庚申塔探索

神奈川最古は寛永10年塔?

中井町

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中村川水系の支流、椿河原川の水源地の1つに古怒田(こぬた)集落があります。
怒田はわりと各地にある地名で、神奈川にも知る範囲だけで3ヵ所あります。
湿地が由来のようですが、古怒田は山の上。
山の上でも湿地はありえますが、はたして?
とりあえず新編相模国風土記稿によれば古怒田は江戸時代に29戸あった集落です。
天神社 村
稲荷社 村民
山王社 村民

天神社は現在の菅原神社。
山王社がどこなのか判りませんでしたが、とりあえず菅原神社の下に庚申塔。
中井町8
イメージ 1





















































正徳3年11月
「奉造立青面金剛□□」敬白
三面に猿。
笠正面に2鶏と何か。笠右面に日月と何か。笠左面に何かのみ。
170cm

ごくありふれた三猿塔かと思っていましたが、
笠に2鶏や日輪、月輪が付いていて、さらにもう1つ何か。
どう見ても顔で、他には宝珠くらいしか思い当たりませんでした。

正面。2鶏と顔?
イメージ 2















右面。日輪月輪と顔?
イメージ 3
















左面。顔?のみ。
イメージ 4
















裏面には何も無し。
光線の加減で右面が良く判りますが、目鼻口がついているような。
日輪月輪ともう1つの何か、だけなら他に類例があるものの三方にあるのは初めてで、
どうにも判らず、庚申塔を数万基は見ている方に問い合わせた所、
こんなのはここしかない、というお返事でした。
その方も顔に見えるが何かは判らないとのこと。
妙なものがあるもんです。

赤城岩魚さんのブログで顔付が紹介されています。
群馬県桐生市相生町の大善寺。
神奈川と群馬は妙な共通項があって不思議。


中村川沿いは平安末期から鎌倉時代にかけて豪族中村氏が支配していた土地。
中村氏は子孫が今の中井町だけでなく二宮、平塚、小田原あたりにも広がっています。
庚申塔とは関係ありませんが、戦国大名の小早川氏、江戸時代の二宮尊徳なども末裔になるそうです。
中村宗家は戦国の波に飲み込まれてしまったようですが、土地としては早くからそれなりに開けていたようです。

中井町6
イメージ 1遠藤 地蔵堂
元禄7年5月
銘文風化
三猿

正直、紀年銘も読めません。中井町郷土資料館には庚申塔の拓本が数点あるそうです。
もしかするとこれは拓本を採られているかもしれません。


遠藤地蔵堂は新編相模国風土記稿では村持になっていますが、五輪塔数基、墓石が20基ほどあることと、地蔵堂から坂を上ると弘法大師堂があることを合わせると真言宗系の寺院があったか、あるいは当山派修験が堂守をしていたような気がします。

ただ、すぐ近くの小字には中村氏の時代に開基された天台寺院が江戸時代も残っていたので、ちと微妙です。

江戸時代に天台と真言が同じ村に並立できていたのか知識がなくて判りませんが、修験は幕府によって天台の本山派と真言の当山派という対立構造に統制されていました。












その天台宗寺院は安寿寺。
中村氏の菩提寺で現在の五所宮八幡神社の別当も努めていましたが、
現在は廃寺となっています。
五所宮八幡神社は中村川沿い集落の総鎮守で庚申塔があります。

中井7
イメージ 2











































五所宮八幡神社
寛文8年3月
「種字5個? 奉造立庚申(庚申のみ横書き)供養」
「相州足柄上郡御所宮」
三方に猿(現状、左右は埋まっている)。
他は読み取れず。

常夜灯の竿と思われます。

最初に書いた豪族ネタはここにつながります。
中村氏の居館跡は複数の比定地があります。
居館が一ヵ所に固定していたのか?という疑問もありますが、
その1つが八幡神社あたりの小字「荘司屋敷」だそうです。
五所宮の名前の由来には諸説あり、全国にある八幡宮の五番目に位置する、というものもあるようですが、庚申塔にある「御所宮」は小字には残っていないので、神社のことで、中村氏居館の御所との関係だろうと想像しています。

この辺りには「矢場」、「馬場」、「屋敷下」、「城之内」などの小字があり、
床城という山もあるのですが、現状はただの自然地形だったので、
詰めの城で、しかも戦国期以前のものかもしれません。
中村氏宗家は江戸時代の時点で絶えていたか規模縮小していた印象です。

