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ムハンマド副皇太子とプーチン:“Goodbye Washington, hello Moscow? Saudi Arabia finds friendly face in Putin.” The Christian Science Monitor, July 3, 2015


6月の第3週、サウジの副皇太子で国防相のムハンマド・ビン・サルマン(国王の息子)が、プーチンの招きでロシアのサンクト・ペテルブルクに渡りました。

この二人の会談後に明らかにされたロシア・サウジ間での協力合意の協定は、6項目から成ります。それらは、石油市場での協力、平和的核利用での協力、核技術の共有、ロシア製の高性能兵器の取引、宇宙分野での協力、インフラ開発です。

Deputy Crown Prince and Minister of Defense Mohammed bin Salman visited St. Petersburg this week, and signed several agreements with the Russians concerning oil cooperation, space cooperation, peaceful nuclear energy cooperation, and nuclear technology sharing.

(Saudi's star prince keeps rising, visits Putin in St. Petersburg 6/19-2015 ブルッキングス研究所)
http://www.brookings.edu/blogs/markaz/posts/2015/06/19-saudi-arabia-russia-mohammad-bin-salman-putin

They also are reported to have inked contracts on space cooperation, infrastructure development, and a deal on high-end Russian weaponry.

(Goodbye Washington, hello Moscow? Saudi Arabia finds friendly face in Putin. 7/03-2015 クリスチャン・サイエンス・モニター)
http://www.csmonitor.com/World/Europe/2015/0703/Goodbye-Washington-hello-Moscow-Saudi-Arabia-finds-friendly-face-in-Putin

この2つの記事のうち前者の執筆者である、ブルッキングス研究所のブールス・リーデル氏(サウジが専門)によれば、これらの協定に関する詳細はほとんど明らかにされていないといいます。
リーデル氏は、プーチンとムハンマド副皇太子が石油問題について話し合い、石油市場の安定性を実現するために合意したことを伝えています。

後者の記事の国際紙『クリスチャン・サイエンス・モニター』の記事を読むと、当然の事ながらロシア・サウジ間での協力協定(大接近の印象を受ける)に関して、とりわけ<石油協力>と平和的核利用での協力・核技術の共有という2点に専門家の関心が集まっているようです。

同記事の冒頭では、「世界の最も大きな産油国の2大国であるロシアとサウジが共同してとる行動は、世界の石油市場を支配する可能性を持つ」と述べています。

同記事では専門記者のフレッド・ウェアー記者が、プーチンとムハンマド副皇太子の会談と協定に対して、ロシア・サウジ間の協力関係が今後大きく進むという見方とその反対の見方に専門家の見方が分かれていることを伝えています。


    ■ ムハンマド副皇太子がサウジの中心的役割


リーデル氏の6月21日の続報記事によれば、ムハンマド副皇太子はサルマン国王の息子ですが、今では高齢の国王(79歳)の代わりに国王個人の使者ともいえる<注目される>存在になっているそうです。

高齢の国王の使者として、また国防相として、そして石油問題にも従事するムハンマド副皇太子は、今後サウジの国内外での政治の中核的な重要な役割を演じていくことになることをリーデル氏は指摘しています。これはサウジが専門のワシントン中東政策研究所のサイモン・ヘンダーソン氏も同様の見解です。

リーデル氏はこうも言っています。

「このロシアへの訪問はムハンマド副皇太子が、サウジの親米的な国家安全保障チームのほかのメンバーたちと比べて、自らの役割をより独立したもの(独自のもの)として位置づけていることも意味している」

Saudi deputy crown prince seeks Russia deals (6/21-2015 アル・モニター)
http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2015/06/saudi-crown-prince-russia-deals.html


    ■ サウジの核計画と軍事情勢


「サウジの王室は、米国のオバマ大統領とその中東政策に幻滅を感じている」(リーデル氏)

ムハンマド副皇太子は当然のことながらイエメン情勢でのロシアの協力を求めたはずで、イラン、シリア問題も議題にあがったはずです。リーデル氏は、「サウジにとって、シリア問題はイエメン問題より優先度が低く譲歩できるが、もしロシアが、行き詰まっているイエメン戦争に参加しても、サウジには成功をもたらさないだろう」と述べています。

またリーデル氏は、「核技術での合意(協定)は、今後、原子炉16基を建設するというサウジの非常に野心的な計画と関係している」と言っています。

The nuclear technology agreement is linked to very ambitious Saudi plans to build 16 nuclear reactors in the future.

7月6日現在、イラン核協議はかなり難航しているようですが、ブルッキングス研究所の上席研究員であるケニス・ポラック氏は、3月2日の記事で次のように予想しています。

『もし、イランが6500基の第一世代の遠心分離機の設置と純度3.5%の濃縮ウラン150キロの備蓄量を許されるのならば、サウジもそれとぴったりと合わせて全く同じことをすると決定する』(下記記事より)

イラン核合意後、サウジはイランにどう対抗するか (4/09-2015 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39393969.html

これまでサウジはパキスタンから核兵器の協力を受けるだろうということがよく知られていました。これが一転するかのように、核技術での共有などでロシアからの協力を得ようとサウジが行動を起こしたのは、パキスタンがサウジから中国の方へと重心を移していることが理由です。

サウジはパキスタンに核の梯子をはずされるか(5/14-2015 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39440118.html


    ■ イスカンデール・ミサイル・システム


ロシアとサウジの間ではロシア製の高性能兵器の取引きの協定が交わされたとすでに述べましたが、イタル・タス通信によると、7月3日に、ロシアの国営兵器輸出企業「ロスオボロンエクスポルト」の副社長であるイゴール・セバスチャノフ氏が、「ロシアはサウジに、イスカンデール・ミサイル・システムを供給する用意があり、サウジがこの装備を買いたいのなら、ロシアはそれを供給するだろう」と発言しています。

Russia is ready to supply Iskander tactical missile complexes to Saudi Arabia, Igor Sevastyanov, a deputy director general of Russia’s state weaponry trading corporation Rosoboronexport said on Friday. …"I think if Saudi Arabia wants buying this equipment, Russia will supply it."

Russia ready to export Iskander missile complexes to Saudi Arabia (7/03-2015 イタル・タス通信)
http://tass.ru/en/russia/805823


■■ 参照記事

ロシアの中東におけるオフショア戦略 (5/14-2015 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39451577.html


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