ブログ版ききみみずきん

8月中には近況報告の記事を書こうと思っています

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7月上旬から発熱外来の廃止・一般医療機関での診療など、新型インフルエンザの相談・診療体制を変更する自治体が出始め、8月にはほとんどの地域で体制が切り替わるようです。
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20090731ddlk26040522000c.html

その多くの理由は「国の指針改定を受けて」で、6月19日の発表資料を指しています。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/inful_taisho.html#taisho_01
この資料は発表当時は図ではなくテキストのみで、休校措置に関する文書も変化がありませんでした。
http://www.mext.go.jp/a_menu/influtaisaku/syousai/1279353.htm
(同日に出された文部科学省から大学機関への通達の文末に当時の文章が引用されています)。
学校・保育施設等で患者が発生した場合、当該学校・保育施設等の児童・生徒等を感染から守るために、都道府県等は、当該学校・保育施設等の設置者等に対し、必要に応じ臨時休業を要請する。
なお、感染拡大防止のため特に必要であると判断した場合、都道府県等は、患者が発生していない学校・保育施設等を含めた広域での臨時休業の要請を行うことは可能である。
それでも7月に高校野球が始まった頃から、休校から学級閉鎖に切り替える地域が出始め、厚生労働省も何も文句をつけませんでした。厚生労働省も自治体も周囲の顔色を伺いながら体制を変更しているように見えます。

「一度振り上げた拳は・・」という諺の通り、根拠の無い水際対策から始まり、ヒステリックな休校措置、個人のプライバシーに配慮の無い情報の垂れ流しに対する反省の無いまま、制度は変わります。「こちらが陰圧室です!日本人初の感染者である高校生はここで一週間を過ごすのです!!」と5月にマスクと白手袋のレポーターが叫んでいた時のウイルスと、同時期の欧米で拡がっていたウイルスと、高校野球で集団感染が起きても医師が診察すれば出場出来ることになったウイルスの性質に違いが無いことは全く不思議です(通常の点変異はありますけど)。

千葉県の「国内で患者発生が確認されて以来の一連の騒動は既に鎮静化しており・・」という記事に「”騒動”は一体何を指しているのか?」と突っ込みたくなりましたね。
http://mainichi.jp/area/chiba/news/20090801ddlk12040063000c.html

騒動はマスコミが作り出したものであって、国民の健康を守る上ではほとんど無意味だったと私は考えています。
思えば毎日新聞は文献の解釈や引用の間違った記事を出したままで、私がその間違いを指摘したメールに「ご意見有り難うございました」という返事しかありませんでした。
http://blogs.yahoo.co.jp/bloom_komichi/61316778.html

結局は、私が5月21日の記事で紹介した日本感染症学会の緊急提言の通りに推移しているに過ぎません。
http://blogs.yahoo.co.jp/bloom_komichi/61342955.html
専門的知識を持った人が協議した上で、国民の健康を願って出した声明がマスコミにも大きく取り上げられず、厚生労働省の方針にも反映されるのに時間がかかったのは何故だったのでしょうか。

私は感染症の専門家ではありませんが、生物学者としてウイルスの感染や変異の仕組みは理解しています。また、人並みの計算力はありますから、日本でPCRによって感染が確定した人が5000人いて死者がいない状態で、致死率が0.4%になる訳がないことも分かります。

それでも専門家を自称する人の中には「スペイン風邪のように感染の第二波で変異をして、多数の死者が出る可能性があるのです」などと述べる例もあるので、その根拠に興味を持ち、今年の1年生とのセミナーの課題を新型インフルエンザとしました。
私の部局では1年生が科学入門の目的で、2〜3人の学生と5月から7月にかけて週1回のペースでセミナーをします。課題は実験でも論文でも野外調査でも良いのです。

以下は私が最初に学生に出した課題です。参考資料としてトラックバック先の記事のリンク一覧も渡しました。
(1)スペイン風邪の致死率は2%と言われていますが、その根拠は何でしょうか?今の医療レベルならどれくらいの致死率なのでしょうか?

(2)今回の新型インフルエンザの致死率は一時は0.4%と言われましたが、現在はどれくらいと考えられているのでしょうか?また、インフルエンザの致死率ははしかやおたふく風邪などの感染症と比べて高いのでしょうか?

(3)「新型インフルエンザは持病が無い人でも重症化することがあるので注意」というニュースがありますが、季節性インフルエンザではそのような事は無いのでしょうか?

(4)「新型インフルエンザがスペイン風邪のように次の感染シーズンには変異して強毒化する可能性がある」という論調が多いのですが、毒性はどの遺伝子のどのような変異によって決まるのでしょうか?また、変異する確率は季節性インフルエンザより大きいのでしょうか?また、スペイン風邪は2年目に変異していたという証拠はあるのでしょうか?

