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日銀総裁問題と金融政策

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 日銀の福井俊彦総裁が村上ファンドに投資し、巨額の利益を上げていた問題をめぐって、総裁辞任を求める声が依然として絶えない。その中で、日銀は13、14両日の金融政策決定会合で、ゼロ金利政策の解除の是非を議論することになったが、金融政策の前提ともなる信頼回復のために、今、日銀と福井総裁は何をすべきかを考えてみる。
 
 やるべきことは次の3項目である。

1) 7月の金融政策決定会合で、ゼロ金利政策の解除を明確な形で決める
2) 日銀の役員などの資産の保有・運用などに関する内部規定を、外部有識者で構成する諮問会議が6日、答申した通りに改定する
3) 福井総裁が、世論に反して、残された約2年の任期を全うしようとするなら、「不祥事を起こした責任をとるために、今後、在任中はいっさい報酬を辞退し、ただ働きする」と申し出る


 政府・与党のゼロ金利政策解除に関する意見は二分している。解除に反対の財務省や自民党の一部は、福井総裁の延命を擁護したことを理由に、日銀がゼロ金利解除を遅らせるように、今なお、揺さぶりをかけている。このことを、市場も国民一般もはっきりと意識している。もし、日銀が7月の金融政策決定会合でのゼロ金利政策解除を見送ったら、日銀の金融政策は福井総裁の不祥事に対する政府・自民党の揺さぶりで歪められたという見方が一気に広がり、市場における日銀の信頼は地に堕ちるだろう。
 金融政策をめぐる情勢を慎重に判断するため、ゼロ金利解除を1か月遅らせる選択もありうるが、総裁の不祥事を抱えている日銀は、信頼回復を優先せざるをえない。
 98年、中央銀行の独立性と中立性を強調した新・日銀法が施行された時、日銀は役員などの資産の保有・運用についての厳しい内部規定を制定すべきだった。ところが、実際は、規定を旧・日銀法時代とほとんど変更しなかった。独立性と中立性を維持するために、いかに自らを律しなければいけないかについての意識が極めて希薄であったためである。
 諮問会議が答申した新ルールの内容は、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など欧米諸国の中央銀行のルールに比べて厳しいものである。とりわけ、役員などの退任後1年間、株式、投資信託、投資目的の不動産などの売買を禁止した点は注目される。しかし、福井氏が日銀総裁としての見識を完全に欠いた不祥事を起こしてしまった現実を踏まえれば、欧米の中央銀行より弱いルールでは世間を納得させることはできない。日銀としては、諮問会議の答申を忠実に実行する以外、選択の余地はない。
 福井総裁は不祥事の責任を取るために、総裁給与の30%を6か月間、辞退することを申し出た。いかにも中途半端な内容である。たぶん、福井総裁だけでなく、日銀事務当局も「給与の30%を半年間、辞退すれば、一応、総裁として責任をとったことになり、世間の追及をかわせる」と「計算」した結果だろう。
 しかし、金融政策の最高責任者である日銀総裁の責任は「計算できるもの」ではない。首相の責任と非常に近く、本来なら、辞任しか責任のとりようはない。「自分は日銀総裁として最適で、余人と代えがたい」というのであれば、身を捨てる覚悟を国民に示さなくてはならない。覚悟の形は、「辞任」以外なら、「残りの任期のただ働き」しかない。見え見えの「計算」を思い切って取り消し、「ただ働きの覚悟」を示すことが、約70%が辞任を求めている国民に許しを請う、最低限の方法である。(早房 長治)

 ※このコラムは、ヤフーセカンドライフサイトとの提携企画です。
 「村上ファンド」への資金拠出で多額の運用益を得ていた福井俊彦日銀総裁の問題がエスカレートし引責辞任をめぐる議論にまで発展してきた。メディアの中で議論が分かれるが、私は、福井総裁が辞任の道を選ぶよりも金融政策運営で「信任」回復を図るべきだ、と思う。その意味で、福井総裁は金融資産を含め「ファンド」への関与に関する説明を小出しにせず、しっかりと説明責任を果たし、この問題に終止符を打つべきだ、と思う。

