同じ気候で、しかも狭い面積の中に、これほど木の種類の多い所は世界にない」と高い評価を与えた。
 これを受けて大正10年「藻岩原始林」として天然記念物に指定された。
 天然記念物の多い北海道ではあるが、藻岩原始林こそ北海道の天然記念物指定第一号である。
 以来、都会のど真ん中にありながら藻岩の森は手厚く保護され、緑豊かな町の象徴として市民に愛されている。
 絶滅危惧種のクマゲラやエゾリス、ウサギ、キタキツネなども観察できる山である。
 もし天然記念物に指定されていなかったらどうなっていたであろうか。
 周囲の山々の状況、そして終戦直後のことを考えると、藻岩の木々は薪として伐採され、はげ山になっていたであろう。
 そして今頃は神戸の六甲山と同じように、眺望の聞く高級住宅街として変貌していたであろうと推測される。

バスステーション
イメージ 4

 バスは4000株のバラが咲き誇る山麓のちざきバラ園(上写真)から、円山の鎮守の森の一角にある円山動物園と、次々に止まる。
イメージ 5 そしてウインタースポーツの花形とも言える大倉山シャンツェに到着する。
 シャンツェはドイツ語でジャンプ台という意味だ。
 テレビではおなじみのジャンプ競技も、初めて訪れた観光客はジャンプ台の威容に圧倒される。
 そして「えっ、こんなところを飛ぶの」と驚く。
 競技場を目の当たりにするとジャンプ競技は「飛ぶ」というよりは「落ちる」という競技であることがわかる。
 札幌オリンピックのときは90m級ジャンプがこの地で行われた。
 今では90m級とか70m級とか言わない。いつの間にかラージヒル、ノーマルヒルと言っている。
 リフトに登って307mの頂上の展望台からの眺望がまたすばらしい。
 ジャンパーは展望台の下からまっすぐ札幌市街地に飛び込むように飛ぶ。
 そう思うと背筋が寒くなる。ジャンプ競技は勇気と胆力が必要だ。
 バスはこのあと日本の代表的な野外彫刻家、本郷新の作品が数多く収められた札幌彫刻美術館から、北海道神宮円山公園と循環する。

観光ガイド
イメージ 6 バスが循環する間、ボランティアは客にガイドする。
 当局からアンチョコのようなものはもらっているが、これが全くのお役人的な解説で少しも面白くはない。ピントはずれもある。
 ボランティアは報酬をもらってるわけではないから拘束はされない。好き勝手なことを話す。
 けど一応、札幌シティガイドと北海道観光マスターの資格は有している。
 歴史・地理・自然・文化・生活など、それぞれ得意分野もある。
 中には大変な専門家もいるのに驚く。
 バスのドライバーに言わせると、個々のボランティアが思い思いに話しているから面白いという。
 ただガイドをしているとあっという間に、次のステーションについてしまう。

(写真:札幌彫刻美術館前庭に立つ本郷新の代表的作品戦没学生記念像、わだつみの像 )

 ガイドをしていると、ある事に気づいた。
 客は本州の人より、地元、札幌の人が圧倒的に多いのだ。
 どうやらこの循環バスがとても割安感があるということに目をつけて、家族づれやご婦人のグループが利用している。
 確かに個々の施設の料金をすべて足すと\3600ほどかかるのに、チケットを購入すれば\1500ですみ、しかも足も確保されているので大変お得な行楽だ。
 ステーションはわずか7つであるが、ひとつづつ回ると見ごたえがあるだけに、丸々1日はかかるコースでもある。
 この間、地元の人にイロハのイからガイドするのもちょっと恥ずかしい。
 けど客はいう。
 「札幌に住んでいるけど札幌のことほとんど知らないの。ガイドさん 気を使わないでいろいろ話してください」と言う。
 いずれの行楽地もテレビではよく見るけど、実際に足を運んだことがないという地元の人が多いのに驚く。

魅力あるヒルズ観光
 この札幌ヒルズ循環バスも、冬が近づく今月中旬で運行終了だ。
 来年再開するのかなと思ったら、どうやら中止の気配である。
 聞くと財政難の札幌市が補助を打ち切るためらしい。
 それはないよ。札幌市さん。
 観光で飯を食っていこうと言っているのは札幌市さんじゃない。
 せっかく芽を出した新企画を、1年で終わりにするとは情けない。
 ステーションを都心の時計台や道庁赤レンガなどと結べば、客は飛躍的に伸びる。
 利用した客はいまのコースでも\2000でも安いのでは、と口々に言う。
 実に魅力ある札幌観光新コースだと思うので、ぜひ再考してもらいたいものだとおもう。
イメージ 7

( 写真:大倉山から見る札幌市街地 )  

(寄稿=望田 武司)



望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

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えりもの秋


        ♪ 風はひゅるひゅる 波はざんぶりこ

             誰か私を呼んでるような 襟裳岬の 風と波 ♪

イメージ 1

 日高山脈の最南端に位置し、厳しい自然と向かい合っているエリモ岬の秋はどんなものでしょうか。
 秋の証を求めて、9月末、出掛けてきました。

天高く馬肥ゆる秋
イメージ 2 札幌を出て苫小牧から海と並行する日高路を走りますと、車窓から見えるのは牧場ばかりです。
 広くて青い牧場に、ふんわりと浮かぶ白い雲、サラブレッドの親子が仲良く牧草を食んでいます。
 (写真:三石地区)
 これこそ天高く馬肥ゆる秋といえる光景です。
 けれど実際にはサラブレッドが肥えたら、競走馬にはなれません。
 贅肉のない流線型の体形が美しい動物です。
 むしろ肥えているのは同行したお腹の出た紳士と、くびれたウエストがないご婦人たちです。

