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北の国からのエッセイ

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6月のニセコ

 北国の夏は短く、植物はわずかな期間に芽出しから開花・受精・果実・種子・落葉と、1年の仕事を終えてしまいます。
 花が咲いたばかりと思ったのに数日後には散り、同じところではもう見ることができません。
 しかし広い北海道では緯度や標高の高いところにいけば、低地ではとうに終わった花に再び会える楽しみがあります。
 6月上旬、初夏の札幌を抜け出し春浅いニセコを訪れました。

峠の茶屋
イメージ 1 札幌から1時間ほど車を南に走らせますと、定山渓を経て中山峠につきます。
 標高1898mの羊蹄山がくっきり顔を出す絶好のビューポイントです。

 あずま路の 富士の姿に 似たるかな

 雲にそびゆる 後方羊蹄の山

 明治時代、初めて北海道を訪れた三条実美は優雅な羊蹄山の雄姿にふれて歌を残しました。
 以来羊蹄山は蝦夷富士といわれています。
 この羊蹄山の麓の一角がニセコです。

好感度No1の花
イメージ 2 中山峠で小休止をかねて、つい1ヶ月前までスキーヤーで賑わったスキー場裏側の雑木林に入りました。
 ありました、ありました。
 高山性の植物、サンカヨウの群落です。
 蓮のような大きな葉の上に可憐な白い花、数個つけています。
 汗を拭き拭き山を登ってこの花に出会うと、大いに癒されるという花です。
 この花が一番好きだという人が結構います。
 清楚で可憐な花が無骨な山男の理想とする異性にぴったりなのでしょうか。
 山男はこの花に出会うとなぜかサンカヨウとはすぐ言わず、イッカヨウ、ニカヨウ、サンカヨウと節をつけて呼ぶと聞いたことがあります。

 愛されてるんですね、この花は。
 ちなみにサンカヨウは「山荷葉」と書きます。
 荷葉というのは蓮ということで、平地のハスに対して山のハスということでサンカヨウといわれているそうです。
 納得の植物です。

残雪のニセコ
イメージ 3 中山峠からさらに車で1時間、ニセコに到着です。
 お目当ては神仙沼(しんせんぬま)湿原です。
 神仙沼には毎年訪れていますが、6月は初めてです。
 木道を歩いてササヤブを抜け、視界の広がるところにきますと、ひんやりとした風が頬をなでます。
日は照っていますが、吹く風は雪の上を通ってきたに違いありません。
 この地域は標高700mちょっとです。
 目の前のニセコの山々にはまだ雪が残っています。

高山植物
               イメージ 4 イメージ 5
 木道の脇にはチングルマが顔を出していました。(写真左)
 雪が融けてまもなく姿を見せる花です。
 こんなに小さくても草本ではありません。バラ科の落葉小低木です。
 ピンクのショウジョウバカマも風に揺られています。(写真右)
 酸性度の強い土壌では紫色の花をつけます。

イメージ 6 これらの植物に混じってミズバショウが咲いていました。
 全長5cmほどの超ミニサイズのミズバショウです。実にかわいい。
 決して未熟児ではありません。
 小さくても白い苞に包まれた棒状の花を立派につけています。
 低体重児です。
 満ちて生まれてきた立派なミズバショウです。
 腰を落としてカメラを近づけてパチリ。
 後ろから狭い木道を通る人が待っています。
 あっ どうもすみません。
 ここで立ち往生しては交通渋滞になってしまいます。

 平地ではミズバショウの花はとうに終わり、芭蕉のような馬鹿でかい葉が水面を覆っています。
 あれもミズバショウ、そして眼前の超ミニもミズバショウだとおもうと植物も面白いです。

イメージ 7 近くの五色沼にいきますと、ガンコウランが岩肌にへばりついていました。
 大雪山系では雪解けが始まると真っ先に花を咲かせ、
 ひっそりと春を告げてくれる花だそうです。
 大雪山ではいつも黒い実をつけたガンコウランを観察しており、花は見たことがありませんでした。
 岩肌のガンコウランをよく見ますと赤い花をつけています。
 ルーペで見ますと実にきれいな花です。
 ひとつの植物でも実にいろいろな顔があることを実感します。