世論調査で「辞めるべき」が70%超に、世論に敏感な政治に同調者も
 進退問題が一気に浮上してきたきっかけは、いくつかの世論調査で福井総裁への批判が強まったことだ。中には「辞めるべき」が70%超に及んでいる。これら世論の動向に敏感な政治サイドにも、野党だけでなく与党内部でも福井総裁に進退決断を迫る動きが出てきた。
 その引き金となったのは、福井総裁の説明が、国会の資料要求に応える形での小出しの説明に終始したことだ。結果的に、世論調査を通じての世論の反応は、そのつど、「えっ、まだ、問題があったのか」といった受け止め方になり、マイナス方向に作用している。
 具体的には、6月20日に国会への報告後の公表で、福井総裁には「村上ファンド」への資金拠出で多額の運用益があったこと、さらに前任の富士通総研理事長時代に社外取締役を引き受けた関連で関係企業の株式を保有しながら、他の日銀審議委員らに義務付けている信託銀行への管理預託・売買凍結という手続きをとっていなかったことが判明したことだ。
 さらに、国会の資料要求に応じて6月27日に提出した福井総裁の個人金融資産が2億9164万円にのぼっていたこと、その後、6月29日になって、同じく野党民主党からの要求に応じて福井総裁が提出した資料で、12万ドル(円換算約1400万円)の外貨預金保有があったこと――が判明した。

福井日銀総裁の情報開示、受身で小出しなのが影響
 これらは文字通り、小出しに、しかも国会などの求めに応じて、という受身のものばかりなのだ。
 これ以外に、メディアの報道で福井総裁が富士通総研理事長時代に「村上ファンド」へ投資した資金の受け皿となった投資事業組合というのは福井氏専用のもので、オリックスがそこに関与していたことも新たに判明した。
 こういった小出しで、いろいろなものが出てくると、世論調査を通じた世論だけでなく、これまで福井総裁の人柄やセントラルバンカーとしての見識、論理などを評価してきた人たちまでが、「福井さんもあれだけ、日ごろから説明責任を口にしているのならば、自らの問題に決着をつけるため、洗いざらい出して、説明責任を果たすべきだ。ここまでくると守りがい、バックアップのしがいがない、といったことになりかねない」との声になっている。

一部夕刊紙は無責任な辞任後の後任総裁観測報道
 こういったことが繰り返されると、苛立ちが募るどころか批判や反発となり、一部の夕刊紙などでの「日銀総裁に7月辞任論浮上、後任は竹中氏か塩爺いか」といった無責任な報道になってくる。
 これら報道をよく見ると、誰がそういっているのか、まったくあいまいで、単に興味本位に、見出しだけセンセーショナルなお騒がせ報道でしかない。同じメディアに携わる1人として、こういった報道を見ると、十分な取材もせず、また確認もとらずに書く無責任さにはがっかりさせられる。
 その意味でも、福井総裁は、この際、あとで批判や反発を招かないように、「村上ファンド」問題で富士通総研理事長時代に他の役員と一緒に応援の形で資金拠出したはずなのに、福井氏専用の投資組合になっていること、そのまとめ役にオリックスがかかわっていたことに関する説明、さらに社外取締役がらみで保有する関係企業株式に関しても手続きを踏んで取得したもので、それら企業から譲渡を受けたものでないこと――などをしっかり説明して説明責任を果たすと同時に、率先して日銀幹部、首脳らの資産公開問題などに毅然として指導力を発揮することが重要だ。
 ある日銀OBが以前、「日銀が金融政策の独立性は確保できたのは重要なことだが、肝心の業務マネージメントの面での独立性がまだ確保できていないのは問題だ」とした。しかし、この局面になると、こういった発言も、まずは足元を固め、外部からの批判を招かない状況をつくってからのことでないか、といいたくなる。

