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ミリオンスター
ハコネツリガネツツジ
☆免疫力、生命力を 強化することが重要
真菌などの侵入の「挑戦」にどう「応戦」するか
住居の気密化、洋風化から増えるアレルギー疾患
皮膚科医 西山千秋
☆みそ、しょうゆなどに活用される微生物
日本の気候風土は温暖で湿気が多いうえ
特に梅雨時には、カビが繁殖しやすい条件が
備わっています。
今回は「カビとの付き合い方」について
述べてみましょう。
◇
日本では古くから、カビはみそ、しょうゆ
酢、かつお節、焼酎などに利用され、慣れ親しんで
きた「有用な微生物」でした。
現在も、日本食ブームで、カビは大いに活用されて
いるといってよいでしょう。
しかし、カビは私たちの生活を損ない
害を及ぼす面も持ち合わせています。
住環境が木造の、開放されたものから
コンクリートや新建材の気密性の高い建築様式
へと変化。
さらに、エアコンの普及によって1年を通じて
室内環境の温度・湿度が一定に保たれるように
なりました。
こうして住居の気密化により、部屋の換気量
も減り、ライフスタイルも洋風化。
畳と布団の生活からカーペットとベッドの組み
合わせに変わってもいます。
その結果、ジメジメした湿気の多い場所以外
にも、好乾菌(乾燥を好むカビ)が室内に浮遊し
室内塵(ハウスダスト)も増加してきました。
そして、カビによって起こるアレルギー性疾患
などが増えたことで、カビは有害な微生物として
社会的関心が高まってきたのです。
☆アレルギー、コンタクトレンズ障害
ここで、カビによって起こるアレルギーや
コンタクトレンズ障害の経験例を2、3あげて
みます。
(1)コンタクトレンズ障害
コンタクトレンズを使い慣れていた人が
うっかり清潔でない手で触れ、洗浄もいい加減に
していたところ、角膜に傷がつき、カビが付着し
角膜潰瘍になり、視力障害が残りました。
コンタクトレンズによる目の障害の多くは
角膜の表面に細かい傷ができる程度の表層角膜炎
ですが、これを繰り返すと、その傷に細菌やカビが
付着して、感染性角膜炎や角膜潰瘍を引き起こします。
(2)アレルギー性鼻炎
一年中、クシャミと鼻水に悩んでいた方が
一念発起して、住まいのハウスダストを取り除き
カビを除去したところ、それまで悩んでいた症状は
完全に消えたということです。
(3)アトピー性皮膚炎
成人になって再発した症状がひどいアトピー性
皮膚炎の男性。
一人暮らしになって住み始めたマンションの部屋は
「湿気が多く、日当たりも悪く、換気も悪い」と
友人に指摘されました。
そこで、風通しの良い部屋に転居。
掃除もまめに行い、フローリング(板張りの床)
での生活をはじめたところ、次第に皮膚の症状が
改善しました。
ハウスダストに含まれるクロカビが疾患の
アレルゲンに
次に、アレルギー疾患などを引き起こす
代表的なカビと、住環境との関係を調べて
みましょう。
(1)クロカビ(クラドスポリウム)
湿気のこもっている浴室の目地、洗面所
トイレ、キッチンの床マット、窓ガラスの結露
エアコンのフィルターなど、黒く汚れている部分は
ほとんどクロカビです。
ハウスダストにも含まれ、小児ぜんそく
アトピーなどアレルギーを引き起こすアレルゲン
(アレルギーの原因となる物質)として重視されて
います。
(2)コウジカビ(アスペルギルス)
土の中、空中など生活環境にはどこにでも分布。
畳、カーペット、エアコンフィルター、ハウスダスト
など、乾燥気味なところに多く、感染症やアレルギー
と関連しているカビです。
(3)アオカビ(ペニシリウム)
乾燥に強く、住環境のあらゆる場所に浮遊して
います。
パン、もち、傷んだミカン、ジャムなどに付着して
います。
花粉と並んで、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎
アトピーなどのアレルギー性疾患のアレルゲンです。
(4)ススカビ(アルテルナリア)
クロカビの分布する環境に多く存在。
浴室、キッチン、結露壁に付着している煤のような
黒色のカビで、アレルギー性鼻炎と関係しています。
(5)アカカビ(フザリウム)
水の多い環境、例えば浴室、キッチンの排水溝
たまり水などに浮いているカビで、汚水の指標に
なっています。
感染症やアレルギー性鼻炎のアレルゲンとして
重要です。
(6)水虫のカビ(白癬菌)
足白癬や爪白癬の人から、畳、カーペット
足ふきマットなどに菌が落ち、付着します。
その上を歩く家族やほかの人に感染します。
☆病を治す主体者は患者さん自身!
