|
イタリアンの料理人さんたちなら御存知でしょうか?「レティチェッラ(Reticella)」、動物の腸を包んでいる網状の脂肪のネットなんですが、特に豚のもので、これを先日、贔屓のお肉屋さんモスカ精肉店で原始人が分けてもらってきました。 そう、分けてもらったというのは通常は店頭で販売されてないからなんです。お店の店員さんが「持ってけい!」と只で分けてくださったのもありますが、、、。 この前の日曜日は、やっと陽気が戻ってきたイタリアですが、早朝から大雨。久々に何処にも出かけず家でゆっくりする事にしました。 と、原始人がこの「レティチェッラ」を分けてもらったことを思い出し、「今日のお昼は俺がスッゴイ料理を作ってやろうと言い出しました。 日頃メインでキッチンに立たされている主婦の私としてはこれは「慰労」の意味が含まれていると思い、悪い気はしませんでした。 日頃の私の仕事場は、憩いの場と化し、パソコンのスイッチを入れ久々にあっちこっちスイスイとネットで日本、イタリア、北海道、トリノと旅をし出したのです。が、、、 『おい、ちょと、ちょっと』 「エッ!?」(何の用だ?今日は慰労してくれるのでは?) 「俺には出来る事と出来ない事があるのは知ってるでしょう。それにさ、お前さぁこういう仕事を器用にぱぱっとできるじゃない!」 原始人の今日の一品ですが、鹿の肝臓をこのレティチェッラに包んでワイルドウェンネル(Finocchio Selvatico)で帯をしたものを白ワインとグラッパでソテーするというもの。 私もどんな料理になるか興味のあるとことですが、要は私にその肝臓をレティチェッラで包む仕事をぱぱっとやっちゃって欲しいと言うのです。 いつもの事ながらホント、騙された気がすっごくする。 私のぼおっとゆっくりする時間がなくなっちゃったではないですか!! 怒りながらでも結局キッチンに出て行く自分が恨めしい、、、、 原始人はそんな私に「凄いねえ!やっぱ器用だねえ!」と調子にのって一通りのおべっか使ったかと思うと、おもむろにワインを引っ張り出し、おっとり刀で友人の作ったサラミを切り始めます。 「ちょっと!!あんたの仕事だったんでしょうが!?」 「んん?ああ、お前もキット君の作ったサラミ食べる?」 ってそうじゃなくて! 「あんたが料理してくれるんじゃあなかったの?」 「するする、しますよ。でも俺がグランシェフ。お前スーシェフでしょ。」 結局いつものパターンに終わってしまいました。「せめてあんたがお皿洗ってよねえ!!」 「はいはい、まあ、そんなに怒らないで。この一品のためにとっておきのワイン開けたから。」 因みにこの日のワインについては次回お話しましょう。曰く因縁の、でもとってもいいワインです。 さて、この日の鹿はパインと原始人が去年の秋、自分たちで獲ってきた鹿です。 まだ少し若いメス鹿。お肉も柔らかくて美味しかったですが、肝臓も野生の臭みがほとんど無くて、レティチェッラで包むことで表面が料理中に乾かず、味も以外に繊細でした。 同時に塩をしなくてもいいくらい味わい深いものでした。 ふん!レティチェッラの使い方覚えたし、今度は自分で勝手になんか作ってやる!! でも、自分ひとりではこんな料理思いつかなかったし、鹿を獲ってきたのは原始人とパピンだし、、、許してやるか、、、
|
ぶじゃキッチン
[ リスト | 詳細 ]
|
2008年の最初の3ヶ月で世界の食料価格は過去最高に達したそうです。(国連食料農業機構FAOによる)
昨年あたりからバイオ燃料生産に利用されることもあり高騰する穀類価格の問題はイタリアでも時々耳にします。
たぶん私達は今、新しい食糧不足に直面しているのですが、日本やヨーロッパの先進諸国に暮らす私達にとってお店に行けば何でも手に入る事には変わりありませんからその実感が常にあるとは言えないでしょう。
でもねぇ、私は時々凄く不安になるのです。
きっと昔、祖母から戦中ご飯粒ひとつを取り合って喧嘩する子供の話や、米30kを馬に乗せて40kmの道のりを海岸まで歩いて塩を買いに良き、たった一握りの塩を持ち帰った話など、 環境問題や経済問題だけをとっても世界中が決して将来を楽観視できない状況にありますからいつか自分も祖母と同じ経験をする日が繰るのではないか。 確かにFAOは『、、、食料価格の高騰は、途上国において社会不安を引き起こし、、、短期的には、都市、地方の純消費者が更なる貧困に追いやられだろう』と書いています。 ムム?それって私達も含まれているではないか、、、。パピンは家庭菜園やってるけど農家じゃないもん。本当の食糧危機が、自分達が何かの形で手を打つ前に来てしまったら、、、私は何もできない? と、いうわけで「せめてエディーが我が家でやっていることはせめて自分もできるようになりたい。