タイ有力財界人のタクシン前首相評は興味深い
 ところで、ここで、興味深い発言を紹介したい。私の知り合いが今年春、タイの有力財界人との会話で出た発言が今回の日銀総裁問題と無縁でない、と教えてくれた話だ。
 そのタイ財界人は、蓄財疑惑や与党だけの強引な国政選挙問題で結果的に辞任を余儀なくされるタクシン前首相の問題について、こう述べた、という。
 「タクシンがよくやってくれていることは紛れもないことだが、それだけに彼自身がどんどん神格化され、それに合わせて、人々がクリーンさを求め、そのうちどんどんエスカレートしTOO CLEANを求めるようになった。タイの政治家にとっては、大した話ではないのかもしれないが、タイ全体にとっては大きな損失だ」
 今回の福井日銀総裁の問題にも、同じようなことがいえる。
 国民や内外の金融市場関係者が求めているのは、日銀総裁という職に就く人、現時点で言えば福井総裁自身の高潔さ、規律、そして誰からも後ろ指をさされることのないほどに身辺に一点の疑惑も残さないこと、同時に、尊敬をかちとる人柄、それらすべてをもとにした金融政策判断や政策運営に対する厳しさなのだろう。
 タクシン前首相のように福井日銀総裁が神格化される、というのは、ちょっと異常な感じもあるが、日銀総裁のポジションが、通貨やマネーなどに関して、最もシビアな姿勢を貫くべき立場であることは、誰もが認め、かつ求めること。
その点で、福井日銀総裁が、当初の「志」の部分でのファンドへの資金拠出とは別に、日銀総裁就任時に、すべてを払しょくしたり、身ぎれいになって、シビアなポストに臨むということで、批判を浴びているように脇の甘さが見えていることは、何としても残念なことだ。

マーケット関係者の間でも「事態を長引かせることが市場を不安定に」の声も
 ただ、私の友人のマーケット関係者や外資系金融機関のトップの中には、「福井総裁はここまで来れば、辞任せざるを得ないだろう」とか「マーケットの信任が薄れてきている。日銀総裁就任時に身ぎれいにしておくのは必須のことだった。ここまでくれば、福井総裁としては無念かもしれないが、引責辞任すべきだ」、「辞任で金融市場は混乱するという見方もあるが、むしろ、長引かせることで、かえって金融市場を不安定化させる」「失礼な言い方かも知れないが、前任の高齢の速水優氏でも務まるほど、日銀の官僚機構はしっかりしている。福井総裁に代わる人はいくらでもいる。それに、金融政策決定に関しては、政策決定会合の9氏で決める枠組みがあるので、大勢に影響はない」という厳しい意見も出始めているのだ。