(5)「感染が拡がることでトリインフルエンザと交雑して強毒化する」という記事も見ましたが、季節性インフルエンザよりトリインフルエンザと交雑する率は高いのでしょうか?
学生も独自にインターネットで情報を集めて自分なりの解釈をして持ってきてくれたので、私はそれに合わせて文献を用意し、科学的な論理性を検証しました。
疑問が残ればまた次の課題として、議論をする・・という作業の繰り返しは結構楽しかったです。

真理は人間の期待や不安とは別のところにあって、正しい観察と分析と論理から導き出されるものにこそ科学的価値がある

・・ということが学生にも少しは伝わったと思います。

上記の課題の答えは少しずつ紹介したいと思いますが、この他にも疑問に感じることについてコメント戴ければ、こちらが勉強した範囲で情報提供をしたいと思います。

ちなみに、変異する確率は季節性インフルエンザも新型インフルエンザも変わりません。
外岡先生のブログ(8/1)に紹介されていた記事ではドイツ人の専門家が「He said current plans were being drawn up on the assumption that a second, much worse wave of infections would come later in the year. But he said there was no indication that this would actually happen.」(第二波として病原性を増したインフルエンザが流行するという仮説が正しいという根拠はない)と発言しているので、同じように考える科学者もいるようです。
http://www.thelocal.de/national/20090801-20969.html

この記事に

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制度変更の一つである「集団感染の監視」(6月下旬の通達)に関しても、現場からは「正直者がバカを見るようなシステム」という批判があります。
http://newinfluenza.blog62.fc2.com/blog-entry-513.html

以前から医師や地域によっては「かわいそうだから」「面倒だから」検査をしない状態で(「オリンピックを招致するから」・・という噂の地域もあり)、感染の可能性を正直に申し出た高校生がバッシングを受けたり、本来の感染防御から乖離した状態になっていました。

これからはクラスターサーベイランスに熱意のある医師にかかった場合だけ感染者として扱われるようです。その場合、検査を受けた人と周囲の人々が登校禁止(出社禁止)になるのでしょうか?
それでは検査室から逃げ出す人もいるのでは?

本来の「国民の健康を守る」という目的のためには、まだ制度的な修正が必要です。

2009/8/2(日) 午後 6:16 [ bloom@花咲く小径 ] 返信する

外岡先生のブログでこの記事が紹介された影響でアクセスが上がっているようです。

まず、
○スペイン風邪の致死率2%説の根拠が乏しいこと、
○スペイン風邪が変異した証拠が無いこと
・・からブログ記事にするつもりですので少々お待ち下さい。

本当は、こういった内容はまっとうなマスコミや他の研究者が早い内に解説してくれると思っていました。
しかしマスコミは思考停止、一部の研究者は騒動に乗じて売名行為に走っている状態が続いていることに驚いています。

理屈に強い理学部でのセミナーの成果を、なるべく分野外の方にも分かるように解説していきたいと思います。

2009/8/17(月) 午後 11:37 [ bloom@花咲く小径 ] 返信する

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外岡先生のブログ経由で来ました。
外岡先生には講演をしていただきました。
聞いた人はなんとなく今の問題点をわかってもらえたようでした。
過去の話(スペイン、鳥)のインパクトが強すぎて、本来は一般人より専門的であるべき医療従事者も、不安を抱えていて(患者と接する可能性があるため)、なかなか解消しきれないようです。
専門家の説明の仕方も良くないのかもしれません。
理系の学生へのセミナーの経過が、医療従事者への教育研修の有用なツールになると思います。
今後も情報発信をお願いします。
とおりすがりの医療従事者でした。 削除

2009/8/18(火) 午前 9:56 [ oldDr ] 返信する

初めまして、同じく外岡先生のサイトからたどりつきました。インドネシアに住んでいる一応看護師資格を持っている主婦です、鳥インフルの最多死亡国に住んでいるということで、一般の人よりインフルには興味をもっています。現在バリ島で鳥の鳥インフルが流行しているという今朝のこちらでの新聞の記事をみて、豚インフルとの交わりが又気になってきました。これからも時々訪問させて下さい。

2009/8/18(火) 午前 11:33 凛さ 返信する

oldDr さん、外岡先生はかなりご無理を重ねているようなので心配ですが、日本で専門知識と責任感と勇気を持って発言されている方は本当に少ないので、末永く活動していただきたいと願っています。

