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“Rabbit Hill” by Robert Lawson 「うさぎヶ丘」「うさぎの丘」 ロバート・ローソン 作 ラビット・ヒルにはリトル・ジョージィのウサギ一家以外にもたくさんの小動物が暮らしています。野ネズミやウッドチャック、スカンク、キツネ、シカやリスやアライグマ。彼らの中で動物社会がしっかりとできあがっていて、父さんウサギをリーダーに、お互いに固く団結し、助け合って生きていました。何よりも大事なのは食料なのですが、動物たちはずいぶん以前から丘にある「大きな家」に依存してきたのです。人間たちの育てた菜園の作物や納屋の穀物や種をいただいたり、ごみ箱から残りものをちょうだいしたりといった具合に。 面白いのは動物たちが、畑の作物を(こっそり、かつ堂々と)ちょうだいする権利が当然あると考えていることです。だから「大きな家」の住人が動物想いの親切な家族からケチな住人に変わり、今では空き家になって、いただく作物どころか、ろくな芝生すら生えていない状態になってしまったことに憤慨して、怠け者の人間を責めているのでした。 そんなところへ、「大きな家」に新しい人間が引越してくることになったのです。 いい人たちだろうか、危険な犬や猫はいないだろうか、畑は作るだろうか、ふたのないよいごみ箱を使うだろうか・・・さまざまな疑惑と期待の中で動物たちはずっと人間を観察し続けています。 畑の大きさや、作物の種類は十分満足できるし、動物に対するマナーも完璧だから、きっとこれからはいい暮らしができるぞと、みんながワクワクし始めたころ、リトル・ジョージィが事故にあい、行方不明になってしまうのです。 母さんウサギの嘆き、おじさんウサギの自動車や人間に対する怒りは高まるし、友人たちの心配はどんどん悪い方向へ傾いていき、「大きな家」の庭には得体の知れない巨大なものが登場し、動物たちの不安をかきたてます。住人やねこに対して再び疑惑が頭をもたげ始めて、せっかくの作物の育ち具合にも喜びを感じられなくなります。 動物たちが集まるヨハネ祭の宵が来ました。みんなで最初の作物をいただきに行くことになっている日です。ジョージィがみつからないまま宵を迎えた動物たちの気持ちは重く、足音だけが菜園へと向かいます。 そこで待っていたものは、予想した不気味なものや怖いものではなく、動物たちみんなに十分なさまざまな食料と、噴水と、聖フランシスの像とそれからもちろん元気になった、リトル・ジョージィだったのです。 その後、ラビット・ヒルでは動物は人間の菜園を荒らすことなく、いつもたっぷりの食べ物をもらって、畑を害虫たちから守って暮らしたのでした。 というと実に子ども向きのお話で終わってしまいますが、登場する動物たち一人ずつがとても個性的で、なんともかわいい性格の持ち主なのが楽しいです。一見変わり者のアナルダスおじさんウサギも彼なりの個性で、リトル・ジョージィを心配しているところは「いいやつだな」と思ってしまいますし、さまざまな種類の動物が助け合って暮らしているのは理想のファンタジーです。キツネはネズミを捕ったりしないし、ネズミはもぐらの目になってあげたり・・・。人間を信用するべきか否か、揺れ動く動物たちの心境に、人間の私は思わず微笑んでしまいます。自分の周りの小動物たちも、心の中で「人間」のことをどんなふうに考えているのだろうなどと、想像が広がってしまいました。
この作品は1944年のニューベリーメダルを受賞しています。Lawson自身が手がけたイラストも精巧にして微笑ましく、一読、一見の価値ありです。 |
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