今は重要な政策運営の時期、「マーケットとの対話」含めしっかりした政策判断を
 しかし、私は、日銀の金融政策運営にとって、ゼロ金利解除の政策タイミングの判断が問われる重要な局面だけに、混乱に拍車をかける福井日銀総裁の辞任という選択肢よりも、いまは、福井総裁自身が、あとで問われないように関係資料を公表したり、情報公開することで説明責任を果たして、区切りをつけることだ。そして、金融政策運営に関しては、「マーケットとの対話」を含めて、しっかりとした政策判断を下すことだ。それしかない、と思うのだが、いかがだろうか。(牧野 義司)
 福井俊彦・日銀総裁は6月20日、インサイダー取引容疑で逮捕された村上世彰容疑者の率いた「村上ファンド」への投資状況に関する報告書を国会に提出するとともに、日銀など2ヵ所で記者会見を行い、自らに減俸処分を課すことを明らかにした。これでけじめが付いたのかどうか、先行きは予断を許さないが、総裁個人の責任だけを追及する「福井バッシング」よりも、もっと重要なことがある。現行の証券取引法のインサイダー取引規制の規制対象が、「個別企業の内部情報」だけに限定されており、財政、金融、為替、規制など企業の株価に大きな影響を与える「政策情報」が「法の網の目」にかかっていない点を見逃すべきでないという問題である。言い換えれば、政治家、中央銀行マン、官僚の「インサイダー取引天国」が放置されているのである。一連の騒ぎを教訓として活かすためには、スキャンダル騒ぎだけに明け暮れず、事態を冷静に分析し、法制の不備を改める議論をすることが重要だろう。
 日本のインサイダー取引規制は、極秘段階の資本提携交渉の情報が漏えいし、不正な株式売買が行われた“新日鉄・三協精機事件”がきっかけとなり、1980年代後半に整備された。ただ、何が刑事罰の対象になる「違法な行為か」を厳密に規定する、「罪刑法定主義」の足かせがあって、「インサイダー取引」の規制対象を、M&A(企業の合併・買収)、増資、業績、新製品投入、事故や天災による被害など、企業サイドの情報だけに絞り込んでしまった問題がある。
 このため、例えば、ある企業のM&A情報を知り株式を売買して不正な利益を得れば、証券取引法違反に問われて、懲役、罰金の刑事罰を受ける可能性があるが、同じように企業経営を大きく左右するはずの財政、金融、為替、規制、行政処分などの情報は、インサイダー取引規制の対象外になってしまったのだ。
 具体例をあげれば、金利の引き下げが決まり、収益改善が見込まれるメガバンク株を売買して不正な利益を得ても法的な責任に問われることがないのである。言い換えれば、企業の役員・従業員と違い、政治家、中央銀行マン、官僚などに不心得者がいれば、実にインサイダー取引がやりやすい環境が放置されているわけだ。この点では、成文化された条文の文言に捕らわれず、法の精神を重視して、市場監視当局、捜査・司法当局、裁判所などが果敢に“事件”に取り組む、「インサイダー取引規制の本家」米国の制度と、日本のそれが大きく異なっている。
 実際に、こうした政策情報を利用したインサイダー情報を規制する場合、証券取引法で網の目をかけるのは、立法技術の面で難しいうえ、いたずらに円滑な取引を制限する恐れもある。そこで、立法化にあたっては、政治資金規正法、日本銀行法、国家公務員法などで該当者への禁止規定を設けるような工夫も必要かもしれない。
 足りないのは、インサイダー取引規制だけではない。新聞で指摘されている、日銀幹部の資産公開制度も必要だ。さらに、登用試験の充実も必要だ。米国でFRB議長を登用する際には、「大統領が指名し、議会が承認する」となっており、議会が、資産内容だけでなく、経歴や思想、政策哲学まで徹底的に吟味する。これに対し、日銀法には「両院の同意を得て、内閣が任命」という規定があるものの、衆、参両議院の同意は形ばかり。日銀総裁の人選は、首相の専管事項になってしまっているのが実情だ。こうした点も、しり抜けのインサイダー取引と同様に改善が急務ではないだろうか。(町田 徹)
 福井俊彦日銀総裁は6月20日、日本記者クラブでの昼食講演会で、「最近の金融経済情勢と金融政策運営」というテーマで、内外のマーケットや金融関係者が強い関心を持つゼロ金利政策解除に絡む問題に関して、講演するはずだった。ところが、福井総裁の「村上ファンド」への資金拠出問題を巡っての日銀総裁としての規律、さらには今後の政策運営への影響などに100人を超すメディアの関心が集まり、日頃は毅然とした態度で金融政策を語る福井総裁もひたすら釈明に追われた。
 この昼食講演会は、日本記者クラブが、その時々のニュースバリューのある著名なゲストスピーカーを招き、昼食を交えて講演を聞いたあと、質疑応答をするもの。

