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北の国からのエッセイ

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ヨーロッパアルプス行脚 (下)

スロベニア初見参

イメージ 1 「望田さん スロベニアに行きませんか」
 オーストリアに旅行中、現地で知り合った日本人から突然声をかけられた。
 「えっ スロベニア?」
 スロベニアは滞在地のフィーラッハ(オーストリア)からイタリアとともに近い位置にある。
 旧ユーゴの最北部で、ハンガリー、オーストリアと接する四国とほぼ同じ面積の小さな国だ。
 イタリアにはすでに寄ってきたが、最も近いスロベニアに行こうとはまったく考えていなかった。
 縁のなかったスロベニアは勉強不足で、遠い国のように思っていた。

モザイク国家の悲劇
 旧ユーゴスラビアの民族同士の争いは激しく、セルビア人のミロシェビッチ大統領時代のボスニアヘルツェゴビナにおける内戦は、熾烈を極めたことはまだ記憶に新しい。
 民族浄化の名の下で繰り広げられた内戦は、バルカンの地鳴りとなってモザイク国家の悲哀を全世界に知らしめた。
 憎悪と猜疑心が支配し、いつ襲われるかも知れない不安の中で生きている人たちのことを考えると、島国日本は平和でいいなあと思ったことを思い出す。
 旧ユーゴは現在6つに分裂してそれぞれ独立し、今日に至っているが、疲弊し、貧しい国になってるのではないかと漠然と思い、それ以上の知識は持ち合わせていなかった。
 しかし、この機会を逃すと二度と訪れることがないと思い、同行をお願いした。

アルプスの瞳
 列車に乗って1時間もしないうちに国境を越え、バスに乗り継いでスロベニア一番の観光地というブレッド湖に向かった。
 目の前に現れた湖と周辺の景観をみて、あっと驚いた。

イメージ 2 エメラルドの湖、湖の真ん中にポツンとある島、その上に立っている教会、そして湖畔の崖にそびえる中世のお城・・・
 すべてが絵になっており、まるでおとぎの国の世界に飛び込んだようだ。
 とくに湖の青さはすばらしく、裏磐梯の五色沼や、雌阿寒岳に
 近い北海道三大秘湖のひとつオンネトーなどの比ではない。
 「アルプスの瞳」とか「エメラルドの瞳」といわれ、ヨーロッパでももっとも美しい湖の一つといわれているそうだ。

バルカンの星
イメージ 3 ブレッド湖は窪地にたまった氷河が溶けたとき、出口がふさがっていたためできた湖だという。
 周囲8キロほどの小さな湖を、半日かけて湖畔に咲く植物をゆっくり見ながら一周することにした。
 どこからみてもすばらしい景観の散策路を歩いていると、大きなホテルについた。
 チトー大統領の別荘があったところで、その後、改装して湖一番のホテルになっているという。
中に入ってお茶を飲んだ。
 建物・庭をみるとさすが権力者の別荘であったことがうなづけ、出された調度品まで洗練されている。
 弱小国でありながら東西冷戦のさなか、第3世界のリーダーとして、国際舞台の好ポジションを保ち続けたバルカンの星は、この豪華な別荘で、世界平和のための思索に耽り、要人を招いたのだろうか。
 チトー亡き後、旧ユーゴが分裂したことを思うとそのカリスマ性で多民族国家を維持してきたチトーの偉大さが、改めて思い知らされる。

イメージ 4 広い別荘跡の塀の一角に、チトーがハットをかぶり、厚いコートを着ながら湖畔を散策している懐かしい写真が貼ってあった。
 それがないと、知らない人はこの建物がチトーと関係があるとは思わないで、通り過ぎることだろう。

 このチトー大統領の別荘から見える湖が、島の教会と、お城、
 それにスロベニア最高峰の山の3点セットが一望できる湖一番のビューポイントだという。
(湖の写真)