仏法では、古来、病を起こす原因を六つあげて
います(天台大師「摩訶止観」)。
その4つ目に「鬼便りを得る」があります。
この「鬼」とは、外部から体内に侵入する
病原菌などを指すと考えられます。
であるとすれば、カビ(真菌)による
種々のアレルギー疾患、感染症などは
「鬼便りを得る」ことによる病の一種と
いえるでしょう。
◇
ところで、私がカビ(真菌)が引き起こす病気
・真菌症と付き合って30年以上になりますが
私たちの体は絶えず外部から入ってくる病原菌と
戦っています。
人間は有毒な真菌、ウイルス、細菌など微生物の
侵入という「挑戦」に対して、白血球、リンパ球が
あるいは抗体をつくるなどして、侵入に「応戦」します。
医学はこの「応戦の力」を助ける存在だといって
よいでしょう。
したがって、病気治癒の主体者は、あくまでも
患者さん自身なのです。
医師はもとより、看護師さんや病院職員も
患者さん御自身の手助けをする立場です。
◇
カビの病気で「日和見真菌感染症」というもの
があります。
病原性がない、あるいは極めて弱いと考えられて
いるカビ(真菌)による感染症です。
普通の健康な人であれば、感染しません。
ところが、臓器移植を受けた方、がんや糖尿病の
患者さん、高齢者など、抵抗力や免疫力が低下した
人の場合に、発症することがあります。
ですから、具体的に日々の生活の上で、カビの発生を
防ぐ努力をすることはもとより、私たち自身の体力
免疫力、生命力を強くすることがより重要であること
が分かります。
☆老苦、病苦、死苦などの解決へ
生きている以上、「苦しみ」は避けられません。
だれしも病気や老衰、さらには死と直面せざる
をえません。
この「生老病死」の「四苦」と真正面から立ち向かい
その解決を目指してきたのが仏法です。
(楽しみはもとより)病や老衰、死苦などの苦難をも
生命力をわき出して、ゆうゆうと乗り越えていくなかに
真実の楽しみ、安楽があると教えられているのです。
なにがあっても微動だにしない、強い生命力で
病を乗り越えて、なにものにも壊されることのない
幸福境涯を開いていくことができる、と。。。
☆最新の知識を使い智慧を働かせ
病気も変わってきています。
最新の科学情報の知識を使って、智慧を働かせ
病気を予防し、病気を治癒することも大切です。
「医学と仏法について、大ざっぱに言えば
医学は『知識』を使って病気と闘う。
一方、仏法は、人間の『智慧』を開発して
自身の生命のリズムを調整する。
また生命力を高める」
豊かな生命力、言い換えると自然治癒力で
医療の力を十二分に発揮し、健康・長寿の人生を
勝ち取ってまいりたいものです。
☆カビの発生を防ぐ日常生活10カ条
(1)年に2回は、天気の良い日に大掃除をする。
(2)住環境の風通しをよくし、乾燥させる。
(3)エアコン、除湿機、掃除機のフィルターを清掃する。
(4)キッチンや浴室などで湿気を帯びやすいものは、乾燥させる。
(5)熱処理可能なものは煮沸消毒する。
(6)衣類、靴類を収納する時には、汚れを落とす。
(7)押し入れに寝具を収納する時は、空気の通りを工夫する。
(8)カビの発生しやすい場所には、あらかじめ防カビ対策をする。
(9)カビが発生した場合は、できる限りカビを落とす。
(10)1日1回は、シャワーを浴びて、顔と手と足は十分に洗う。
にしやま・ちあき
広島県出身。皮膚科医。医学博士(日本大学)。
皮膚科領域の真菌症が専門。
日本大学付嘱病院皮膚科部長、日本大学短期
大学部教授などを歴任。東京・調布市在住。
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