※庚申塔がボロで銘文も読み取れないので郷土史とからめて楽しんでます(笑)。
中井町は下手をすると神奈川県民も名前は知っていても場所がどこだか知らない
自治体だったりします(住民の方御免なさい)ので、地誌的なお勉強も兼ねて色々と。
葛川水系を下流へ進み、中井町との境界付近に下井ノ口と五分一(ごぶいち)集落。
下井ノ口に簑笠神社の別当もやっていた三光院があった。
簑笠神社の縁起にある本山派修験とは三光院のことで、明治の修験禁止と神仏分離のダブルパンチで廃寺になったのかもしれません。
三光院は簑笠神社のほか、八幡宮、山王社、稲荷社、弁天社、天神社の
別当をつとめており、葛川水系の庚申信仰を担っていたと思われます。

三光院が別当をしていた八幡宮に庚申塔。
中井町4
イメージ 1紀年銘、銘文調べられず。
三面に猿。

文字は付いているのですが、タワシで掃苔しようと表面に触れたところ、フワフワと動きました。
表面が剥離していて崩れる寸前。
写真でも竿が妙に歪んで見えますが、これは竿本体からすでに1cmくらい浮いてしまっているからです。
他所者の素人が興味本位で触って壊しては申し訳ないので、自粛しました。


なお、30基あるという内に含まれるのかどうか不明ながら、八幡宮の近くにある墓地の一角にボロボロの板碑があり、下部が三猿の痕跡に見えなくもありませんでした。
ボロ過ぎるので写真では判別不可能です。











八幡宮から葛川を渡り、少し高くなっている集落が五分一。
五分一(ごぶいち)は珍しい地名ですが、全国各地にあります。
地名の由来を調べたブログを参考に大別すると、通行税によるもの、荘園制度の名残、
この2説のどちらかになるようです。
中井町の五分一は、江戸時代まで現在の平塚市土屋の飛び地だったようで、地理的にはポツンと離れた字になります。
「分」の文字が入る土地は豪族が子供達に土地を分割する際に付いていることがある一方、「五」などの数字は荘園制度の時代の名残という説もあり、よく判っていないようです。いずれにしても、新編相模国風土記稿によれば、土屋村の寺院が管理する神社と並び、三光院の名前も出ています。

五分一農村集落センターに庚申塔。
中井町5
イメージ 2
































































寛□□寅?年 十月□□□
「ア 奉造立庚申□□」「二世安楽也」
三面に猿

笠の作りは違いますが、竿に卒塔婆型の彫りを付けている点や、台石の反花などからすると、簑笠神社の寛文塔と同時代かもしれません。
寛文年間で寅年は寛文2年。
中井町最古の庚申塔は寛文2年なのですが、はたしてこれなのかどうか。

葛川水系で見つけられている庚申塔は5基。
そのうち4基が笠付の三猿塔。
この似たパターンは1つの寺院(三光院)が庚申信仰を広めていたからか?と想像していますが、確証はありません。
中井町には30基ほどの庚申塔があるそうです。
まだ半分も見つけられていませんので、中途半端になりますが、
だいぶ痛みが進んでいるので写真だけでもUPしておきます。

中井町は中村と井ノ口村が合体してできた町。
町は2本の水系があり、間に尾根が通っています。
その1つの水系が葛川(くずかわ)。
井ノ口村は葛川の上流部になる水源地という意味のようです。

中井町1
イメージ 1イメージ 2
























井ノ口 砂口会館(阿弥陀堂)
紀年銘、銘文不明
三面に猿の痕跡。

葛川水系の最上流部が砂口。
ほとんど秦野市ですが、ゆるやかな南斜面にある集落。
南へ下ると現在も井ノ口の中心である宮集落へ出ました。

宮集落には簑笠神社。
葛川水系にある井ノ口村、五分一村の鎮守。
神社入口付近にある自治会に十王像が保管されているそうです。
神社の縁起によると別当をしていたのは本山派修験とあり、
新編相模国風土紀稿では三光院(天台宗・廃寺)が別当とありますので、
その出張所的なお堂のようなものがあったのでしょう。
自治会のすぐ近くにも砂口と同系の庚申塔。

中井町2
イメージ 3








































































資料では寛文10年。目視では判読不能。
銘文読めず。
相州□□井之口村 廿四□
三面に猿

砂口の風化塔と笠の形状はほぼ同じですが、台石が反花で全体がしっかりしている作りなので、砂口は寛文10より若干新しい年代でしょう。

こちらには青面金剛塔もあります。

中井町3
イメージ 4





































































紀年銘無し。
奉造立庚申供養 施主 宮之講中
相州足柄上郡井之口村 世話人 右宮待□

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