人力渡し舟
イメージ 5

 私たちは島の教会にいくため船に乗った。
 ボートを自分たちで漕いでも行けるが、船頭が漕ぐ屋形船のような船に乗った。
 おとぎの国の世界でゆったり船に乗っている気分である。
 客が日本人だとわかると船頭が話しかけてきた。
 なんとこの船頭、東京オリンピックのときのユーゴ代表のボート選手で、埼玉県の戸田ボートコースで漕いだという。
 知らぬところで共通の話題があると、雰囲気ががらりとかわる。
 二本の艪を巧みに漕ぐ船頭の両腕を見ると、丸太のように太かった。

 この湖にはモーターボートなど、動力で動く船はない。
 油などによる湖の水質汚染を防ぐために禁じているのだろうか。
 波もほとんどなく、船は太古のままのエメラルドの湖面をゆっくり進んでいく。
 中世の面影を残す落ち着いた街と湖だ。

東欧の豊かな国
 失礼ながらスロベニアは活力ある国だとは思っていなかった。
 同じバルカンのアルバニアなどと同じ、これからの国の一つかと思っていた。
ところが訪れてまずユーロが使えたことにびっくりした。
 東欧諸国でEUに加盟している国は他にもあるけど、ユーロ圏に入っているのはスロベニアだけだという。
 もともと旧ユーゴの工業地帯であったスロベニアは、小さくても国民総生産や国民所得は高いという。
 今年の1月ユーロ圏入りを西欧諸国が認めたのも、スロベニアの経済力の高さが証明されたということなのだろう。
 来年にはEUの議長国をつとめるという。

 西側諸国の仲間入りを果たしたスロベニアは治安も落ち着いていた。
 日本では最近オーストリアからスロベニア・ハンガリーと回るツアーに人気が出ているという。
 百聞は一見にしかず、予定もしなかったスロベニアを訪れることができたのは最大の収穫、目から鱗が落ちた。
イメージ 6

 (写真:湖面から100m、崖のお城の上から見たブレッド湖)  

(寄稿=望田 武司)

望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

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ヨーロッパアルプス行脚 (上)

〜エーデルワイスを求めて〜

イメージ 1 ヨーロッパアルプスといえば多くの人はスイスをイメージする。
 けれど隣国のオーストリアも3000m級の山々が連なるアルプスの本場である。
 人気のあるスイスが俗っぽくなったといわれているのに対し、オーストリアにはチロルを中心に、手付かずの素朴な自然がよく残されている。
 かつてチロルの野山を散策したとき、放牧してある牛の糞の臭いが風に乗ってあたりを支配した。
ここでのびのびと草を食んでいる牛からは、BSE(牛海綿状脳症)はまず出ないなと思ったことを思い出す。

この夏、同じオーストリアでもチロルとは反対側のアルプス東側を2週間ほど訪れた。
そしてアルプスの花を求めて積極的に野山を回った。
  (写真:岩場に生えるカンパヌラ キキョウ科)

エーデルワイス
 アルプスの花といえば、まずサウンドオブミュージックと連動してエーデルワイスが思い出され、ぜひ本場で見たいと思った。
 けれど当地に来てエーデルワイスはそう簡単には観察できないことがわかった。
 乱掘盗掘で一般的な観光コースではもう見られないためだ。
 日本でもエーデルワイスと同じ仲間としてエゾウスユキソウ(礼文島)オオヒラウスユキソウ(渡島半)ハヤチネウスユキソウ(岩手県早池峰山)などが知られているが、いずれも絶滅危惧種として手厚い保護を受けている。
 これらの植物は植物園では見ているが、自然の形で生育しているのを見たことがない。
 なんとか本場のエーデルワイスが見れないものか、富士山より22m高いオーストリアの最高峰グロースグロックナー(3798m:写真)に氷河を見に行ったとき、現地人ガイドに拙い英語を並べて尋ねてみた。
イメージ 2

 何度も聞くのでうるさい客だと思ったかもしれない。
 しかしイエスともノーとも言わない。
 何か言ってるようだけど私の理解の限界を超えている。
 氷河を見て麓におり、教会を見学したとき突然地元ガイドが
 「コングラツュレーション」と言って私に抱きついてきた。
 そして分厚い唇でキスをした。
 突然のことで何が起きたかさっぱりわからず、慣れないキスに襲われて私の眼鏡は外れたが、かろうじて鎖でつながっていた。

