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☆欲求を伝え、元気を取り戻す機会
子どもの大泣きは、育児ストレスの原因に
なっています。
泣く行為の意味や親のかかわり方について
「癒しの子育てネットワーク」代表で『子どもの
「泣く理由」がわかる本』(リヨン社)の著者で
ある阿部秀雄さんに聞きました。
☆共感の言葉掛けを
――子どもが「泣く理由」を教えてください。
まず乳児期の場合を考えてみましょう。
「おなかがすいた」
「おむつがぬれた」
「痛い思いをした」
――こうした生理的な欲求を伝えるために泣くことは
よくご存じですよね。
そのほかに、心理的な欲求で泣くこともあります。
例えば、両親の夫婦ゲンカが慢性的に続いていて
お母さんが切ない思いをしているとき
「心配でたまらないよ」と泣くことがあります。
成長すると、こうした欲求は言葉で伝えることが
できるため、泣きは減っていきます。
――言葉が話せるようになっても、大泣きを頻繁に
する子はいますね。
心理的な欲求を言葉で伝えるというのは、大人でも
難しいことですからね。
でも、もう一つ、大切な理由があります。
泣く行為には欲求を伝える以外に、感情ストレスを解放する
という面もあるのです。
つらい、悔しい、怖いなどの感情ストレスを吐き出し
親に受け止めてもらい、不快感をぬぐい去ってもらおうと
するわけです。
大きくなればなるほど、感情ストレスを解き放つための
「泣き」が主になります。
ですから、頭ごなしに「泣くな」と注意するのではなく
泣く理由に注目し、感情に共感してあげましょう。
「つらかったね」
「痛かったね」
「怖かったね」
「悲しかったね」
と言葉を掛けて、気持ちに寄り添ってあげたらいいのです。
☆手を添えて導く
――駄々をこねながら泣く場合は、どうしたらよいでしょうか。
駄々をこねたくなる気持ちに共感しながらも
立派なお兄さん、お姉さんとして振る舞えるように
上手に導いていったらいいのです。
子どもにも向上心があるので、そこにうまくつなげて
あげるといいでしょう。
言葉で、「こうしようね」ということを伝えるだけでなく
必要なときには、手をしっかり添えた上で導いてあげる
ことも、時には必要です。
すると、案外、すんなりと、「うん、分かった」と
納得してくれることがあります。
逆に、手を振り切ろうとして泣き続けることも
ありますが、そのようなときは「嫌なんだね、ヨシヨシ
……でも、こうしようね」と、子どもの気持ちを受け
止めながら、親の言い分を受け取ってもらえばいいのです。
泣いているからといって、子どもの言いなりになる必要
はありません。
――体に触れながら親の言い分を伝えることを
心掛けるといいのですね。
子どもとの体の触れ合いを通して、気持ちの交流が
できます。
スキンシップは愛情表現にだけ使うものではありません。
楽しく遊ぶときも、つらい思いを慰めるときも
聞き分けを誘うときも、聞き分けてくれたことを喜ぶ
ときも、スキンシップが役に立ちます。
――泣くことは悪いことではないのですね。
そうです。
「泣いていい」と考えるようになっただけで
ずいぶん子育ては楽になるものです。
泣く子は、親を頼りにして泣いています。
泣くことで欲求を伝え、元気な自分を取り戻します。
「元気に泣いて→受け止められて→さわやかに泣きやむ」
という、泣きだし上手・泣きやみ上手が理想的です。
☆泣き下手は心配
――今は、泣き下手な子が多いのでしょうか。
昔は「泣く子は育つ」「泣く子と地頭には勝てぬ」など
と言って、子どもが泣くことにはおおらかでした。
ところが戦後、大人自身が一人で頑張るしかない
泣いてなどいられないという、競争社会になって
“泣かせない子育て”をするようになりました。
そのため、泣き下手な子が増えました。
普段、泣くのを我慢している分だけ、我慢しきれなく
なって泣きだすと大泣きになりがちです。
感情のマグマを抱え続けてしまうと、大きくなってから
ささいなことでキレて、非行に走りやすくもなります。
――泣き続けられると、つい「いつまで泣いているの!」
と注意してしまうこともあります。
わが子の泣き声を聞いて平気な親はいませんが
親自身が泣かせない子育てを受け、心ゆくまで自分の
気持ちを聞いてもらえなかったという「古傷」を抱えて
いることが多いように感じます。
「泣く子は弱い子」「泣く子はわがまま」などと
泣くことを否定的に教えられ、泣きたいときも感情を抑えて
我慢して泣かないように生きてきたのではないでしょうか。
昔から、母親のことを「おふくろ」と言いましたが
大きな袋のような包容力で、子どもの泣き声に耳を
傾けましょう。
「私が泣きたかった分まで泣いておくれ」といった
おおらかな気持ちでかかわってあげればよいのだと思います。
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