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アレキサンダー・フリードマン :UBS・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者 外交問題評議会(米国)のメンバーでもある

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http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38157620.html


      ◆ CICの米国人アドバイザー (※ 第4章から)

CICは現在、米国人の4人のアドバイザーを持っている。4人の主な経歴と職位は次の通りである。

ジョン・L・ソーントン/ ゴールドマン・サックス・グループ前社長、ブルッキングス研究所の理事会会長、HSBC北アメリカのNonexecutive chairman、清華大学教授

ジョン・J・マック/ モルガン・スタンレー名誉会長、元最高経営責任者(CEO)

ジェームズ・D・ウォルフェンソン/ 元世界銀行総裁(第9代)、シティグループ国際諮問委員会の元委員長

メリット・E・ジェイノー/ ナスダック会長、WTO上級委員会の元委員、コロンビア大学教授

(要約終了)
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【※注1】:中国の政府系ファンドの戦略性について

「政府系ファンドの戦略的方向性ははっきりしない」という箇所と同様な記述は導入部や結論部などに何回か見られた。「中国政府は、まだ政府系ファンドの投資のためのはっきりと見える戦略を持っていない」とか「戦略的方向性ははっきりしないままである」とか「戦略は調整されたものとは程遠い」などの記述が見られる。

私はこれらの表現は、この問題に対する議会、特に野党である共和党の攻勢を意識した表現技法であると思う。具体的な戦略的事象が目に見えた形で現れていなくても、いつでも戦略的行動を起動させうる潜在的な環境を作っておくことも基本的な戦略だからである。このような表現技法は緩衝材の役目をする。しかしそれとは裏腹にこの報告書は読み手に、(状況次第では)中国の政府系ファンドが今後米国へ仕掛けてくるであろう戦略をあれこれと考えさせるだろう。その筆頭に挙げられるのが、米国債をめぐる状況だ。

                        ◆

7月の米中戦略・経済対話では米中間での投資協定についても話し合われたが、この米中対話に出席していた中国の財務相の楼継偉は前述したように、このCICの前会長であった。6月にバーナンキ議長が早くて9月からの出口戦略の実施を示唆したあと、膨大な米国債を握っている中国が、この7月の経済対話で米国債についての何らかの重要な協議を行わなかったはずはない。


     ■ 中国の金融危機に米国は資金注入するか

これらの事から私は、中国が現在推し進めている経済改革について、米国が何らかの経済支援を今後行うことになるだろうという漠然とした予想は持っていた。しかし、8月下旬に「プロジェクト・シンディケイト」に掲載された、UBS・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者、アレキサンダー・フリードマン氏の記事には驚かされてしまった。同氏は外交問題評議会(米国)のメンバーでもある。

(※ 「プロジェクト・シンディケイト」は、世界の一流のエコノミストが多く寄稿することで知られる著名サイトである。学者・研究者の寄稿が多く、投資に関する短期的な金融分析などは扱わない。経済・金融の動きの基礎を成す方向性や政策論を考えるのには非常に有効だ。)

China’s American Bailout? (8月22日 Project Syndicate)
http://www.project-syndicate.org/commentary/why-the-fed-may-bail-out-china-s-financial-system-by-alexander-friedman

USBのフリードマン氏は、アメリカと中国の語のスペルを組み合わせ、その<共生関係を表した造語 Chimerica>を使って米中関係を説明する。これは米国の経済学者ニール・ファーガソン氏の造語だ。私はファーガソンの著作は読んでいないが、以前自身のブログで同氏の記事をとりあげたことがある。

ウィキペディアによれば、2010年3月にファーガソン氏は、「チャイメリカ」(Chimerica)はまもなく解体するだろうと予測していたそうだ(※注2)。フリードマン氏はギリシャ神話の怪獣キメラ(chimera)と重ね合わせ、ファーガソン氏らによるチャイメリカ(Chimerica)崩壊の予測が、現在現実化しつつあるように見えると述べている。フリードマン氏はこの比喩を使った説明で現在の悲観的状態を述べ、結論部分ではアメリカによる中国への資金注入の必要を述べているのである。

怪獣キメラは頭がライオン、体がヤギ、尾は大蛇だそうだが、「チャイメリカ」は<米国債でつながる巨大な双頭竜>といったところだろう。
この部分を除いたフリードマン氏の記事の、全体的な抄訳を以下に記した。

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(抄訳開始)

今まで、米国債の大量売却は中国の利益にならないと考えられてきた。それにより人民元のドルに対する為替レートは跳ね上がり、中国の準備高の国内での価値は減少し、輸出部門の競争力は低下する。<昨年の>アメリカ国防総省の、中国による米国債保有についての報告書では次のように結論づけられている。