イメージ 3 ガイドの手にはエーデルワイスがあった。
 そのエーデルワイスを私にプレゼントしたいという意思表示であることがわかった。
 こんなところにエーデルワイスがあるのかと思った。
 教会の裏には墓地があり、十字架とともに墓地は花に埋まっていた。
 ガイドは墓地に植えてあったエーデルワイスを1本もぎ取ってきたことがわかった。
 エーデルワイスを見れたことはうれしかった。
 けれど墓地のエーデルワイスか・・・
 岩陰にひっそりと咲く自然なエーデルワイスを見れないものかと思った。
 数日後、4人で1700mほどの山に行った時、対面することができたのには感激した。(写真)
 少し盛りを過ぎており純白ではなかった。
 「な〜んだ、これがエ〜デルワイス!」
 どんなイメージを抱いていたのだろうか、
 同行した3人の女性は期待はずれの言葉を口にした。
 エーデルワイスはもともとそんな派手な花ではない。
イメージ 4 高さが10cmほど、白い軟毛が綿毛のように密生し、上部に星状の頭花をつけるロマンチックな花だ。
 エーデルワイスは乙女の生まれ変わりで、アルプス男がその白い花を帽子に飾るのは、最も美しい乙女を妻に迎えたいという思いの現われだという。
 がっかりした女性は「私のほうが美しいわ」と年齢を考えず思っただろうか。
 エーデルワイスとともにアルプスの名花といわれるアルペンローゼ(ツツジ科)もすでに終わりかけであったが、観察することができた。(写真)

高山植物
 ところで高山植物って何だろう。
 高い山に生育しているものはすべて高山植物だろうか。
 去年北大で植物学の坐講を聞きに言ったとき、講師の農学部助教授が(いまは准教授とかいうそうです)
 「造山運動で平地が高くなったところで進化した植物」と定義づけた。

 なかなか面白いこと言うじゃない、と思った。
 新進気鋭のこの女性植物学者、いかにも学研の輩らしい合理的表現でさらに言葉を続けた。
 「具体的には林がなくなる森林限界の上から万年雪の下までに生育している植物」が高山植物だという。
 本州での森林限界は2,500mぐらいだが、緯度の高い北海道では1500mも登ると、もう樹林帯はない。
 そんなことを思いながらオーストリアの山々を実際に歩いて、当地では1800m~2000mあたりが森林限界かなと推定した。
イメージ 5

 (写真:1800m地点の山)
 森林限界に達した地域では低温で雪多くて風強い。
 また紫外線も強くて土壌が未発達というのが特徴だという。

 こうした厳しい環境で育つ高山植物は、背が低くて地面を這い、毛が生えているのが多い。
 小さい割には花がきれいで大きいのは虫を誘うためで、化粧する人間と同じ心理だ。
 また色が原色なのは強い紫外線を受けるためという。

アルプスの花
 2週間の滞在期間中、大雪山系には見られないアルプス独特の花を堪能した。
     イメージ 6 イメージ 7 イメージ 8
 左:トラスピ・ロトゥンディフォリウム(アブラナ科)これ以上高いともう植物が生えないという高山の岩礫地などに生育。
 2400m地点で撮影。
 中:パルナシア(ユキノシタ科) 日本のウメバチソウと同じ
 右:リナム・ドロミチカム (アマ科)光沢のない落ち着いた黄色
      イメージ 9 イメージ 10 イメージ 11
 左:アストラアンティアか?(セリ科) とても精巧
 中:ディアントゥス・アルピナス(ナデシコ科)日本のオヤマナデシコの仲間
 右:エリンギウム・アルピヌム(セリ科)一見観葉植物に見える