「総裁就任時にもっと慎重に対応していれば、違った結論になっていた」
 福井総裁は、最近の金融政策運営に関するスピーチに入る前に、会場の雰囲気を察知したこともあろうが、あらかじめ心に決めていたようで、冒頭、「お許しをいただけるならば、最初に、今回の村上ファンドへの資金拠出問題について、少しお話ししたい」とし、次のように述べた。
 「村上ファンドへの資金拠出に関して、大変、世の中をお騒がせして申し訳ない。私が2003年に日銀総裁に就任時に、なぜ、取り止めなかったのか、というご批判については、振り返ってみれば、ご批判はごもっともなことだ。当時、拠出を続けたことは日銀のコンプライアンス上、問題なかったが、世の中をお騒がせしていることは本意でない。就任時に、もっと慎重に対応していれば、違った結論になっていた。真摯に深く反省している」
 「ただ、資金拠出自体は、利益獲得のためではない。それは本心だ。利益が出る場合、皆さまに納得してもらえる利益処分を検討する」
 「保有株については、売買しておらず、また日銀のコンプライアンス・ルールにも反していないが、私自身、今、重く受け止めている」
 「今回は、職務の公正さが問われている。日銀幹部が金融資産をどういう形で保有しているか、それを開示する場合、どういうふうにやればいいか、また個人の財産権とプライバシーをどう解決すればいいか、日銀内部に特別検討会議を組織した。本日以降、精力的に取り組みたい」
 「私としては、さまざまなご批判をしっかり受け止め、そのうえで職責を全うしたい」
 福井総裁はこう述べたあと、本来の講演テーマである金融政策運営について、約30分ほど話した。この段階になると、本来の福井総裁に戻って、メリハリをつけた話ぶりとなった。
 しかし、終わったあとの質疑で、日本記者クラブの幹事の1人が代表質問という形で、再び福井総裁の「村上ファンド」への資金拠出に関連して、「なぜ、総裁就任時に適切に処分しなかったのか、疑問が残るので、再度、お答え願いたい」と質問した。
 福井総裁はその点に関して、以下のように釈明した。
 「90年代の最後の頃、日本社会全体が閉塞状況に陥り、若い世代が尻ごみするところがあった。私としては、村上氏のみならず若い人たちが閉塞状況を打破するため、勇気をもって突破口を開く役割を果たしてほしかった。その頃、村上氏が旧通産省を飛び出し独立する動きがあったので、当時、私がいた研究所(富士通総研)としても、支援してあげようということにした」
 「私の総裁就任時は、デフレスパイラルに陥らないようにしようにも、前向きに出てくる状況になかった。企業も債務や設備など3つの過剰を抱えていた。そこへイラク戦争が起こり、一方で、金融不安も続いていた。その時に、若い人への支援の心を断つことは出来なかった」

「村上氏の投資行動が当初の志から外れていたこと、予見できる状況になかった」
 「総裁に就任してからは(会うことも少なく)村上氏の志と行動を確かめたりチェックすることは出来なかった。ただ、村上氏(の投資行動など)が市場からチェックを受け、評価を下されるだろうと考えた」
 「投資ファンドについては一任勘定であり、日銀のルールに沿って、許されることだと思っていた」
 「村上氏の投資行動が、当初の志から外れ、しかもルール違反していることについては、予見できる状況でなかった。ただ、その点は、私の不明を恥じる」
 また、代表質問者は、「会場から厳しい質問が来ているので、紹介する。日銀総裁を辞任すべきだ、という声があるがどう思うかと」
 これに対して、福井総裁は「厳しいご批判は謙虚に、そして率直に受け止める。その上で、私としては職責を全うしたい。いまの立場に固執しているわけではない。しかし、私自身の(金融政策に取り組む)努力を買っていただきたい」
 このあと、金融政策運営に関する質問がいくつか続いたが、会場のメディアから、再び、「村上ファンド」への日銀総裁という立場での資金拠出問題の是非について、質問が出た。
 まず、「日銀総裁には最高の潔癖性が求められる。重ねて、なぜ、総裁就任時にフリーズしなかったのか」という質問が出た。
 これについて、福井総裁は「振り返ってみれば、大きな反省事項であり、自らの不明を恥じる。若い者を支援するということを断ち切れなかったところに反省がある。ただ、私自身、ファンドの一任勘定には自分の裁量が及ばないので、とくに問題ないかと思った」と述べた。

