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堀江敏幸著『いつか王子駅で』という小説はつかみ処のない小説で、 王子駅近くに住む「私」が、王子で出会う人情味溢れた人々―――背中に昇り龍を背負った印章彫りの正吉さん、飲み屋「かおり」の女将、古本屋筧書店の店主・筧さん、アパートの大家さんとその娘・咲ちゃん―――との交流を描き、 且つ「私」は思考の流れるままに白昼夢のような思索に浸り、 小説家・島村利正の描く、日常にひそむ「ほのかな狼狽」を感じることこそ人生だと語り、 安岡章太郎「サアカスの馬」やモンゴル民話「スーホの白い馬」について語り、昭和の名馬達に思いをはせる、 といった様々な枝葉が、語られるたびに話の中心になっている、という問わず語り的な物語です。 その中で、王子駅前を走る現在東京で唯一残っている路面電車、「都電」のくだりは、鮮やかな印象をもたらす場面として多くの人の心に残るのではないでしょうか。
引用が長くなりましたが、この引用の最後の一行(飛鳥山での花見も忘れ…)以外の部分が、一続きの一文であることで、この著者の文体がある程度理解できるのではないでしょうか。 さて、都電荒川線です。 都電荒川線は、早稲田と三ノ輪橋をつなぐ全旅程55分の一両編成路面電車です。 「火花が飛ぶほどのブレーキング」と著者が著す通り、 カーブの際線路と車輪の摩擦で起きる「キーーーッ」という金属音は、半分降ろした窓から容赦なく入り込み、 耳をつんざくとは正にこのこと、というものすごい音を立てます。 路面電車という牧歌的なイメージからすると、意外なほどの起伏とカーブが多いせいでしょう。 引用中にあるような、線路と民家の軒先を隔てる柵に生活感溢れる干し物や植木の鉢を鑑賞しつつ、 電車は走ります。 下の写真は、飛鳥山横の坂をカーブしつつ一気に下り、王子駅へと向かう都電の姿です。 都電の軌道上は、このような碁盤の目のような電線が続くことも、何となく旅情を掻き立ててくれています。 また、都電荒川線は線路脇にバラの花をたくさん植えていることでも有名で、 今がちょうど見頃を迎えたバラに囲まれ、都電の姿も誇らしげに見える気がしますね。 |
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やはりあの部分を引用したくなりますよね!
都電が懐かしいので、この小説が好きです。
2009/5/21(木) 午後 10:43
レトロさん!やはりあの部分ですよね。
その他に王子については、徳田秋声の『あらくれ』の舞台となったとの記述もあり、確かに王子が「洋紙発祥の地」であるとの石碑も見たのですが、今回は記事に載せるに至りませんでした。
レトロさんがTBしてくれたおかげで、いい感想にリンクがはれたと思いました、ありがとう^^。
2009/5/21(木) 午後 11:15 [ booklover ]
飛鳥山付近は勾配がきつい上に、カーブが連続しているので、
引用部分はこうした大げさな表現になったのだと思います。
東北新幹線がなく、まだすっきりとした景観だった頃は
王子駅へやってくる黄色い都電の姿が、
京浜東北線の車窓からよく見えました。
まるでチョコチョコと走る小さなオモチャのように
可愛く見えたものです。
2009/5/21(木) 午後 11:18 [ - ]
私は古河庭園から飛鳥山に歩いたとき、庚申塚の前を通りました。
荒川線はたまに乗りたくなり、遠回りをして乗ってしまうことがあります(*^_^*)
2009/5/21(木) 午後 11:22
都電に乗った記憶が・・・ないか?一回はあるか?