 雪解けの6月から8月までの短い期間に花を咲かせ、種をつけるのだから結構忙しい。高山植物の命ははかない。
 カメラ技術が悪くて焦点があってない植物も結構あり、惜しまれる。
 なによりも、この花何という花?
 現地で購入したドイツ語の植物図鑑からラテン語の学名を導き出し、日本の植物図鑑と照合するのに相当なエネルギーを要した。
 けれど、ひとつひとつ同定していく時間は至福の時間で、牛の反芻胃のように帰国してからもう一度アルプスの花を堪能した。(寄稿=望田 武司)



望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

咲き乱れる原生花園

 野生の花には、高山植物から、湿地帯、そして林など、場所によってさまざまな種類の花が咲きます。
その中でもっともまとまった特徴をもつのが海浜植物です。
 潮風と砂地の中で育つ植物はそれなりの共通性を持っています。
 海浜植物の観察をしようと7月に入った1日、札幌近郊の石狩浜を訪れました。

母なる川
 大雪山に端を発する 石狩川 は長さは日本で3番目、流域面積では2番目、支流の数は日本一の大小1500河川を抱えた大河です。
米どころの空知平野を潤して悠々と流れ、日本海に注がれています。
河口の川幅は300mはあるでしょうか。昭和40年代に橋ができるまでは渡し舟で行き来していました。
イメージ 1

 開拓時代、本州から船で運ばれてきた物資は、石狩川によって、奥地へ奥地へと運ばれていきました。
 また秋になるとサケが上流へ上流へと遡上する川でもあります。
その母なる大河・石狩川が日本海に注ぐ入り口は、ちょうど川と海の間に挟まれ、砂嘴(さし)となって 石狩浜 が形成されています。
 夏は海水浴場にもなると同時に、砂浜には海浜植物が咲き乱れる穏やかな表情を見せます。
 しかし、冬になると一転、地吹雪が舞って荒涼と化し、人を寄せ付けない恐ろしい表情を見せます。

イメージ 2 札幌が生んだ日本の野外彫刻の第一人者本郷新が「この地こそ北海道の開拓を象徴する場所だ」と言っていた石狩浜に、彼の創作の精神を象徴する代表作 無辜(むこ)の民 が立てられています。
 「無辜の民」は厳しい自然と、抵抗できない社会の制度の中でもだえ苦しむ開拓民の姿を描いています。
その台座は石狩川を渡った船をかたどり、その中に本郷新の遺骨が分骨されていることはあまり知られていません。

原生花園
イメージ 3 7月の石狩浜は北海道の花に指定されているハマナスが咲き乱れていました。

 棘のある枝や、風に吹かれながら咲いている真っ赤な花びらからは、厳しい自然の中でも生きぬこうとする強い意志と存在感が感じられます。
 品種改良が進んで、最近はいろいろな所でも見られるハマナスですが、ハマナスはやはり浜にへばりついて初めてハマナスだと感じます。
 ハマナスは皇太子妃雅子様のお印でもあります。
ハマナスの如く強く頑張ってほしいものです。

 ハマナスとは対照的な繊細な花に出会いました。

イメージ 4 エゾカワラナデシコ です。

 ピンクの美しい花で、この花を見かけますと誰しもが歓声をあげます。
 花弁はフリル巻きで、先端は細かく裂けています。
 美の神が作り出した「造形の極致」と、案内板に書いてありました。
 下賎な私には、ピンクのフリルのついた下着を身に着けた若い女性が浮かんできました。
 「望田さんは、何を考えてるの」
中年のオバチャンから厳しい声が飛んできました。
まだまだ煩悩の世界にさまよっているのでしょうか、申し訳ありません。


砂に入り込む植物
イメージ 5 風の強い石狩浜ですので浜には樹木は余りなく、砂地に這う植物が多く見られます。
 「ハマエンドウ」「ハマボウフウ」「ハマニンニク」「ハマヒルガオ」など、ハマのつく名前の植物が相次いで観察されます。
 ひときわ目立つ黄色い花をつけていたのが、ハマニガナです。
ハマニガナは地表に出ている部分は花と葉だけで、その3倍以上の茎や根が砂地に深く入り込んでいる典型的な海浜植物です。
 もちろん他の海浜植物も砂地に長く茎を伸ばして、少ない水分を集めて生きています。