レッドリスト
イメージ 8

 神沼湿原の隣に大谷地(おおやち)湿原が広がっています。
 深いササヤブで覆われ、行楽客はまず中に入りません。
 この湿原はきわめて貴重な植物が自生している所として知られています。
 フサスギナです。
 氷河期時代の生き残りといわれている植物で、現在レッドリストに登録され、絶滅危急種に指定されています。
 スギナの仲間ですがそんなに珍しいものなら一度見てみたいと思っていました。
 しかし去年の秋は余りにもササが深く入れませんでした。

イメージ 9 退職してニセコに住み着いたという自然ガイドの案内で見に行くことになり、北向きの斜面にまだ雪の残る湿原に降りました。

 フサスギナは芽が出たばかりでまだ5〜10cm、まるでツクシのようです。
 これが30〜70cmに伸び、茎の上部で葉のような枝を規則的に多くつけるそうです。
 大家によりますと大谷地湿原は乾燥化が進んで、ササの天下となっており、何らかの対策がとられない限り、日本から姿を消すことになると心配していました。

 6月のニセコは、雪が消えたばかりでした。
 1ヶ月以上、時計の針を戻したようです。
 これからタケノコ・ウドなどの山菜採りで週末は賑わうそうです。
 札幌に戻ると半袖でもよいシーズンにはいりました。(寄稿=望田 武司)



望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

踊る阿呆に見る阿呆

 札幌の初夏の一大イベントとなったYOSAKOIソーラン祭りが、10日閉幕しました。
 梅雨のない北海道、爽やかな風の中で道内各地だけでなく、東京や台湾、アメリカから参加した341チーム、4万3000人が市内各地で踊りまくりました。
 これだけの人が踊る姿はまさに壮観、とくに天候に恵まれた週末の2日間は踊り手の熱気が都心を席巻しました。
イメージ 1

急成長のYOSAKOIソーラン
 16年前、北海道大学の学生のアイデアで始まったこのYOSAKOIソーランまつりが、短期間でこれほどまでに大きく発展することは誰が想像したことでしょう。
 祭りの5日間には200万人前後の人出が見込まれ、冬のさっぽろ雪まつりに匹敵する経済効果をもたらす一大イベントにまで成長しました。
 どちらかというと観るイベントの雪まつりに対し、動くイベントのYOSAKOIソーランのほうが迫力と人間臭さを感じます。
イメージ 2 YOSAKOIソーラン祭りは
 1.鳴子を持って踊ること、
 2.曲にソーラン節のフレーズを入れれば
 どんなグループでも参加できます。
 踊りの振り付けや衣装などは全くの自由、それだけに参加者の主体性が感じられるイベントです。
 東京から参加したチーム「東京のりのり団」は流行の最先端の?自由な服装で参加し、楽しそうに踊りまくっていました。

踊る阿呆に見る阿呆
イメージ 3 こうしたYOSAKOIソーランに対し「そんなもの祭りではないよ」と冷淡に見つめる人も少なくありません。
 特に札幌市民の中でそうした話がよく聞かれます。
 しかし、踊ってる人たちの表情を見ると、実に楽しく伸び伸びと体を動かしています。
見物している人たちの中には「俺も若ければ輪の中に参加して自分を忘れて踊りまくりたいな」という衝動に駆られた人も少なくないと思います。
 普段歩くことのできない車道を、道幅一杯使って踊りまくる姿に爽快さも感じとれます。
 「祭り」とは何なのか、難しいことはよくわかりませんが、「YOSAKOIは祭りでない」などと新しいものに背を向ける斜にかまえた人を見かけると

 踊る阿呆に 見る阿呆、どうせアホなら踊らにゃ そんそん

と言葉をかけてあげたいです。

ゆうばり寅次郎
 踊っているグループを見ると地域ぐるみから企業、愛好者グループなどさまざまです。
 体を動かしながらの一体感はとても気持ちが良いということがよく伝わってきます。
 YOSAKOIソーランは過疎地域の地域おこしに繋がっているところもあるようです。
 YOSAKOIソーランはこれまで札幌を会場に祭りが繰り広げられてきましたが、今年は初めて夕張に特設会場が設けられました。
 祭りの参加者が夕張で元気一杯の踊りを披露しました。