絶滅危惧種
イメージ 3 のどかな光景も札幌を出て4時間、浦河を過ぎて襟裳岬に近くなりますと一変します。
 太平洋に落ちる崖を、くり貫いた隧道をいくつも通ります。
 バスをおりて、隧道わきの崖を登りました。
 はやくもこの日のフィールドワークの目玉とご対面です。
 赤い花、サボテンのような分厚い葉のヒダカミセバヤが岩肌にへばりつくように咲いていました。(写真)
 ヒダカミセバヤはかってはあちこちで観察できたそうです。
 道路開発と岩肌がコンクリートで固められたことから急激に減少し、いまや絶滅危惧種に指定されている貴重な植物になっています。

 去年は岩肌の高いところを見上げるようにしてしか観察できませんでしたが、ことしは目の前の岩肌でじっくり観察できるチャンスに恵まれました。

イメージ 4 今回のガイド役は北大歯学部の先生で、仕事の関係もあってえりもに百回以上通ったという植物好きの先生です。
 盗掘を恐れてあまり公にされてない場所に案内してくれました。

 フランスギクのようなコハマギクも咲いていました。(写真)

 北海道から東北太平洋岸に分布する秋の花の海浜植物です。
 花の時期は春夏だけじゃないよ、と言わんばかりに強い風にゆれながら咲いていました。



漁師の植樹
イメージ 5

 恐竜の尻尾のような襟裳岬に到着しました。
 この日の襟裳岬は相変わらず風はありましたが、比較的穏やかな日でした。(写真)
 襟裳周辺の海岸とハゲ山は、ひとたび雨が降ると土砂が流れ出して前浜を濁らせ、昆布漁にも影響が出ていました。
 このため良い魚場を作るには植樹が大切だということで、
 この地域一帯で地道な緑化事業が行われています。
 漁師が生活のために植樹する、というのが毎年ニュースになっています。

イメージ 6 緑化事業が始まってほぼ半世紀、荒れ果てた土地に緑が次第に増えてきました。
 天皇陛下はこの緑化事業に強く関心を示され、去年、札幌で開かれた医学学会に臨席されたあと、地方事情視察と称してわざわざえりもに立ち寄りました。
 失礼ながら天皇もよく勉強されてるなと思ったものです。

 今回訪れた襟裳岬の先端には、早くも天皇陛下の来訪記念碑が立っていました。

   吹きすさぶ 海風に耐へし 黒松を

         永年(ながとし)かけて 人ら育てぬ

 石碑には天皇の思いが伝わる御歌が刻み込まれていました。


花の宝庫
イメージ 7 襟裳岬から百人浜へと海沿いに日高の反対側に向かう道路数十キロには、電柱は全くありません。
 地下に埋没されている? 
 ブー、
 このあたりには人が全く住んでいないため必要ないのです。
 江戸時代に南部藩の廻船が襟裳岬で難破し、乗組員100人以上がこの浜に漂着したものの、飢えと寒さで死亡したことから百人浜と名づけられました。

 実はこの百人浜の湿地帯こそ珍しい植物の宝庫です。(写真)

 すでに終わりかけですが、チシマセンブリがまだ観察されました。(写真下左)
 独特の青い花弁に濃紫色の斑紋があり、一見アケボノソウを思わせますが、こちらのほうが神秘高潔な雰囲気があります。
 あちこちに土が掘り起こされており、盗掘が絶えないことが一目見てわかります。
 清楚なウメバチソウも風に揺られながら咲いていました。(写真下右)

         イメージ 8 イメージ 9

 このほか、紫のオオノアザミ、黄色のアキノキリンソウ、白いナガボノシロワレモコウ、さらにハマナスの赤い実があちこちに観察されました。
 10月になろうとするのに、こんなに多くの花を観察できるとは思いもよりませんでした。
 ただ、いずれの草木も他の地域と比べて背丈が小さくて、まるでミニ盆栽のようです。
 風が強い厳しい自然状況であることがしのばれます。

サケの遡上
イメージ 10 日高沿岸には日高山脈から多くの川が流れ込んでいます。
 いずれの川にも、この時期サケが、故郷の川に帰ってきます。
 秋サケはサケが遡上する直前の沖合いにいるが時が、一番脂がのっておいしいと言われています。
 このため、どこの沿岸にも定置網が張られて、一番おいしい時期のサケを一網打尽にしています。
 日高沿岸のサケはとくに「銀聖」というブランドで、高値で取引されています。
 その定置網をかい潜ってきたサケが、えりも町の小さな2級河川、歌別川に遡上していました。

 車から降りて橋の上から覗き込みますと、川幅一杯にサケが群れていました。
 秋を実感する光景でした。

 広い北海道も道路事情が良くなり、札幌からの日帰り圏が広くなりました。
 札幌から250kmのえりも岬も日帰り圏に入りましたが、この辺が限界です。
 往復8時間、バスに揺られる強行軍でした。(寄稿=望田 武司)



望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

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