>過去の話(スペイン、鳥)のインパクトが強すぎて、
>専門家の説明の仕方も良くない

研究者の一部が功名心に駆られて論文を出していることを多くの人は知らないんですよね。

今日の外岡先生の記事にもあるように、スペイン風邪の遺伝子を初めて同定したことでインフルエンザ研究の大御所となり、「変異した第二波説」を主張し続けていた Taubenberger が今月になって「変異は無かった」という論文を出したそうです。
これまでのマスコミ報道は基本的に彼の仮説に乗っていたので、研究者の私にはスキャンダラスな”事件”です。(続く)

2009/8/18(火) 午後 6:55 [ bloom@花咲く小径 ] 返信する

外岡先生の8月18日の記事は以下のサイトを参考に書かれています。
http://www.nursingtimes.net/whats-new-in-nursing/behind-the-headlines-archive/will-there-be-a-second-swine-flu-wave-after-all/5005272.article

Taubenberger は今までさんざん恐怖を煽って研究費を獲得していたものの、最近の過熱する報道に自分で怖くなったのでしょうか。
以前より「変異したウイルスサンプルが見つかっていない」ことを問題視する研究者もいたのですが、あまり話題に上りませんでした。

この問題も6月にはゼミで明らかになっていたので、どうしてこのような通説が流布されたのかも研究業界の事情と絡めながら記事にしたいと考えています。

2009/8/18(火) 午後 7:03 [ bloom@花咲く小径 ] 返信する

kam​**a​ndo​ さん、初めまして。私は以前からインドネシアに行きたいと思っていたので、ブログを楽しく覗き見させて戴きました。

インフルエンザへの対策は国ごとの事情によって異なってくると思います。トリインフルエンザのリスクが高いインドネシアでは特に体制作りが必要かと思います。そのためにも科学的に信用できる情報も必要なんですよね。

変異する割合は季節性も豚も同じですが、患者が多くなるほど変異も蓄積するので「自分の身を守りたければ医療途上国を支援するように」と主張する意見もあります。
国どうしが助け合って、少しでも犠牲者を減らしたいですね。

2009/8/18(火) 午後 7:17 [ bloom@花咲く小径 ] 返信する

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bloomさん
ありがとうございました。
研究者の裏事情は、研究費なども絡んで大変なようですね。
公衆衛生に関することは、事実を的確に示してほしいと思います。
これからも楽しみに読ませていただきます。 削除

2009/8/18(火) 午後 8:37 [ OldDr ] 返信する

OldDr さん、今日は一気にアクセスが1000を越えて驚いています。
その割にコメントは少なめなので記事が分かりにくかったかな?と心配する気持ちもありますが、疑問に感じたことはここでも新記事でも質問して戴けると助かります。

2009/8/18(火) 午後 11:59 [ bloom@花咲く小径 ] 返信する

今晩は、私の稚拙なブログ覗いて頂き恐縮です、今日の日本のニュースでインフルによる死亡の方より、沖縄の3人の子ども達の重症化のニュースの方が気になります。外岡先生もお疲れのようです。
これから厭な事態にならなければよいがと祈るばかりです。
bloomさんのような方がもっともっと出現した頂ければ.....
これから益々頑張って下さい
e(^。^)g_ファイト! しぐれ

2009/8/19(水) 午後 8:45 凛さ 返信する

しぐれさん(kam​**a​ndo​ さん)、通説を斬る前に基礎知識を共有する必要があると考えてトラックバック先に新しい記事を立てましたが、看護師さんには読みやすかったでしょうか?

重症化している方のことは自分の親だったら、子供だったら・・と思うと、本当に心配です。
変な水際対策やつまらない感染者叩きなんかしている場合じゃないという話は以前から出ていたので、今からでも改善出来る点はして欲しいし、国民としても協力したいと思います。


外岡先生は本当に良く頑張っていると思います。反面、今回の騒動を通じて自己顕示欲や功名心に駆られることなく、使命感を持って行動する研究者がそう多くないことを知って失望する気持ちもあります。

このシリーズ記事が、外岡先生の記事を読む上でも参考になると嬉しいです。

2009/8/20(木) 午前 2:05 [ bloom@花咲く小径 ] 返信する

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はじめまして、Dr.びんといいます。私も外岡先生経由でやってきました。
管理人さんの行っていらっしゃること、「問いを立てて、論理的に説明していく」姿勢に非常に共感を覚えます。私も内科医として仕事をさせていただいておりますが、基本的に非論理的なことはおこらない。非論理的に見えることは、事実の誤認に基づいていることと考えておりますので。
新型インフルエンザについても、医学系の専門家だけではなく、管理人さんのような自然科学でお仕事をされている方を含めた学際的な論考が必要と考えます。そこで、様々な未来の予測とその起こる可能性を確率として判断する必要があるのではないでしょうか。とはいえ、現況といえば、行政サイドが現在までに起こっていることすらしっかりと分析できていないようですから、非常に残念ですけれど。
今後の記事をとても楽しみにしております。