 財政再建団体になった夕張に去年10月、私は勧められて夕張を励ますバスツアーに参加しました。
 一回目のこのツアーには地元の観光ボランティアの会長が自らマイクを握り、夕張を案内してくれました。
 そのなかで私たちを歓迎してくれたグループがありました。
イメージ 4 YOSAKOIソーランの「ゆうばり寅次郎」です。
 ゆうばり寅次郎は自治体からの財政支援を打ち切られ、今年3月で解散がきまっていました。
 最後の勇姿を私たちの前で披露してくれました。
 大人に混じってあどけない子どもも同じはっぴ姿で鳴子をならし、見よう見まねで踊っていました。
 楽しみにしているYOSAKOIソーランにどっぷり浸かって練習を繰り返し、育ったという人の話をよく聞きます。
 もし寅次郎がこのまま存続するなら、この子こそYOSAKOIソーランとともに大きくなっていくんだろうなと思いました。
 懸命に踊るメンバーの姿を見て、ボランティアの会長さんが後ろで泣いているのに気づきました。
 ちょっとびっくりしました。
 地域に潤いと明るさを与えてくれた寅次郎の最後の姿と、子どもの夢を摘んでしまった無念さに胸が熱くなったのでしょう。
 改めてYOSAKOIソーランと地域の結びつきを強く感じました。

 寅次郎がなくなっては夕張の踊り好きは、踊りたくても踊れません。
 同じような旧産炭地の芦別市を中心に新グループ結成を知り、夕張の女性が馳せ参じました。
 空知の地域の学生や社会人で作られた『ゆうばり学生連盟WARM(ワーム)』はメイン会場の札幌だけでなく、地元・夕張でも元気一杯踊りまくりました。
 厳しい冬を乗り越え春に満開の花をつけるまでの過程が表現された踊り『さくらの刻(とき)』でした。
 テレビや新聞で大きく取り上げられていました。

地域おこし
 北半球のリオのカーニバルを目指しているYOSAKOIソーラン祭りは、今年は良い天気に恵まれました。
 見物人も例年より多く、もしかしたら200万人を超したのではないかという気がします。
 YOSAKOIソーランは自治体などの援助でなく、大半が自主財源でやっているところが大きな特徴です。
 それだけに運営と財源確保は大変だったと思います。
 大通り公園や道庁前庭など、市内各地の演舞場で順番に繰り広げられるパレードは、事前の準備と徹底した運営がなければ、スムーズに進みません。
 町おこし、地域おこしというと、過疎地域の活性化の代名詞のようですが、大都会で繰り広げられたYOSAKOIソーランは、壮大な地域おこしといえそうです。

古色ゆかしき例大祭
イメージ 5 賑やかなYOSAKOIソーラン祭りが終わったばかりの札幌は、今週は一転して古式ゆかしき北海道神宮の例大祭(さっぽろ祭り)が始まります。
 YOSAKOIソーランの迫力に押されてすっかり影が薄くなった例大祭ですが、祭り期間中お囃子にのって神輿や山車が市内をしめやかに練り歩く姿が見られます。
 梅雨のない札幌は初夏真っ盛りです。
 今週は初めて夏日が記録されそうです。
 若草色の木々も徐々に緑色に変化してきました。
 ライラックはもう終わりですが、代わって街路樹のハクウンボク(写真)やニセアカシア、トチノキがいずれも可憐な白い花をつけています。


望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

恋の花・呪いの花

先日、北大構内でクロユリが見ごろを迎えていると地元紙が報じました。
早速、翌日行って見るとクロユリが群生して横向きに咲いています。
実は私は5月10日にも見に行きました。
そのときはクロユリらしき葉はありましたが、花はひとつも咲いていませんでした。
わずか2週間で様変わり、クロユリはタンポポなどに混じって咲いており、風に揺られて怪しげな雰囲気をかもし出していました。

北大のシンボル
イメージ 1高山植物のクロユリは本州では高地でしか咲きませんが、北海道では平地の湿ったところでも自生しています。
これまでに礼文島や釧路に近い霧多布湿原でひっそり咲いているクロユリを観察したことがありますが、群生して咲いているのを見るのは初めてです。
北大構内では明治から大正にかけてはあちこちにクロユリが群生していたようです。
それが大学の施設整備が進む中で昭和はじめには完全に消滅してしまいました。
幻の花を復活させようと一昨年、北大美術部の学生やボランティアが中心になって、ポプラ並木に近い一角に球根を植えました。
2年目の今年もクロユリは見事に花を咲かせ、新名所としてクロユリは北大のシンボルになりつつあります。

