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☆漆原 智良(児童文学作家)
間接体験の大切さ
感性を育む泉の水を飲む
今回から、「心に良書を 子どもを本好きにするために」
とのテーマで連載を始めます。
執筆は、全国での講演活動などで読書運動・読み聞かせ
運動を推進している児童文学作家の漆原智良氏です。
★良書は時代を乗り超える
今年は『源氏物語』が誕生して一〇〇〇年。
全国各地で、同書の研究会や展示会などが開催
されています。
日本人の生き方の根源を追究した、人間肯定の文学は
時代を乗り超える普遍性があるのです。
私たちの心の底でもきっと、幼いころに読んだ
『泣いた赤おに』(浜田広介)、『ごんぎつね』
(新美南吉)、『野ばら』(小川未明)、『よだかの星』
(宮沢賢治)……などの作品が、時代を乗り超えて
絶えず波打ち、それらが現代を生きるための、ヒントと
なっていることも確かな事実だと思います。
今日、「子どもたちに良書を……」と、各地で読書推進
運動が活発に行われています。
私も時折、小・中学校、図書館、公民館などに招かれて
「本を読むことの楽しさ、面白さ、素晴らしさ」などを
語っています。
さらに、私自身が書いた作品を朗読したり、効果音を
使用した“口演”などを行っています。
そんなとき、子どもたちの目(心)はイキイキと
輝いています。
たびたび、親御さんたちから
「今の子どもたちは、本を読まなくて困った。
ゲームばかりして……」
という愚痴を耳にすることがあります。
とんでもない。
心温かい読書の場、つまり環境をつくってあげれば
子どもたちは本にのめりこんでくるのです。
★読み聞かせの大切さ
「なぜ読み聞かせは大切なのですか?」。
講演先で、たびたび受ける素朴な質問です。
そんなとき、私はこう優しく語り掛けています。
「子どもたちが、本の世界に飛び込み、主人公と
一緒になって遊び回る。
ワクワクしながら活躍する。
さまざまな登場人物に共感したり、同情したりする。
ときには、反発したりする。
こうした間接体験を積むことは、感性を育む泉のほとり
に腰を下ろし、泉の澄んだ軟らかい水を飲んでいるのと
同じことなのですよ。
身体の底に染み込んだ感性の水は、お子さんが成人した
あかつきに必ずわき出してきますよ」
「人間の生き方の一側面を、選び抜き、研ぎ澄まされた
言葉を駆使して生み出された作品を読むことによって
ふとした経験、ふとした想像のなかに託された、人間の
喜びや悲しみを、感受することができるようになるのです」
この連載では、「良書の及ぼす影響」「読み聞かせの大切さ」
などを、具体的に語っていくことに致しましょう。
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