「日銀の政策決定が政治に影響されたり左右されることはない」
 また、別のメディアから「野党の日銀総裁辞任要求に対して、与党側は、その必要がないとしているが、日銀総裁は、与党に借りをつくった、との声もある。総裁に対する信任が薄れれば、マーケットに金融政策メッセージがうまく伝わらなくなる心配が出てくるのでないか」という質問が出た。
 これに対して、福井総裁は、「日銀の政策決定や政策決定プロセスで政治に影響を受けるということはないし、左右されることはない。今年3月の量的緩和政策解除の時も同じだった」
 また、外国メディアから「グローバルスタンダードでも中央銀行総裁が規律を重んじられているが、どう受け止めるか。またファンドで利益が出た場合、チャリティーに寄付するということも考えられるか」という質問に対して、福井総裁は「私としては、規律を重んじながら行動する。ぜひ、みなさんが厳しくウォッチしていただきたい。利益が出た場合については、自分の利益のために使うことはない。チャリティーに寄付することも1つの方法だ、と思っている」

福井総裁のファンド資金保有残高は05年末で2231万円――日銀が公表
 質疑の中で、福井総裁は、ファンドの利益がどれぐらい出たのかという質問に対して「このあと国会で資料提出し、夕方(20日夕方)には別途、記者会見するつもりだ」と述べたが、この日本記者クラブでの昼食講演会後に国会に報告し、同時に日銀が公表した2005年末時点でのファンド資金の保有残高は2231万円だった。
 日銀の公表数字によると、元本が1000万円、純利益が562万円、評価益が669万円、という。
 福井総裁は公表後の20日夕方の記者会見で、責任をとり総裁の報酬について、今後6ヶ月間、30%カットを行なう、と述べると同時に「村上氏の志が結果として、当初のものからずれていたという実感が、この利益数字で裏付けられるかもしれない」と述べた。
 また、福井総裁が総裁就任前の富士通総研理事長時代に、民間企業の社外取締役に就任した際、株式を保有していたことを国会答弁などで答えているが、20日夕方の記者会見で、商船三井、キッコーマン、富士通、三井不動産、新日本製鉄の株式を保有していたことを明らかにした。ただ、福井総裁は、総裁就任後も一切売買せず事実上の凍結状態にしていたことを明らかにした。

 これが、6月20日の福井日銀総裁の「村上ファンド」への資金拠出問題を巡るメディアとのやりとりの全てだ。
 福井総裁の日頃の人柄や見識を知る多くの人たちは、当初の資金拠出動機が志への支援と理解しても、この20日の日本記者クラブでのメディアとのやりとりに見られるように、日銀総裁就任時にファンドを解約しなかった脇の甘さ、今後の金融政策正常化への大詰めの局面での問題表面化に「まずい」と思ったのは間違いない。

福井総裁が引責辞任する必要はないが、市場の「信任」回復がカギ
 私は、福井総裁自身に今回の問題で問われるところが多いものの、福井総裁がこれまで金融政策運営で果たした役割、今後、ゼロ金利解除を含め金融政策の正常化という日銀にとってのみならず、日本にとっても「失われた10年」に区切りをつける重要局面で福井総裁が担うべき役割の大きさを考えると、引き続き日銀総裁の職にとどまって責任を全うすることが必要だ、と考える。
 そればかりでない。ここで、仮にも日銀総裁が身を律して引責辞任という決断を下した場合の市場リスクは計り知れない大きさがある。今は、そのリスクを冒すべきでない。
 しかし、今回の問題で、内外の金融市場で生じた福井総裁に対する「信任」の欠如のようなものがどこまで広がりのあるものなのか、その見極めは極めて重要だ。
 それに、庶民論議も無視できない問題だ。今回の場合、日銀がデフレ脱却のために量的緩和策を実施して金利生活者の高齢者らに不自由を強いていたにもかかわらず、日銀の最高責任者が1000万円の投資行為で結果的に2231万円の資金残高になったこと、しかも志の問題は十分に理解ができるにしても、結果として、ヘッジファンド的な村上ファンドをサポートしたのでないかという批判に対して、何とも答えにくい点が、市場の「信任」を微妙に揺るがす結果ともなっている。
 金融市場は、日銀の金融政策運営に関して、日銀に「信任」を与え、あとは日銀との「市場対話」を通じて行動している。しかし、ひとたびその「信任」の基盤が揺らいでくると、金融政策の意図が市場に伝わらないリスクも出てくる。
 その意味で、福井総裁が金融政策決定会合の議長役の立場でもあり、今後の金融政策運営面で、審議委員らの合議制で決めた金融政策判断を市場に対して、どのように適切に伝えていくか、それが「市場との対話」にうまく結びついていくか、まさに今後の福井総裁の言動にかかっている。(牧野 義司)
 日本銀行の福井俊彦総裁が、証券取引法違反(インサイダー取引)の疑いで東京地検に逮捕されている村上世彰容疑者が代表を務めていた「村上ファンド」に99年から1000万円を投資していたことが明らかになった。金融政策の最高責任者である日銀総裁として、あるまじき行為である。辞職する必要はないが、国民の前にすべての事実関係を明らかにして、何らかの形で道義的責任をとるべきである。