恋の花
 ♪ 黒百合は 恋の花 愛する人に 捧げれば 二人はいつかは 結びつく・・・
   黒百合は 魔物だよ 花の香りが 沁み付いて 結んだ二人は 離れない・・・ ♪

作詞、菊田一夫・作曲、古関裕而の名コンビで戦後一世を風靡した黒百合の歌です。恋の歌です。

イメージ 2黒百合に想いを込めて、人に知られぬように好きな人の傍らにそっとおき、その人が何気なく手に取れば二人は必ず結ばれるということでしょうか。
黒百合は魔物だよ、花の香りが沁み付いて・・・と美化して歌い上げていますが、黒百合に鼻を近づけると二度と嗅ぎたくない悪臭がするのも面白いです。
花の美しさをたとえる言葉として可憐、清楚、高貴などさまざまな言葉がありますが、クロユリに関する限りそのような言葉は無縁です。


小首をちょこんとかしげて咲く濃い赤紫色の花姿はどこか怪しげであり、神秘的でもあります。
クロユリは人を狂わす恋の花、魔性の花といわれる所以でしょうか。


呪いの花
イメージ 3クロユリは北海道では恋の花でも富山県では呪いの花のようです。
越中・富山の佐々成政は籠愛していた腰元と小姓との仲を疑い、嫉妬心から二人を殺した。
身に覚えのない早百合は、「私の亡霊が立山にクロユリを咲かせたとき、佐々家は滅びるでしょう」と叫びながら息たえたという。
その後、成政は秀吉の正妻、北の政所に取り入ろうと、立山に咲く珍しいクロユリの花を献上したところ、不吉な花として逆に怒りをかい、佐々家は衰運の一途をたどる。
そして、早百合の予言どおり、成政は切腹、家も滅びた。

クロユリの花は成政を恨みながら死んだ腰元、早百合の化身なのでしょうか。
クロユリの花言葉は恋とともに、執念深さ、呪いです。

生まれ出づる悩み
イメージ 4明治後半から大正時代の一番の売れっ子作家といったら有島武郎です。
有島武郎は絵も好きで、美術部の創設に参加し、北大構内のあちこちに咲いていた黒百合にちなんで、サークルの名は「黒百合会」と名付けられました。 
写真は札幌郊外の芸術の森に移設、保存されてる旧有島邸です。
明治の面影が残っています。
黒百合会の作品展を見て一人の少年が突然有島武郎を訪れます。
汚い中学校の制服の立襟のホックをうるさそうにはずしており、ぶっきらぼうに自分の書いた絵を見てもらいたいと、抱えきれないほどの絵を持ち込み、風呂敷の中から数枚乱暴に引き抜いて私の前に置いた・・・
礼儀をわきまえない高慢ちきな若者に、不快な思いをした有島武郎ではあったが、絵を一目見て驚かずにはいられなかった・・・

漁夫画家として生涯、日本海に面する岩内に住む木田金次郎と、有島武郎の初めての出会いであり、これによって彼の代表作「生まれ出づる悩み」が誕生しました。(小説のモデルは金次郎)

黒百合は漁師の子で粗暴な木田金次郎と大正天皇のご学友であった有島武郎を結びつけた縁結びの神だったかもしれません。
去年、岩内を訪れたとき郷土館の館長が、ロクに漁もしない金次郎は金がなくなるとあちこちに借金し、売れない絵を置いていった。
私の父は「大きくなったら金次郎のようになるなよ」と子どもにいうのが口癖でした。という興味深い話を聞かせてくれました。
極貧の中でも絵を捨てなかった金次郎の生活ぶりが伺えます。
金次郎は晩年、評価され、いまや立派な木田金次郎美術館が岩内に建てられています。
それにしても、交通機関の発達していない明治時代に、岩内から風呂敷一杯の絵を背負って何日掛けて札幌の有島の家を捜し求めてきたことでしょう。
金次郎少年のひたむきさと、どうなるかわからない怪しげな気持ちはクロユリに通じるものがあったのかもしれません。
クロユリをじっとみていると、単なる花では終わらない何かを持っている花だという気がするのが不思議です。

