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「オサマ・ビンラディン
A War against the west」
エレーン・ランドー著 松本利秋監訳
大野悟訳
ここ最近、参院選の情報収集を尻目にイスラームについての
書籍を読み漁っていた。
その中で、少し目に付いたのがこの本だ。
史上最悪のテロリスト、オサマ・ビンラディンの経歴を
客観的(と思われる)に羅列する内容である。
文中では、彼を肯定も否定もしていないが、そこから受ける
彼に対する印象は「英雄」そのままであった。
彼は望めば、中東でも有数の富豪として何ら不自由のない人生を
送る事ができた。
しかし彼は、エアコンの効いた豪邸での暮らしを捨て、
アフガンの洞窟でいつ果てるとも知れない過酷な生活を選んだ。
ビンラディンは、ただひたすらに「純粋」で「高潔」である
ように思えてくる。
彼は「英雄」に必要な条件をすべて兼ね備えている。
純粋で強固な揺らぐ事のない「意志」
他人を引きつけて止まない「カリスマ性」
ありとあらゆる専門知識・技術・金融経済に精通する「能力」
自ら、そして他者の理想を実現する為の「財産」
ビンラディンに足りないモノを挙げろ、と言われると
正直、困ってしまう程だ。
普通、歴史的に英雄などと言われる人物は大抵、カリスマでは
あっても、実務能力に欠けたり貧乏だったりするものだが、
彼はその枠に当てはまらない。
実際、ビンラディンは建設・石油エネルギー・貿易・銀行など、
あらゆる事業を手がけ、そのほとんどで成功を収めている。
そして、その利益を一切、私せずに惜しげもなくジハード(聖戦)へと
注ぎ込んできた。
若かりし頃は、ひとしきりの豪遊をしたそうだが、以降、彼の
生活は質素そのものだったという。
そして、ビンラディンは今も超大国アメリカとその取り巻き国家に
対して、意志の力で戦いを挑み続けている。
まるで、物語から飛び出してきた主人公のような人物、という印象だ。
良い例えでないが、この書籍で紹介されるビンラディンは
まるで、「機動戦士ガンダム」に登場するシャア・アズナブルのようだ。
僕自身、テロリストを容認する立場でないが、この稀有なる人物の
足跡を追うにつれ、英雄と凶悪テロ犯罪者の境界線が見えなくなる
のを感じてしまう。
イラク戦争後に、ドイツ在住のアラブ人夫婦が授かった息子に
「オサマ」と名づけようとして、役所から却下された。
日本のマスコミは「何を考えているんだ!?この夫婦は」と
言った論調で、冗談混じりに非難していたのを記憶している。
少なくとも、狭い島国の中の事にしか、思考を跳躍させられない日本人に、
このアラブ人夫婦を非難する資格はない。
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