2009/8/20(木) 午前 11:48 [ kud*h*osh*yuki ] 返信する

Dr.びんさん、初めまして。

>非論理的に見えることは、事実の誤認に基づいている

そうなんですよ。生物系の知識が無くても論理的に考えたらおかしいと思うことってあるじゃないですか。

水際対策も今までインフルエンザに感染した経験のある人なら潜伏期間があることは実感していますよね。
「高齢者はスペイン風邪の抗体を持っているから豚インフルエンザに感染しにくい」という話も自分が一生に何度もインフルエンザに感染していたり、「去年から少し型が変わっているから予防接種は効かないよ」と医師から言われることを思い出すとどうかなぁ・・?と思う訳です。

でも水際対策が繰り返し報道されていた時は「ここまで言うからには少しは効果があるのかな?」とちらりと思ってしまったんですけどね・・

>行政サイドが現在までに起こっていることすらしっかりと分析できていないようですから

誰がインフルエンザ対策の責任者なのか、私には未だに良く分かりません。少なくとも国立感染症研究所の方々は「我々は研究はしますけど方針は立てていませんよ」という態度だし、国に意見をする立場の専門家がどんな協議をしてい

2009/8/20(木) 午後 1:27 [ bloom@花咲く小径 ] 返信する

外岡先生のサイトではこの記事の URL が紹介されていますが、シリーズ記事は以下のトラックバック先に続いています。

皆様の情報と知恵を戴けると有り難いです。

20日のコメントが途中で切れていますが、「専門家がどんな協議をしているのかも見えません」と書き込んでいました。

2009/8/22(土) 午後 6:05 [ bloom@花咲く小径 ] 返信する

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外岡先生の情報収集力や解析力は群を抜いています。しかしながら、残念なことに、人脈が・・・。
関ヶ原の合戦で、石田光成が徳川家康に負けてしまったのも、人脈にかけていたからでしょう。
外岡先生の論説を、日本の中枢へ押し上げられるようなパイプがあったら、新型インフルエンザの問題が起こる前から、周到に準備がなされこのような混乱を招くことはなかったでしょう。
国民一人一人に混乱を起こさせることなく、適度の緊張感を持たせるための動機づけの材料を、行政は提供するべきなのですが、遅すぎましたね。ここまで来ると、自分の身は自分で守りつつ、身近に易感染者がいることを意識しながら、「移らない・移さない」を目標に感染予防対策を進めていくしかありません。もちろん、早期発見早期治療を前提としつつ。(これは、季節性インフルエンザでも同じこと。) 削除

2009/8/28(金) 午前 8:39 [ K ] 返信する

Kさん、初めまして。

>残念なことに、人脈が・・・。

私が外岡先生同様にブログへのリンクを入れている青木先生の方がチーム力は強そうな印象も受けますが、青木先生でさえ政府に意見を言える立場では無いように見えます。

もしかするとどちらの先生もそういう立場を望んでいないのかも知れません。
・・というのは、政府の諮問委員をつとめているとマスコミに報道されている研究者の中には「水際対策は効果があった」とか「学校閉鎖もしょうがない」などと政府ヨイショの発言をしている人もいるし、少なくとも「水際対策なんてやめましょうよ」と批判しているのを見たことが無いのです。
だから、外岡先生や青木先生が政府に近い立場になるためには、信念を曲げる必要があるんじゃないでしょうか。

2009/8/28(金) 午後 0:08 [ bloom@花咲く小径 ] 返信する

>国民一人一人に混乱を起こさせることなく、適度の緊張感を持たせるための動機づけの材料を、行政は提供するべきなのですが、遅すぎましたね。

教育水準が高い国でここまで混乱が起きたのは日本・台湾・韓国くらいですね。これには島国&地縁社会(空気読め・・みたいな感覚が残る)という要因があるかも知れません。

でも私は遅すぎると思っていません。
私が今回の騒動でインフルエンザについて勉強したように、知識が増えた人もいるでしょうし(偏った知識でないことを願いますが)、「社会全体で感染症に取り組む」意味について考える人も多くなったと思います。

一番成長して欲しいのはマスコミ関係者なんですが、彼らの科学音痴はどうにかならないものでしょうか・・

2009/8/28(金) 午後 0:11 [ bloom@花咲く小径 ] 返信する

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