日本一早い紅葉
西日本では相変わらずの真夏日が続き、東北地方では大雨で河川が氾濫・・・
初秋の日本列島は真夏の名残を引きずりながら、自然のさまざまな表情を見せています。
北海道の屋根、大雪山系からは、早くも紅葉の便りが聞こえてきました。
さっそくでかけてきました。
とっておきの北国宅急便をお届けしましょう。
大雪山国立公園
早朝、札幌を出て、バスで旭川から層雲峡を経て大雪山の東側の麓、大雪除雪センターに着いたのは午前11時、ここからは勝手に山には入れません。
マイカーの登山客はシャトルバスに乗り換えて集団で、ツアーバスはシャトルバスの後ろについて行かなければ、めざす登山口までいけません。
車が殺到して国立公園の狭い道を車がすれ違うことが困難なうえ、排気ガスによる自然への影響を懸念した措置です。
大雪山に紅葉が始まった今月中旬から月末までの2週間に限って、大幅な車両規制が始まりました。
バスは一昔前なら高度な技術を持つ山男しか入らなかった山道をくねくね登って、赤岳の登山口銀泉台ヒュッテに着きました。(写真:
エゾノツガザクラの実)
この地点ですでに海抜1500m、めざすは赤岳中腹のコマクサ平往復3時間のコースです。
標高差は350m、緯度の高い大雪山は1500mでも、本州の2500〜3000mに匹敵します。
広い大雪山
ところで大雪山とよくいいますが、大雪山という単独峰は存在しません。
北海道の屋根を形成する
旭岳(2290m、北海道最高峰で麓は旭岳温泉)
黒岳(1984m、麓は層雲峡温泉)
赤岳(2078m、中腹に花園のコマクサ平)
緑岳(2020m、麓は高原温泉)など複数の山々が大雪山系を形成し、これらを総称して大雪山といっています。
富士山に登らずして山の高さを語るなかれ、大雪山に登らずして山の大きさを語るなかれ、
山とお酒をこよなく愛した明治の文士、大町圭月が喝破した広い山の一点に入り込みました。
ここからは二本の足が便りです。
実は広い大雪山の中でも最も早く紅葉が見られるのが、今回挑戦した赤岳の中腹のコマクサ平までの山道です。
ちなみにこれ以上登っても紅葉はありません。
森林限界に達していて樹がないのです。
あるのは草紅葉(くさもみじ)でしょうか。
従って日本列島の紅葉はここから始まるといっても過言ではないでしょう。
日本で最も早く紅葉が見れる所といわれる所以です。
紅葉と気温
気温が8℃まで下がると紅葉が始まるといわれています。
今年は夏、暑かったため紅葉は例年より遅めだということですが、それでも大雪山系では9月には色づき始め、敬老の日がらみの3連休の始まる中旬から見ごろとなりました。
夏は高山植物の女王といわれるコマクサが乱舞する赤岳コマクサ平までの山道は、秋はみごとな紅葉のビューポイントとなります。
地元のガイドを先頭に銀泉台ヒュッテを出発です。
森のトンネルのような山道を登り始めました。
山道は次第に狭くなって、岩肌の上を足元を気にしながら登っていきます。
前夜までの大雨で、ところどころぬかるみになっています。
連休のため登山客は多く、前の人のお尻を見ながら足場の良い岩を探して登ります。
ちょっと息が切れそうになります。
岩の間から観察されるかわいいイワツツジの真っ赤な実や(写真右上)、地面をはうオトギリソウの見事な紅葉に、歓声が上がります。
ところがこの行列、なかなか前に進みません。
山から下りてくる登山客とすれ違うとき、どちらかが立ち止まって道を譲らなければ歩けないのです。
上りも下りの数珠繋ぎです。
一つのグループが通り過ぎるまで待つと、いつまでも待っていなければならない状態です。
後ろから声が聞こえてきました。
「これは大雪銀座だ」 笑い声が山に響きます。
この待ち時間がちょうど手ごろな小休止となります。
ベテランの地元ガイドが、「譲り合って一人づつ上り下りしましょう」と何度も声をかけています。
紅葉の絨毯
視界が開けるところにくると、早くも眼下にすばらしい景観が広がりました。
思わず息を呑みます。
ウラジロナナカマドとイソツツジの赤、ダケカンバの黄、そしてトドマツ、エゾマツの常緑樹の緑・・・
見事な錦の絨毯が山腹に広がっています。
ときどきガスに覆われたと思うと再び顔を出します。
平地ではとても9月中旬では見られない見事な紅葉です。
先住民族のアイヌの人たちは、大雪山のクマがいる山すそに広がる紅葉を「カムイミンタラ」神々が遊び舞う庭といいました。
実に言いえて妙なる表現だと感心します。
目を遠くに見やりますと大雪山系の山々が連なっています。
屏風岳(1792m)ニセイカムシュッペ山(1878m)など、ガイドの口からは聞いたこともない北大雪の山の名前が次々に出てきます。
幻のコマクサ平
第一花園を過ぎ、コマクサ平までほぼ半分というところにまで着ました。
すでに上り始めてから1時間半近くになっています。
これではとても往復3時間ではコマクサ平まで行けません。
天候が下り坂であるうえ、予定した時間までに札幌に戻れないおそれがあるためここで引き返す事になりました。(写真:
ウラジロナナカマド)
コマクサ平まで行きますと、一面の草紅葉だそうです。
草紅葉というと優しいイメージですが、樹木が生えないほど厳しい自然状況であることを時に忘れがちです。
また北斜面には万年雪も見えたかもしれません。
残念だわという声も聞かれましたが、Uターンです。
ところがまもなくして、このガイドの判断が正しいことがわかりました。
上りと同じくらい下りも時間がかかるのです。
岩場がぬかるみで滑って危なく、足場を慎重に選んでおります。
「山道では格好つける必要はありませんよ。危ないところは後ろ向きになってもいいですので、ゆっくり降りましょう」
ガイドが噛んで含めるように声をかけます。
登山口までたどり着いたときには深いガスが一面を覆って視界不良になっていました。
途中シマリスに出会いました。(写真左)
シマリスは来月の冬眠を前に今が一番忙しい時期です。
口の中にドングリを入れて駆け回っていました。
癒しの露天風呂
思わぬ大雪銀座の人の波にもまれて、目的地まで行けませんでした。
しかし、日本で最も早い紅葉を満喫できたという充足感はありました。
帽子に地図ができるほど、冷や汗もずいぶんかきました。
その体を層雲峡温泉の露天風呂で癒しました。
同じ自然観察仲間で、ちょっと重量級の女性が一人います。
彼女は今回のフィールドワークには「私は遠慮するわ」といって参加しませんでした。失礼ながらあのヒップ周りからして、彼女は実にいい判断をしたと思いました。
私はお尻は軽いですがお腹周りが目立ちます。
体重オーバーの還暦過ぎの男としてはきょうの山登りが精一杯でした。
もうコマクサ平まで行くことはできないだろうなと思いました。
大雪山系の紅葉は、これから一気に山頂から山麓へと降りてきます。
そして10月にはいると、雪が降って白一色の世界となります。
こうしてボードを叩いていると、テレビの天気予報は、西日本は30度を越す厳しい残暑になると伝えていました。
南から北へ長い長い日本列島です。