まず、これが小さな第一歩でも」という思いから、やっとエディーを説き伏せてまず、鳥のお掃除の仕方を習いました。魚はとりあえず三枚におろせるので、今度は鳥というわけです。
我が家は農家で良く鳥を丸ごと買ってきます。 鶏、鴨、ガチョウ、鳩。それに秋から冬にかけてはパピンと原始人がハンティングに行くのでベッカッチャや雉、ヨーロッパオオライチョウ(Gallo Forcello)なんかが我が家に持ち込まれる。 これまでそれを食べられるまんまにお掃除をする係りはエディーでした。 今回は、原始人の友人がスイスでの狩猟許可を取り、彼が獲った鳥(Pernice ペルニーチェ)をプレゼントしてくれました。 イタリアでは捕獲禁止の鳥ですがスイスでは免許があればハンティングできます。 『雌雄それぞれ一羽ずつで、しかもどちらも一発で仕留めているのでほとんど無傷にちかく、剥製にできる状態だったのでほしい人がいたら譲ってやろうと思って冷凍庫にそのまま入れておいた、 だから内臓もそのままでとっていないから』との説明つきでした。 私達は当然剥製にする気はありません。食べるために獲ったのなら内臓はその場で取ったほうが変な臭いが突かなくて本当はよかったのですがしょうがないです。 解答して少し血がにじんでしまいましたが貰ったときは本当に血の一滴もついていない純白のペルニーチェ。 これを食べるべきか否かの議論はひとまず横においておいてエディーについて私も一羽お掃除しました。 おなべにたっぷりのお湯を沸かし、沸騰したてのお湯に鳥をそのまま浸します。厚手のゴム手袋が必要です、やけどしますから。 ゆっくり三つ数えて引き上げる、これを2、3回繰り返します。表面だけに熱が通ってお肉には熱を与えてはいけないのであまり長く漬けてもいけないし、思い切ってやらないと羽が抜けない。 丁寧に按配を見ながらちょっと指で掻いて羽が簡単に抜けるくらいになったら引き上げて背中から羽をむしりはじめます。 羽の生えている方向に向かって引っ張ってとります。 うっかりすると皮が破れるので丁寧に、で、羽も小さいのに比べて翼のごっついのでは皮膚にしっかり着いていますからそういったものはもう一度お湯につけてとってやらなくては、でもおっとあわてないで! パピンはそこでもう一度おなべのお湯を火にかけて再沸騰させます。でないと羽が抜けないから。 羽がとれたら、お知りから腿に向かって包丁をいれ、左手で肋骨の部分を持ち上げながら右手を切り口ふかくに差し込んで内臓を出します。内臓を傷つけないように注意しながら、でも思い切って!! 今度は食道の部分、胸の上辺りの皮をちょっと切って食道を引っ張り出します。そこから食道の下の部分までをまた手ではずします。ここでも慎重に。 鳥が食べた内容物も入っていますからここが敗れると厄介なことに、、、。 『ああ、やっちゃった、、、』私がお掃除していたオスのお腹が破れてしまいました。っと、中から出てきたのは緑色の植物でした。 それも5月の若草よりもっともっと新鮮であかるい緑、友人のハンターのおうちの冷蔵庫で何ヶ月も眠っていたはずなのにその緑の鮮やかさに驚きました。 さあ、お掃除終了!! あまり羽の取れにくい鳥はこの後コンロで肌の表面を焼ききりますが今回は小さくで羽も細く。表面の処理をする必要すらありませんでした。 エディーは何でも自分でやらないと気がすまないのでついつい彼女が私の分にも手を伸ばしてくる。ストップをかけるのに苦労しましたが、とりあえずは全て自分でやることができました。 これで、来年から原始人の取ってきたものは私がお掃除して食べることができます。小さいけれど一つ自立!! この夏はピエモンテのリコッタ「セイラス・デル・フェン」を作ってる友人のアルペッジョで牛の乳搾りを習う予定です。彼のところで会得してリーザおばさんを吃驚させるのが目的。 果たしてどうなりますことやら。 さて、このペルニーチェですが、パンチェッタと野生のタイムを詰めてロスートして食べました。 コニャックの代わりにリグーリアで美味しいワイン、ピガートを作っている造り手でブルーナという人がいますが、その人の所で分けてもらったグラッパを使いってフランべしました。 食事中「この鳥は野生のシャクナゲの葉やなにかを食べているんだよ。そういう山の強い味がお肉に感じるだろう」と原始人。 そういえばと、お腹からでてきた植物の緑の深かった話を原始人にしました「あまりに緑が生きてて、自然の生命力の強さにあらためて驚かされたよ」と私がいうと 「、、、そんな話聞くとさ、やっぱりペルニーチェは獲るもんじゃないって気がする」