「江戸を歩く」を読んで、都電めぐりをしたくなってました。
1日乗車券があるみたいですね(^^♪
2009/5/21(木) 午後 11:48
堀江敏幸さんの翻訳は素晴らしいのですが、創作はちょっと理屈っぽい感じがしちゃって・・。ことろで、この前はじめて都電に乗ってきました。早稲田から巣鴨まで、鬼子母神などで途中下車しながらの小旅行でしたが、「真骨頂」はその先だったんですね。もう一度チャレンジしなきゃ。^^
2009/5/22(金) 午前 6:16
都電は乗ったことないですが、情緒があっていいですね。電車に乗ること自体が好きなのでいずれゆっくりその揺れ具合を味わってみたいです。
僕は地元が関西なんで、有川浩著「阪急電車」を思い出しました。
”電車シリーズ”が出たらいろいろ読んでみたいです。「電車男」は除く(笑)
2009/5/22(金) 午後 0:13 [ トラトラッキ ]
こんにちは。ご無沙汰しています。
僕は親父だから、都電があちこちで走っているの知っています。
僕の方だと、目黒、五反田、品川など、自動車と一緒になって
走っていました。懐かしいです。子供の頃を思い出しました。
花と都電の写真は素敵です。
2009/5/22(金) 午後 0:48
しばらく乗ってないですね〜。先日雑司が谷に行ったのですが、乗ってみればよかったです。飛鳥山の花見はいつか行きたいと思っています。
こんなにバラがあるのは知りませんでした。
2009/5/22(金) 午後 6:03 [ テラ ]
はじめまして。
いつも都電と並走してながら車を走らせています。
飛鳥山や風情のある小料理屋、王子大好きです。
トラバさせて下さい。
2009/5/22(金) 午後 11:35 [ GonnaFlyNow ]
空想癖さん!新幹線の高架がないと、また風景も随分違ったでしょうねぇ。昔は黄色い車体だったのですか。今は黄緑がメインで、あとは広告でカラフルなのとかレトロ電車とか、色々走っていますね。レトロにも乗れましたよ。
小説の表現は大袈裟に思われましたか^^。
2009/5/23(土) 午前 10:20 [ booklover ]
金平糖さん!私もたま〜に乗りたくなるんですよね。今回は写真と散策、という目的があったので、一日乗車券で何回も乗り降りしました。全道程も乗ってみて、『いつか王子駅で』を電車に揺られながら読みましたが、家で読むよりずっと良く感じました。読書にもTPOがあるんですね、新たなる発見です。
2009/5/23(土) 午前 10:23 [ booklover ]
evagoroさん!『江戸を歩く』に載っているんですね。一度都電を経験するのも楽しいと思いますよ。一回乗りで160円、一日乗車券400円です。私は充分元が取れる回数乗りました^^。
2009/5/23(土) 午前 10:27 [ booklover ]
りぼんさん!私も初めてこの小説を読んだ時はちょっと好みでないと感じましたが、改めて都電に揺られながらぱらぱらとめくり読んでみると、随分いい感じがしました。旅情、ですかね。
私個人としては、都電で一番好きなのは早稲田から神田川の流れを下に見つつ面影橋を渡り、下りカーブのきつい大塚辺りまでの雰囲気が一番好きです。
2009/5/23(土) 午前 10:30 [ booklover ]
言の葉さん!私の出身地長崎にも路面電車が走っていて良く乗っていましたが、都電は同じ路面電車といえども全く違った趣きの走りをしていました。新しい発見でした。
「阪急電車」、と聞くと今は無き球団を思い出してしまった。“電車シリーズ”読むのも面白そうですね。電車男は私もパスですが。
2009/5/23(土) 午前 10:34 [ booklover ]
mbk550さん!目黒、五反田、品川辺りにもあったんですか〜。そちらのエリアにはほとんど足を向けないので、山手線からの眺め以外ピンと来ませんが、都電のある風景が減ったのは寂しいですね。
私は漱石の『坊ちゃん』で、上京したての坊ちゃんが上野で都電(市電、と書いてあったかな)に乗って移動する景色がイメージとして頭にあります。
2009/5/23(土) 午前 10:37 [ booklover ]
テラさん!雑司が谷ですか、私も「往来座」という古本屋さんにはたまに行きます。いい雰囲気の場所ですよね。飛鳥山の桜は、緑に茂った桜の木々を見て、桜の季節は見事だろうなぁと、想像花見しかしたことありません。私は人ごみが苦手なんで…^^。
2009/5/23(土) 午前 10:39 [ booklover ]
GonnaFlyNowさん!コメント&TBありがとうございます!
いつも車であの辺りを走っているのですか。飛鳥山から王子駅前にかけての坂とカーブはちょっとした眺めをつくっていますね。私も好きな場所です。王子駅前は、今回初めて歩いてみましたが、明治通り沿いにいい古本屋を見つけました。それ以外ディープな王子はまだ堪能できていませんが。面白そうな街だなと思いました。
2009/5/23(土) 午前 10:43 [ booklover ]
路面電車は日本全国どこにでもあるものではない、残念です。
私が乗った記憶ははるか昔です。
温かい風景に和みます。
窓から空が見えないと…
2009/5/24(日) 午後 10:03
あおいさん!路面電車はその土地の雰囲気を作りますね。他の鉄道・地下鉄にはない魅力です。田舎を走るローカル線にも同じような魅力を感じます。
私も地下鉄は苦手なんですよね…昔の、銀座線だったかな丸の内線だったかな、バシッと一瞬電気が消えて真っ暗になる地下鉄は結構好きでしたが。
2009/5/24(日) 午後 10:27 [ booklover ]