 99年当時、富士通総研理事長だった福井氏が「村上氏の志を激励するために」投資したことは個人の自由であるし、何の問題もない。その行為が日銀の内規に抵触していないことと、運用益について、「ルールに基づき、適正に報告されている」ことも、一応、日銀の説明を信用することにしよう。問題は、03年、福井氏が総裁就任に当たって、村上ファンドから投資資金を引き上げず、運用を任せ続けたことである。
 福井氏が個人的な考え方として、村上ファンドの存在やその活動を支持することは自由である。しかし、日銀総裁という厳しい中立性と独立性を求められる公職に就いた以上、特定のファンド、証券会社、銀行などの営業活動を支持すること、ないし、支持しないことが明らかになるような言動は許されない。この点についての福井総裁の認識と行動は、あまりにも「軽い」。
 福井氏は、13日の参院財政金融委員会で、質問に答えて、事実関係をある程度、説明し、小泉首相も出席した政府の会合で陳謝した。しかし、同日の記者会見は拒否したという。「違法行為やルール違反は行なっていないのだから、釈明する必要はない」と言うのだろうが、これでは、日銀総裁という公職の重さや、新・日銀法によって政府から独立した日銀のなすべき説明責任の重要さを理解していないと批判されても仕方ない。
 15、16両日の国会答弁と15日の記者会見でも、事実関係を全面的に明らかにせず、日銀内部のルールについても抽象的にしか説明しなかった。日銀総裁として見識を疑われても仕方ない態度である。

 日銀と福井総裁が、今、直ちになすべきことは、次の3点である。

1)総裁以下の役員について、米国の連邦準備制度理事会(FRB)並みに、個人資産を毎年、国会に報告し、公開するなど、透明性の高いルールをつくる
2)英国の中央銀行、イングランド銀行のように、役員が保有する、不動産を除いた有価証券類は信託財産とし、役員が直接的に投資判断をできないようにする
3)記者会見して、事実関係を全面的に説明した上で、何らかの形で道義的責任をとる

 新・日銀法は98年4月に施行された。旧法に比べて、独立性と透明性が強調されている
のが特徴である。にもかかわらず、施行と同時に1)2)のような措置がとられなかったのは、明らかな手落ちである。日銀の独立性と透明性についての認識の甘さが原因である。
 日銀は、福井総裁の責任を回避しようとしている。総裁に傷を負わせたくないのと、金融政策をめぐる日銀の立場が弱くなる恐れがあるためであろう。しかし、福井総裁に対する信用には、すでに自らの行為によって傷がついている。信頼を少しでも回復する道は責任を進んでとることしかない。政府与党は、表向き、福井総裁を擁護している。だが、その裏には、金融政策でゼロ金利解除の時期を遅らせるなど、政府の意向に従わせようとする下心を持っている可能性がある。政府与党の恣意を防ぐためにも、福井総裁が自ら進んで責任を取るのが最善の方法である。(早房 長治)

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