イメージ 5クロユリは絶滅危惧種のひとつ手前の希少種に指定されています。
いつまでも残ってほしい花のひとつです。
黒百合会は来年で100年を迎えるそうです。
来年はクロユリの咲く頃どんなイベントが催されるのでしょう
(寄稿=望田 武司)


望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

造作された植物

 札幌は初夏の花、ライラックがいま満開です。
 これから夏に向かって暖かさが増していくと思いきや、逆にひんやりとした天気が続いています。
 まるで寒の戻りです。
 この時期の冷え込みはリラ冷えといわれています。(リラはライラックのフランス語)
 とても語感の良い言葉です。

 リラ冷えや 睡眠剤は まだ効きて

イメージ 1 札幌の俳人、榛谷(はんがい)美枝子さんが戦時中に詠んだこの句で、リラ冷えは初めて世に出ました。
 何よりも人気作家渡辺淳一の小説『リラ冷えの街』で一気に定着しました。
 リラ冷えが続いたといっても、気温は15度C前後、決して厳しい冷え込みではありません。
 むしろライラックの花の寿命を延ばしているともいえます。
 ライラックにはいろいろな色がありますが、リラ冷えには白い花がぴったりです。(写真:市役所前) ちなみにライラックの和名は、ムラサキハシドイです。
 なんとなく垢抜けしてない名前で、和名を言う市民はほとんどいません。

まだまだ見られる桜
イメージ 2 ライラックの花が咲き始めた先週、札幌市内では最後のサクラが満開でした。
 サトザクラです。
 エゾヤマザクラやソメイヨシノが終わった頃から、咲き始めます。
 そして花の期間が長いのが特徴です。
 ぽっちゃりとしたさくらで、花びらが八重になっていることからヤエザクラとも言われています。
 大阪造幣局の有名な「桜の通り抜け」は、このヤエザクラの開花時期に行われているようです。
 サトザクラの名所、重要文化財の道庁赤レンガの前庭(写真)には、この時期サクラを楽しむ市民や観光客で賑わいました。
 花びらが凝集して垂れ下がっている様は、まるでチアリーダーや子どもが運動会のときに使うポンポンみたいです。

品種改良
イメージ 3 サトザクラは、山に生えている「山桜」に対して、人里に植えられているので「里桜」といわれています。
 すべて園芸品種です。
 従っていろいろな品種が作られています。
 もっとも代表的な品種が、濃いピンクの関山(かんざん)です。(写真右)道庁前庭や大通り公園のサトザクラの大半が関山です。

 その道庁前庭にわずかに2本、白色の普賢象(ふげんぞう)が池の淵に植えられています。
 ピンクに混じった白い普賢象はひときわ目立ちます。(写真下左)
 花びらの中の雌しべが葉化して長く、普賢菩薩が乗った象の牙に似ているようだということで、この名がついたそうです。
                イメージ 4 イメージ 5

 先週 鬱金(うこん)という品種を、豪邸の庭だったという札幌郊外の公園で見ることができました。(写真上右)
 道南のサクラの名所、松前城のある公園で、数年前に見て以来のご対面です。
 白地に薄い緑が透かしのように入っており、とても品のいいサクラです。
 サトザクラは人間が作ったものだけに中途半端なものはなく、皆それなりに特徴があります。

春でも紅葉
イメージ 6 園芸品種は決してサクラだけではありません。
 春だというのに、すでに紅葉しているもみじがあります。
 ノムラカエデです。(写真右)
 一般住宅の庭に植えられているのをよく見かけます。
 紅葉が秋だけなのはもったいない、年中見たいものだという人間の欲望で作られたカエデです。
 カエルはおたまじゃくしを経て、カエルになるのが当たり前です。
 カエルの手、カエル手からカエデとなった元祖カエルも、芽が出たときから紅葉しているノムラカエデにはさぞびっくりのことでしょう。
イメージ 7 これでもかというカエデに遭遇しました。
 ノムラカエデはややくすんだ紫紅色であるのに対し、こちらのカエデは真っ赤な紅葉です。(写真左:札幌清田区)
 名付けてチシオモミジ
 鮮血がそのままモミジの色になっています。
 5月というのにこんなモミジがあるのかと思いました。
 園芸植物には疎く、聞くと結構人気のある園芸種だそうです。
 青空に映えるチシオモミジ、見事というしかありません。
 この一角だけはすでに秋です。