  大汐や ひるがお砂に しがみつき
                     小林一茶

ハマニガナの葉を噛んでみました。
飛び上がるほどの苦さです。
ぺっ ペッ ペッ、 何度吐いても口に苦さが残ります。
さすが浜苦菜(ハマニガナ)です。
お休み処でソフトクリームを求めてようやく平常に戻りました。


弘法 場所をあやまる?
イメージ 6 ハマが接頭語になっているような海浜植物が多い中で、ひときわ異彩を放つ名前の海浜植物があります。
 コウボウムギ です。
 根元の繊維が弘法大師の筆に、穂が麦に似ていることから名付けられました。
 潮風をまともに受けて、砂に埋まっても新しい茎や葉を砂に突き
 出して生きているたくましい植物です。
 ただ名前は、弘法も場所を誤ってつけたのでしょうか、
 それとも、一派ひとからげの接頭語では言い表せない弘法のご利益のある植物なのでしょうか。

 日本全国どこにでも見られるハマがついてない海浜植物、コウボウムギです。



喜びも悲しみも幾年月

 石狩浜の先端に近づくと灯台があります。
 石狩灯台です。


♪ おいら岬の〜 灯台守は〜 妻と二人で〜 沖行く船の〜 ♪


 佐田啓二と高峰秀子が「喜びも悲しみも幾年月」を演じたのは昭和32年のことです。
 札幌市近郊のこの石狩浜でロケーションが行われました。
 この作品は、日本の総天然色映画(当時はカラー映画といわなかった)のはしりの映画でした。

イメージ 7 そのために白一色だった灯台は目立つよう、赤と白の二色にわざわざ塗り替えられました。
 「喜びも悲しみも幾年月」が大ヒットしたため、全国の灯台は雪国の灯台から順次赤と白の二色に塗り替えられました。

 思い出の灯台はとうにその役割を終わっています。
取り壊される運命だった石狩灯台はその記念すべき役割を刻んだことから、観光資源として残されることになり、砂嘴の先端から少し奥まったところに移設されて保存されています。
 灯台の下に広がる原生花園の命はとても短く、8月に入ると波風は一段と強くなって、徐々に人を寄せ付けなくなってきます。

カッコウ カッコウ 

都心ではほとんど聞かれなくなったカッコウが石狩浜で鳴いていました。(寄稿=望田 武司)

望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

高山植物の宝庫 樽前山

イメージ 1 北海道は緯度が高いため、低い山でもちょっと登れば高山植物を観察できます。
 梅雨のない北海道、27日札幌から2時間弱の支笏湖に近い活火山樽前山(1041m)に足を延ばしてきました。







プリンのドーム
イメージ 2

 樽前山といえば、火口のなかにプリンのような溶岩円頂丘(ドーム)があって、世界的にも珍しい三重式活火山として知られ、学術的に貴重なため頂上部分は北海道の天然記念物に指定されています。
 有史以来、噴火を続け、いまなお噴煙を上げています。
 しかし、木を見て森を見ずといいましょうか、近づけば近づくほど頂上まで行かない限り山の全貌はわかりません。
 20kmほど離れた高速道路のパーキングエリアから今年4月下旬撮影した樽前山です。
 まだ残雪のある樽前山ですが、噴煙を上げている中央のドームには雪は積もっていません。
 残雪が消えかかっている外輪山の少し上あたりがちょうど7合目付近です。
 その7合目までは車で行くことができます。
 私たちはそこから山を登るのではなく、横に歩いて雪はすっかり融けた山腹のお花畑を散策しました。
 なにしろサークルのメンバーは、年金受給年齢に達している人たちが大半です。
 頂上をきわめるよりはお花畑で十分といった集団です。

