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釣舟草 (つりふねそう)
思春期の難しさは、子どもとの会話が減り
親子のコミュニケーションが取りにくくなること
ではないでしょうか。そうした時期を乗り越えてきた
親子の対話の思い出や、親のかかわり方の工夫などを
寄せていただきました。
☆話を最後まで聞く
佐賀県小城市 (高校教諭 61歳)
私は、とにかく子どもの話を最後まで聞くことに
しています。
それがどれほど大事であるか、実感する出来事が
あったからです。
娘は専門学校と大学、どちらに進学するか、長い間迷い
最終的に大学を選択しました。
入学式も無事に終わり、2週間ぐらい過ぎた日の夜中2時ごろ。
眠っている私を起こし、「お母さん、私、後悔している」と
大学を選択したことを悔いる気持ちを話し始めました。
「自分で決めたのに。
高い入学金を払ったのに」と言いたい気持ちを我慢して
「そーね、後悔しているのね」と、聞き続けました。
娘は、なぜ後悔しているか、話し続けます。
相づちが切れると、「お母さん、聞いているの?」と
確かめます。
とうとう朝5時になりました。
「お母さん、仕事だから、少し寝ていい?」
「いいよ。一緒に寝る。お母さん、ありがとう」。
こう言うと、娘も一緒に眠りました。
自分の思いを十分に話すことで、娘は自分で答えを出した
ようでした。
翌日は、何もなかったように、大学に向かいました。
娘は、結局、充実した大学生活を送ることができ
現在4年生として卒業の準備をしています。
私は佐賀教育相談室や学校でカウンセラーをしていますが
お父さん、お母さんに、「とにかく、子どもの話を、最後まで
よく聞きましょう」と、体験を通して強く訴えています。
☆気持ちを落ち着けて言う
大阪府高槻市 (主婦 50歳)
「たとえ、後ろを向いていても、言うべきことは何でも
言ってください。
ただし、気持ちを落ち着けて」。
2歳違いの3人息子をもつ私に、当時の中学校の担任の先生が
言ってくださったことです。
“わが意を得たり!”とばかり、すぐさま実行に移しました。
が、実は「ただし」の後の言葉が鍵だったのです。
こちらがいら立っていたり、「こうするのが当たり前でしょ!
何でできないの!」なんていう、こちらの気持ちが透けて
見えた時には、「ガラガラガッシャーン」と、彼らの心のシャッター
がピッタリと下ろされてしまうのです。
それから何度も失敗を繰り返しながら、息子に話す前に
“私の伝えたいことは何か?
何で、それを言いたいのか?”とまず自問して整理してから
話し掛けるように心掛けました。
ある時、近所で事件が続き、帰宅時間が遅いと心配になる
日々が続きました。
深呼吸し、気持ちを整理してから話し出しましたが
「分かってる」と、にべもない返事で後ろを向いてしま
いました。
それでも、「本当に危ないのよ」と、その背中に向かって
静かに話しました。
すると、その後、しだいに、朝予定を話してくれたり
連絡をくれたりするようになりました。
今では、3人そろって大学生。
でも、「言うべきことは、気持ちを整理してから言う」姿勢は
変わらず堅持しています。
☆喫茶店での“休憩作戦”
東京都足立区 (主婦 42歳)
私自身の、思春期のころの思い出です。
母は、よく「一緒に買い物に行こう」と誘ってくれました。
そして、休憩と称しては、近所の喫茶店に立ち寄りました。
そこなら、兄妹にも聞かれず、言いにくい話や、自分の思って
いることを遠慮なく、素直に言えました。
わが家は3人兄妹ですが、母は、こうして一人一人を連れ出しては
話を聞くことに成功していたようです。
頼み事をしたり、進路を決める時にも、大変役立ちました。
親の意見を参考にしたり、対話を通して、自分の考えがまとまり
押し付けと感じることもなく、物事が良い方向へと進んで行きました。
母の“休憩作戦”は、本当に効果があり、良かったと思います。
☆自分から話すまで待つ
わが家では、高校2年生の息子との会話が減っていると
感じた時、まず自分自身(親)が、心にゆとりを持ち
子どもが自分から話せるまで待つように努力しています。
子どもも、外での大きなストレスの中で生活しているのです
から家ではなるべく、自分のペースで生活できるように応援して
います。
これまでの経験で、心配するあまり、あれこれ無理して話し
掛けても、親の空回りに終わってしまいかねないからです。
ストレスや悩みがあるのは、お互いに当然ですが、目先の
ことだけに振り回されず、豊かな人間性をはぐくんでほしいと
願っています。
先日は、「高校新報」に載っていた「良書10選2008」
の内、何冊かを図書館で借りてきて、何も言わず、机の上に
置いておきました。
すると、その内の『モンテ・クリスト伯』を手に取りました。
時間を見つけては読み始め、読了後は「とても感動した」と
話していました。
そうしたことの繰り返しの中で、少しずつ、コミュニケーション
が取れているように思えます。
☆ありのままを認めて
富山市 (自由業 42歳)
わが家には、高校3年生、中学2年生の女の子と
小学5・2年生の男の子がいます。
4、5年前は長女と、2、3年前は次女と、よく言い合いに
なり、私のほうが思い悩んで、外に飛び出したことさえあり
ました。
長女とは携帯電話や交友関係のこと。
次女とは身の回りのことや生活面。
“もめる”内容は違いましたが、行き着いたところは、
二人とも同じでした。
次女が小学6年生の時、ある日突然こう言うのです。
「私、今、資料室登校しているから……。
でも、お母さんが教室に入れって言っても、私は行かないから!」。
一瞬、戸惑いましたが、「そうなのー。何があったか
教えてくれない?」と、動揺した様子を見せず、娘の言葉を
受け止めました。
数日後の真夜中のこと。
娘は、意を決したように、学校のことを涙を流しながら
話してくれました。
機関銃のように言葉があふれました。
いつも時間に追われてばかりで、この子の話をじっくり聞いて
あげることがなかったと、私は猛反省しました。
次女の話は2時間にも及びましたが、私は聞き続けました。
次女は、夏休みをはさんだ3カ月後、自分で決意をして
教室へ戻りました。
以来、とても会話がスムーズに弾むようになりました。
親であれ子であれ、ありのままを認めて受け入れてあげること
が大事なのだとつくづく実感しています。
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