自生種と園芸種
 サクラやカエデは日本人が古くから愛した植物です。
 それだけに人間の手が入り、自然ではありえない特徴のある品種が次々に生まれました。
 サクラの鬱金やチシオモミジは、行きつくところまで行った傑作なのかもしれません。
 しかし、余りにも見事すぎて自然の中ではどうしても違和感を感じます。
 そして、どこかに無理をしているのではないかなという気持ちがよぎります。
 もともと自然はそんなに格好の良いものではありません。
 目鼻立ちがパッチリというのは美容形成の分野で、自然界と対極にある世界ということでしょうか。

 まもなくスズランの季節です。
 鈴のような花が目立つように葉の上から出ているのは、園芸用に輸入されたドイツスズランです。

イメージ 8 自生しているスズランは葉の下に隠れるようにひっそり咲いています。
 スズランが君影草といわれる所以です。
 (写真:日本一の群生地、平取町、去年6月)

 たまたま天皇皇后両陛下は先日訪問先のスエーデンで、植物分類学の祖リンネの墓をお参りされました。
 リンネが作った二命名法による分類の中で、スズランの学名には日本人の名前がつけられています。
 そのスズランは紛れもなく日本の自然界のスズラン、君影草です。
 園芸植物が人の心を満たすために作られたものならば、自然界にも人の心を和ませる植物も、まだまだたくさんあるような気がします。(寄稿=望田 武司)


望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

悠久の花

 5月に入って北海道は野に山に、花が次から次へと咲き始めました。
 花の命は短くてあっという間に散ったと思うと、新しい花が可憐な姿を見せてくれます。
 札幌中心部の大通公園では今日23日からライラック祭りが始まりました。
イメージ 1 祭りにあわせるかのようにライラックがほころび始めています。
 道行く市民や観光客は花に近づき香りをかいでいます。
 花を求めてほぼ毎日のように出歩いていました。
 写真の整理も追いつかず、メールを打つのもご無沙汰するほどのフィールドワークラッシュでした。
 ライラックが咲くと、何となく花も一段落という感じを受けます。
 季節も春から初夏へと変わりました。

北海道によく見られる花
イメージ 2 エンレイソウという野花があります。
 ユリ科の花で、低地や山地の明るい落葉樹林内に咲きます。
 葉が大きな割には花が真ん中にポツンと咲いています。
 華やかさはなく、どちらかというと一見単純で不細工な花です。
 しかし、北海道の野花はエンレイソウなくして語れないほど奥深いことに気付きます。

 一口にエンレイソウといってもいろいろな種類があります。
 花の色が小豆色のエンレイソウ(左写真:野幌・江別)
 白くて横向きに咲くミヤマエンレイソウ(下左:地球岬・室蘭)
 鮮やかな濃紅のコジマエンレイソウ(下中央:有珠・伊達)
 小学一年生の制服の白い大きな襟を思わせるオオバナノエンレイソウ(下右:判官館・新冠)・・・
 7〜8種あるようですが、私が判別できるのはこの4種類だけです。
イメージ 3 イメージ 4 イメージ 5

オール3
 学校の成績表ではありません。
 エンレイソウの一番の特徴は、すべてが3でできているということです。
 上記写真をとくとご覧なってください。
 葉が3枚、花弁が3枚、ガクが3枚、おしべは3の倍数の6本・・・
 なぜすべてが3なのでしょうか、自然界の神秘さを感じます。
 3の数字と縁のあるエンレイソウの属名は「trillium」 tri(トライアングルの3)とllium(ユリ)をあわせています。

縁起の良い花
 エンレイソウは種子が発芽してから花が咲くまで、10年くらいかかるそうです。
 この話を聞くと、踏まないように歩かなければなりません。
 歳をとらないとエンレイソウを見られないということでしょうか、漢字で「延齢草」と書き、縁起の良い花とされています。
 「延命といふ草を植ゑたり。是れを見る人善を招き、悪をさけ、寿命久しく延ぶといふ」(平家物語)