樽前山のお花畑
イメージ 3 歩き始めて10分もしないうちに山腹に大きく広がる高原にでます。
 すると一面の白い花にびっくり。
 丸いぼんぼりのようなイソツツジが私たちを迎えてくれました。
 山にあってイソツツジとはいかに?
 どうやらエゾツツジと呼ぶべきところを、誤ってイソツツジと呼ばれたらしいです。
 イソツツジは強い芳香を放ちます。
 1cmほどの花を無数につけ、近づくと濁りのない白さが神秘的です。

イメージ 4 綿毛をつけた花があちこちにみられます。
 峰を這うミネヤナギです。
 高木のヤナギのイメージとはほど遠く、樽前では樹高が50cmもないヤナギです。




樽前山の主役・脇役
イメージ 5 樽前の外輪山を横に見ながら隣の風不死岳(フップシダケ)に向かって山腹を暫く歩きますと、樽前山の主役とご対面です。
 イワブクロ(写真上)です。
 岩にへばりついており、花冠が袋状で鐘形になって咲いています。
 火山の砂礫地にいち早く進出するパイオニア植物で、大雪山など
 道内各地の山でみられますが、樽前山にとりわけ多いことから
 タルマイソウとも言われています。
 何となくグロテスクで、色もくすんだ薄紫の地味な花ですが、
 栄養状態の悪い砂礫地でも育つ逞しい植物でもあります。
 どちらかといえば白系の花が目立つ植物群の中で、色のついた花に出会うとうれしくなります。
 オオバスノキです。(写真中) 
 ツツジの仲間で、花は紅色を帯びて鐘形です。
 黄色い花にも出会いました。
 ウコンウツギです。(写真下)
 ウコンウツギは平地では1〜2mほどの低木ですが、ここでは岩にへばりついており、樹木とは思えません。
 太平洋から吹き付ける強い風、酸性度の強い土壌など、樽前山に見られる花々は、環境の悪いところでも形状を変えて、踏ん張って咲き誇っています。








イメージ 6 山腹の高原には木らしい木はなく、砂礫地が続いているだけです。
 このため照りつける直射日光をさえぎるものはなく、女性は帽子の下にタオルをたらすなどの日除けに工夫をしています。




大噴火
 4万年前、この地の大噴火で火口が支笏湖となり、石狩川の流れを太平洋から日本海に変え、膨大な火山灰で札幌を含む石狩周辺の地形を作った、有珠火山帯の一角が今歩いているところです。
 その名残ともいえる酸性度の強い土壌はいまなお植物の生育を妨げており、当地を歩きますと平地とはいえ、自然の驚異が脅威となって伝わってきます。
 そして、どんな小さな山でも自然を侮ってはいけないという気持ちを強くもたせてくれます。
 秋に白玉のような実がなり、サロメチールの香りがするシラタマノキ(写真左)です。
 葉が米粒のようなコメバツガザクラ(写真右)などの高山植物が、次々に観察されます。
イメージ 7

イメージ 8 みな直径1cm以下の小さな花ばかりです。
 中でも面白いのはイワヒゲです。大雪山以来の観察です。
 幹が地を這い、枝が髭のようにぶら下がっています。
 山男を連想させる名前の割には花は白くてとても可憐です。
 超近距離でシャッターを切るせいか、どうしても髭に焦点があって、花がぼけてしまいます。
 腕が悪くて何度挑戦しても同じで、こんな写真しか添付できず申し訳ありません。
 大雪山より1ヶ月も早くイワヒゲを観察できるとは思いませんでした。



霧の支笏湖
イメージ 9

 樽前山7合目から風不死岳に向けての数百メートルのトラバースは、高山植物のオンパレードでした。
 高山植物は大雪山だけではないと強く思いました。
 満足して下山し、支笏湖に降りると、湖は霧に深く覆われ、周囲の山々は全く見えませんでした。
 山の高い部分がピーカンの良い天気とは全く想像できません。
 支笏湖は名物チップ釣りの真っ盛りです。
 しかし、チップは日中深い湖底に移動するためこの時間、ボートを出す太公望は誰一人おらず、支笏湖はひっそりとした森の中にたたずんでいました。(寄稿=望田 武司)