そういいながら原始人は手にしていたフォークとナイフをテーブルに戻しました。 |
|
ジジはルーディとはもうかれこれ20年来の付き合い。ジジはルーディの昔の職場の管理職で年もジジの方が一回り以上も上。 ですが、ワインと食べ物に興味があるという共通点で知り合ってすぐ仲良くなりました。それから10年余り二人でフランス、イタリア中を食べ歩いたそうです。今は二人とも少し歳をとったからとあまり無理はしなくなりました。 二人がその当時の思い出話を始めると大変!次から次へと楽しいエピソードが出てきて時間がいくらあっても足りない! と、いうので毎年交替でそれぞれの家に招き合って食事をするのが恒例になりました。 ジジは、いわばルーディの「食」の師匠。ワインのこと、レストラン情報食べる事ならジジに聞けば何でも教えてくれる。それだけではないのです。その料理の腕前も馬鹿に出来ないのです。 ガイドブックに出ているようなイタリアの有名レストランはほとんど行きつくしているジジですが、そんなレストランで食事をして帰って来ると気に入った料理を自宅で再現してしまう。
御満悦のルーディ
(写真がどれも赤っぽくてごめんなさい。回りの雰囲気を壊すのでフラッシュは使えなかったのです。) 因みに、トスカーナの有名なレストラン「ガンベロ・ロッソ」のピランジェリーニとも懇意。で、そのきっかけが面白い。 ジジとルーディーが初めてガンベロ・ロッソに訪れた時(当然、二人ともピエランジェリーニの料理に舌を巻き、感動的な食事をしたわけです。)ピエランジェリーニ御本人が挨拶に出てこられた時のジジの一言がこれ、 「イタリアでこんなに素晴らしい魚料理を食べた事はない。フランスのローランジェを彷彿とする素晴らしい夕食だった。」 エイのモツを詰めたラヴィオリ ジジにしてみれば最高に褒めたつもりだったのですが、ピエランジェリーニは凄い剣幕で怒り出し、 「ローランジェだと!?自分の腕前は彼より優れていると思う。今度、来たときにそれを証明して見せようじゃないか!!」 ジジもルーディもひるんでしまいます。 ジジが実際にガンベロ・ロッソを再び訪ねたのはその2年後。ピエランジェリーニは、ジジとニコ(ジジの奥さん)がレストランに入ると待ち構えていて 「僕は2年前あなたが言ったあの言葉を覚えている。今日はあの時の決着をつけましょう」 と言われたそうです。その時の夕食がどうだったかもうお話しするべくもないでしょう。そして食事の後、二人は料理談義に花を咲かせ、仲良しになったのでした。 さて、そんなジジですから私達を彼の自宅に招くときも何かテーマを探してメニューを用意してくれます。 この日は、ルーディというより私のために「クゥイント・クワルト」をテーマに選んでくれました。 要は家畜はたいてい四つに解体されるのですが、もう一つ大切な部分、、、そう、モツの部分。それを人によって「クゥイント・クワルト」と呼ぶようです。とにかくテーマは内臓。 私は、脳みそでも、牛の横隔膜でもなんでも食べちゃう。モツの類が大好き!女性なのに(私の年代のイタリア人女性でモツを食べる女性はほどんどいない)、、、それがジジに受けたみたいです。 ジジの料理は、ただレシピにある必要な材料に必要な加工を施したというような私の『雑で時々はまぐれで美味しい料理』とは違います。 どこをどういじくったらこういう味が引き出せるのか!?よく分からないけど味のバランスが凄い。 多分、プロの料理人にならないのかと彼に聞く人もいるそうですが、プロはやっぱり10人でも20人にでも自分の出したい味が用意できるのでなければ、、、。 ジジは、自分の味を完璧に出せるよう多くて4人、普通は夕食に呼ぶのは2名なようです。 もう一つ、ジジのお家に呼ばれて得するのは、自宅では絶対飲めないワインが味わえる事。もちろん料理に合うワインを出してくれるので、中にはコストパフォーマンスの良い無名のワインもありますが、 「マルゴー」、「シャトー・ディ・ケム」、「レ・ディ・ガッフィ」などのスーパートスカンスもジジのところで体験させてもらいました。 ただの『のん兵衛』の私には分不相応です。でも、ジジからすると面白いらしいです、私の反応を見るのが。なので今のところ素直に感謝して甘えさせてもらっています。 |