「中国が米国債を威圧的手段として使った場合の効果は、限定的なものになってきており、おそらくそのような手段はアメリカよりも中国により損害を及ぼすだろう」

しかし、長年積み上げてきた外貨準備の長期的効果が、国内経済へ確実に現れてきている<この今>(※注3)、外貨準備を大量に売ることは中国の利益となる状況になっている(訳注:“selling off foreign-exchange reserves”)。

現在の中国でのシャドーバンキング、不良債権問題など、金融改革での中国指導部の努力はやがて金融危機の引き金を引いてしまうことが考えられる。そのような危機では、政府は銀行システムへ大規模な資本注入を始めることを要求されるだろう。
最も起こりそうに思える銀行部門への資本注入の手段は、人民元建ての国債を注入することだろう。細部にわたる議論もあるが、カルメン・ラインハートとケネス・ロゴフの結論である「高い債務比率(対GDP比)は経済成長を阻害する」という考えは広く一般に認められている。それゆえ対GDP債務比率を100%へ増やすことは中国にとって長期的利益とはならないだろうから、債務比率を中国が増やすようなことは起こりそうもない。

たとえ指導部にそのような資本注入の戦略を進めるための、必要に迫られた財政的な自由度があったとしても、中国の指導部はそのような戦略を採らないだろう。なぜならインフレのリスクが社会的騒乱を起こす可能性があるからだ。インフレ・リスクにはたぶん、どんなほかの経済的変数よりも社会的騒乱を起こす可能性がある。

このように考えると中国の金融危機が起こった場合、中国は十中八九、大量の米国債の売却を始めるしかほかはなくなる。幸いにも、そのような経済的変動から中国が受けるネガティブな影響は、以前に考えられていたよりも、おそらくずっと少なくて済むだろう。

確かに中国の保有する米国債の銀行部門への注入とそれによる(ドルから)人民元への交換は、中国の通貨をやはり強くするだろう。しかし人民元の上昇はおおかた資金流出によって相殺されるだろう。より緩和された資金規制によって預金者が金融危機から逃れることを可能にし、資産流出が起こるからだ。
さらに、たとえ人民元が短期間においてより強くなったとしても、中国はもはや、かつてのように輸出競争力を維持することに依存してはいない。現在、組立と再加工を除けば、中国のGDPに寄与する輸出の割合は5%未満である(訳注:中国経済がかつてと違い、輸出依存脱却の方向へ動いているということ)。

このような背景状況に対してFRBは「テイパリング」(緩和縮小)のみに焦点を当てるのではなく、起こりうる米国債の大量売却に備えなければいけない。FRBが資金を供給する中国の銀行システムへの資本注入は、資金の借入コストを跳ね上げ、米国のGDP成長を妨げ、これまでの(FRBの)金融政策の効果を無効にしてしまうことだろう。このことを考えると、FRBは中国の金融危機が起こった場合、量的緩和策を継続することがいつでもできるように準備をしておくべきだ。

アメリカ経済を金融危機の結末から救い出すために費やされたこの数年の後、FRBはついに中国の銀行も救済することを余儀なくされる可能性がある。このことは根本的に米中関係の見直しを迫っている。そして願わくば、このことで米中関係を再び調和させてほしい。

(抄訳終了)
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【※注2】Chimerica
http://en.wikipedia.org/wiki/Chimerica

【※注3】中国経済は7月から経済指標で好転を表す数字が出始め、8月の統計では「復調を示す指標が目立っており」(日経 9月10日)、前年同月比で高い伸びを示している。これらの統計は中国国家統計局や中国税関総署などのものが多いが、信頼性が高いとされる英金融大手HSBCの製造業指数(PMI)でも、好不況の節目となる50を2カ月連続で上回った数字(わずかながらではあるが)が出ている。

中国の景況感、改善続く 製造業指数9月も50超え (9月23日 日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2300E_T20C13A9000000/?dg=1

「中国の8月の工業生産高、前年同月比10.4%増・DJ 市場予想は9.9%増」(9月10日 日経)
「中国の8月の小売売上高、前年同月比13.4%増・DJ」(9月10日 日経)  
「中国、8月の輸出は7.2%増 2カ月連続プラス」(9月8日 日経)  


      ■ 周総裁の発言と中国の構造改革に対する強気派の見方

UBS・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者、フリードマン氏のこの記事を読んで読み取れることは、フリードマン氏は中国政府が行う金融改革に対しては「やがて金融危機の引き金を引いてしまう」と見ているが、今後の中国経済については楽観的な見方をしていることである。

「中国はもはや、かつてのように輸出競争力を維持することに依存してはいない」 「そのような経済的変動から中国が受けるネガティブな影響は、以前に考えられていたよりも、おそらくずっと少なくて済むだろう」 「しかし、長年積み上げてきた外貨準備の長期的効果が、国内経済へ確実に現れてきている<この今>、外貨準備を大量に売ることは中国の利益となる状況になっている」


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