野いちご
イメージ 6 エンレイソウは秋に黒い実をつけます。
 アイヌの子どもたちはエンレイソウの群落の野山を駆け回り、エマウリ(草イチゴ)と呼んで、おやつ代わりにエンレイソウの実を摘んでは食べたそうです。
 私も去年食べてみました。甘くておいしい。
 ただ食べ過ぎると下痢を起こすそうです。
 牛は好んで食べますが、馬は見向きもしないというのも面白いです。
 写真:有珠善光寺裏の群落

 エンレイソウは北海道ではもっともポピュラーな野花のひとつですが、本州ではなじみの薄い花のようです。
 エンレイソウと聞いてピンと来る人は、道産子か北海道に旅行したことのある人でしょうか。
 またエンレイソウはアジア・アメリカには分布していますが、どういうわけかヨーロッパには生育していないそうです。
 ヨーロッパの研究者はすべてが3の不思議なtrilliumをみて不思議がり、ぜひヨーロッパで育てたいと持ち帰るそうです。

種間雑種
イメージ 7 エンレイソウの種類の中でコジマエンレイソウがあります。
 その花の色形は松本清張の唇を思い出させます。
 渡島半島の松前沖の日本海に浮かんでいる松前小島で発見されたことからこの名がつきました。
 エンレイソウ(染色体数20)とオオバナノエンレイソウ(染色体10)の雑種で、染色体15のため子孫を残すことができません。
 それがあるとき突然変異で染色体が倍増して偶数になり、コジマエンレイソウは以降、函館・有珠(伊達)・張碓(小樽)・星置(札幌)・地球岬(室蘭)と次々に見つかったそうです。
 フィールドワークでエンレイソウの研究で知られる老学者の話を聞くと、たった一つの花からでも自然界の悠久さと神秘さが垣間見られます。
 またその淡々とした話ぶりから、逆に生涯エンレイソウの研究に打ち込んだ学者の執念に、思わず後ずさりをするおもいです。

北大のシンボル
イメージ 8 北大構内を歩きますとハルニレの大木があちこちにあって、観光客がエルム(ハルニレのこと)の園の散策を楽しんでいます。
 また「エンレイソウ」という瀟洒なレストランもあります。
 テーブルの客からは英語が飛び交い、雑然とした学生食堂とはちょっと趣きが違います。
 海外から来た研究者と大学教授が昼食やティーを楽しむ空間でしょうか。
 また、オオバナノエンレイソウは北大の記章にデザインされているほか、北大の寮歌「都ぞ弥生」にもエンレイソウが格調高く謳いこまれています。

   ♪ 牧場の若草陽炎燃えて、森には桂の新緑萌し、
                             雲ゆく雲雀に延齢草の、真白の花影さゆらぎて立つ ♪

 クラーク博士、ハルニレだけでなく、エンレイソウも北大の代名詞といえましょう。
 北大構内には各種のエンレイソウが散見されますが、一昔前には群落が構内あちこちにあったことでしょう。
 寒冷地の大地に根付いたエンレイソウの強い生き様に、パイオニアと進取の精神をオーバーラップさせたのでしょうか。

悠久の時を生きる花
イメージ 9 北海道北部に名寄市という小都市があります。気候の厳しい地域でもあります。
 名寄市の「市花」、市の花がオオバナノエンレイソウです。
 市民公募によって選ばれました。
 数ある花の中から選ばれた理由は
 ・自生種であること
 ・カナダの姉妹都市のある州の花であること
 ・開拓の先駆的役割を果した北大の校章であることなどによるそうです

 この地に開拓の鍬を下ろした人々は、肥沃な原野に自生するオオバナノエンレイソウが芽を出し、花が咲くまでの長いライフサイクルに「悠久の時を生きる花」を見、ひたすらに忍従したのかも知れない。
 オオバナノエンレイソウを「市花」と定めた名寄市民の原風景を見た思いがする。

 道北地方で高校教師をしながらアイヌ研究に取り組んできた婦人は、その著「アイヌ植物誌」にこう書いています。
 エンレイソウはさまざまに表現されています。

 森の中で凛として咲くエンレイソウを見て「森の貴婦人の甘い誘惑」と称した人がいました。
 また花言葉は「奥ゆかしい美しさ」「落ち着いた美しさ」です。
 花の構成が単純であるがゆえに、逆にさまざまな気持ちを抱かせる花、それがエンレイソウの花という気がします。
 毎春、森で出会うと「これが北海道だ」と思わせるのがエンレイソウです。(寄稿=望田 武司)


望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

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