|
ピエモンテのお肉屋さんについて語るとなると私にはいろいろ思い入れがあります。 やっぱり日本人ですから、今でもお肉と魚とどっちが好きかと聞かれたら、悩みながらも「魚」と答えるでしょうが、私のピエモンテでの暮らしとお肉は切っても切り離せないのです。 これまで、このブログでもいろんなお肉料理やお肉にまつわるエピソードを紹介してきましたので、お読み下った方は御想像がつくかもしれませんが、我が家ではお肉はほとんどを近所の農家から買ってきてフリーザーにストックしておきます。美味しくて、食の安全性も保たれ、しかも安価ですから。 「モスカ精肉店」店内。8時の開店時間には外に小さな行列もできる。客もお店の側も真剣勝負! でも、お肉屋さんで必要なお肉を買う場合は、村から車で15分の街「ビエッラ」にある1916年創業のこのお店「モスカ精肉店」に行きます。 格式もあり、お肉の品数も豊富で新鮮!質もお店の当主ジョバンニさんが自らモンフェラーとなどピエモンテの肥育牛の産地に買い付けに行き、自前の屠畜場でさばいてお店に出す。 毎年、モンフェッラートの肥育牛の品評会で優勝をしているほどの目利きの持ち主です。 ですから美味しくないはずはないのです。お肉のほかにも例えばお惣菜は週末だけでものべ500種類が並び、チーズ、ワインなどここにくれば全てが手に入る。 ビエッラの街の高級店ですから他に比べたら当然少し割高ですが、ここに来るといつも気持ちよくお買い物ができるのです。 まず、お店の店員さんたちのきびきびした動きは見ていて気持ちが良い! モスカ精肉店の番頭の一人ピエロさん。ピエロさんでなくちゃというお客もなかなか多い。 店員さんの接客のキメの細やかさは、絶対お客さんを怒らせたりしません。モスカ精肉店に2,3回通うと精肉コーナーではたいてい自分担当の店員さんが出来ます。 彼らはお客一人一人の好みをお肉を切る厚さまで心得ている。このお店に行くと大事にしてもらっている実感がわいて、もう嬉しくなってしまう。 当然、店員さんの努力は並々ならぬもの! 牛肉、豚肉、ウサギ、仔羊、子ヤギ、七面鳥、鶏肉、などなどの品をぴかぴかに磨いたショーケースに貴信と並べて8時にはお店を開ける。 そのためにはなんと朝6時半出勤の午後8時過ぎまでの重労働。でも、お店として仕方なく12時間勤務をしているのではないんですって! ここの店員さんは皆、自分の仕事に恋している人達なのです。実は、お店の平の店員さんの中に、地元有名企業を経営する一家のお嬢さんと結婚された人がいるそうです。 一生働かなくてもいい身分なのでしょうが、この仕事は絶対やめないって今もモスカ精肉店の従業員としてバリバリ働き続けているそうです。 こんなエピソードもあります、、、 うちの原始人がモスカさんの親しい従業員に、モスカさんで買ったのではないサラミを日本に持って行きたいから真空パックにしてくれないかと厚かましい御願いをした事があります。 この方、二つ返事でOKをくれ、『でも平日は忙しいから日曜日にお出で、、、』 、、、って。まず、日曜日も出勤しているのか!?と、驚きます。 次に、そのサラミを持っていくと、検品!素人の手作りサラミで、すこし変色している事、一本一本サランラップに包んでラードに漬け込んであったのを見て味が変わってしまうと怒られました。 さっさと真空パックを10個作ってくれたあと、サラミの漬け込んであったラードの油分ごてごての容器を見て「洗っておいてあげるから火曜日に取りにお出で。一般家庭の洗剤じゃこれは洗い切れないよ。」 本当に、ここまでしてくれるの!?と感激するやら申し訳ないやら。さすがの原始人も、それ以降、おいそれと頼み事はしなくなりました。 今朝もモスカさんの従業員さんたちは6時半、お店の裏口のシャッターをガラガラ上げて一人、また一人、作業場にすい込まれて行きます!! |