望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

フクロウ見参

 季節の移り変わりは早く、森も樹の葉が広がり空を覆って暗くなってきました。
 そして匂いも感じられるようになりました。
 梅雨のない北海道はこの時期さわやかに晴れ上がり、日中の最高気温は札幌でも25℃を越えることがあります。
 けれど、森の中は直射日光がさえぎられ、快適な森林浴にひたれます。

オゾンが一杯
イメージ 1 セリ科のオオハナウドが大きく成長して、傘模様の白い花があちこちで目立ちます。
 エゾハルゼミがうるさく鳴く森を歩いていますと、顔見知りの人に声をかけられました。

 「フクロウがいたよ」
 この女性、家庭のわずらわしさから解放されたいと、ヒマさえあれば森を歩いている重量級おばさんです。

イメージ 2 帰りかけの私はUターンして、午前中歩いた反対方向の森に再び入りました。
 バズーカ砲のような望遠レンズをつけた早耳の一群がすでに腰を据えていました。
 カメラが向いている森の上部を見やりますと、葉が生い繁っているだけで何も見えません。
 目を凝らしますが、葉が邪魔をしてなかなかフクロウを見つけることができません。
 珍しい鳥がいる時には必ず居合わせる常連のセミプロさんもいます。
 指で指す方向を追っていきますと、高木の上部の枝にエゾフクロウが3羽も止まっているではありませんか。


幼鳥 フクロウ
イメージ 3

 この森ではフクロウは時々見かけますが、ほとんどが冬で、夏に観察できたのは初めてです。
 葉が生い繁っている上、フクロウが人を警戒して奥地に入ってしまうためです。
 それが遊歩道から見えるところにいるとはびっくりです。
 最初に撮影できた写真です。
 3羽ともお尻を向けています。
 人間を警戒しているのでしょうか、それとも寝ているのでしょうか、朝からずっとこの姿勢だそうです。

 持久戦です。
 3羽ともヒナから孵ったばかりの幼鳥で、少しは飛びますがほとんど枝にしがみついて、親鳥が餌を持ってくるのを待っているようです。

イメージ 4 「こちらに向いたよ」
 突然 双眼鏡で観察していた人の声が響きます。
 一斉にカメラを構え、パチリパチリパチリ。
 大の男がいうのも恥ずかしいけど、クリリとした目が「メチャかわいい」。
 ちょっと目をつぶると「はい、チ〜ズ」
 フクロウに向かって声をかける女性アマチュアカメラマンもいます。
 森に笑いが響きます。


フクロウ百態
イメージ 5 暫くするともう一羽がこちらに向いてきました。
 さらにもう一羽も・・・
 なにか、3羽で遊んでいるようです。
 まるで「いない、いない、バー」をしているようです。
 「3羽とも もうちょっと寄って」
 「真ん中のフクロウ 目を開けて」
 より良き構図を求めるカメラマンのリクエストはどんどん高まります。
 フクロウ君はそんな人間の欲望には馬耳東風、再び「いない、いない、バー」です。
 長い時間、体をそらしてカメラを構えている人間の方が「イナバウアー痛」を感じてきました。

ふところ深い森
イメージ 6 最初にフクロウを観察したのが16日です。
 以来、本日までの3日間、連日、地下鉄とバスを乗り継いで森に通っています。
 そのたびにフクロウは数十メートルの範囲で場所を変えています。
 生い繁る葉と枝で、思うようにフクロウは撮影できません。
 皮肉なことに三脚を持ち合わせてなかった初日が、一番よく撮影できたポジションでした。
 重装備で出かけた2日目以降まだ一度もシャッターを押す機会がありません。

 フクロウはまもなく森の奥に姿を消すと思われます。
 30年間この森で自然観察している先生からファックスが届きました。
 「15年ほど前に作成した自然ガイドに掲載して以来の迫力あるフクロウ観察であり、森の奥深さを改めて感じた」と書かれていました。

 もうしばらく森通いが続きそうです。(寄稿=望田 武司)



望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
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