都心の彩り
梅雨のない北海道といわれていますが、このところ天候不順で雨の日が多くなっています。
気温も低く、農作物への影響が早くも心配されてきました。
秋まき小麦、ビート、ジャガイモ・・・農作物の生育状況は軒並み1週間は遅れています。
太陽の光がほしいところです。
夏の雪
札幌では街路樹の白い トチノキ の花が終わり、 ニセアカシヤ の白い花も散り始めました。
ニセアカシアは花びらは多く、風が吹くたびに路上に落ちた花びらが集まっては曲線の波を作っています。
ニセアカシアの花が散り始めたと思ったら、さらに公園の土を覆う白いものが登場しました。
ポプラの綿毛です。
中途半端な数ではありません。
まるで雪が降ったようです。
風まかせに気ままに移動する綿毛は、池の中に入りますと、カモの格好の餌になっています。
綿毛のついたポプラの種が宙を舞いはじめますと、札幌はもう夏です。
花の絨毯
久しぶりに晴れ上がった札幌市の中心部、大通公園に、みごとな花の絨毯がお目見えしました。
札幌では今週から 花フェスタ が始まりました。
会場の大通公園には園芸業者が作った庭が展示され、園芸市では花の即売が行われています。
このお祭りの目玉として花の絨毯が作られました。
縦横16mの絨毯には何と2万6588鉢の花が植えられているということです。
人間が小さく見えます。
赤は サルビア 、黄は マリーゴールド 、青は ロベリア 、ピンクは フロックス 、緑は コキア です。
道内8つの農業高校や農業科の生徒が、精魂こめて作ったものが持ち寄られました。
会場の大通公園は日光浴をする家族連れや、昼食を芝生やベンチで食べるOLなどで賑わいを見せています。
初夏のライラック祭り、真夏のビアガーデン、秋の収穫祭、冬の雪祭りの大雪像・・・
1丁目から12丁目まである都心の大通公園は、札幌の各種イベントの舞台とも言えます。
樹にチューリップ
久しぶりの陽気に誘われ公園をぶらぶら歩きますと、ごらんの木に出会いました。
ユリノキ です。
ユリノキというくらいですからユリの花らしきものが咲くのかと思ったらそうではありません。
どうみてもチューリップですね。
若草色にオレンジの透かしの入ったガラス細工のカップのようです。
私が一番大好きな花です。
人手の多い大通公園でもこの木の存在を知る人はあまりいません。
なぜかといいますと、ユリノキは高木です。
その上、花は梢の上に、上方に向かって小さく咲いています。
うつむき加減にあくせく歩いている方にはちょっと縁の薄い花かもしれませんね。
垂れ下がっている枝に両手を精一杯上に突き出してズームアップしたら、こんな写真が撮れました。
じっと見ていると中年のおばちゃんが寄ってきました。
目と目があったので「きれいですねえ」と声をかけました。
何を勘違いしたのか頬を染めています。
意に介せずユリノキ談義をはじめました。
半纏木
ユリノキの一番の特徴は葉にあります。
カエデのようでカエデでないユニークな形の葉です。
火消しやとび職の職人が着る半纏(はんてん)に似ています。
日本ではユリノキというより、 ハンテンボク と呼ばれて親しまれています。
ではなぜ、この木にユリノキという名前をつけたのでしょう。
ユリノキはもともと日本に自生していたものではありません。
クラーク博士の提言で作られた北大植物園の初代園長、宮部金吾博士が、明治の初頭、アメリカから持ち帰りました。
英語では tulip tree(チューリップ・ツリー) と言われています。
高名な植物学者の本によりますと、「当時チューリップはポピュラーでなく、むしろユリノキにしたほうがわかりやすいということだったらしい。庶民のためを思った命名か」と書かれていました。
別な本には高貴な方が「ユリのようだ」と言ったのでその名がついたとも書かれてきます。
なんともいい加減な命名です。
ユリノキの館
ユリノキは、札幌では大通公園で3本、北大構内で1本、円山公園で1本、それに宮部博士が持ち帰った北大植物園で1本観察しています。
まだあるかもしれませんが、あまり多くはない珍しい部類の木です。
全国的に見ると東京の国会図書館前のものがもっともよく整っているということです。
また大樹としては上野の国立博物館前にあり(明治14年植樹)、この博物館には 「ユリノキの館」 という愛称があるそうです。
札幌より暖かいのでもう終わったでしょうか、まだ咲いているのではと思います。
お近くの方はぜひユリノキの花を楽しんでください。
ユリノキの花が終わる7月中ごろになりますと、札幌大通公園はビアガーデンの季節となります。
(望田 武司=寄稿)
望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。
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