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自閉症児の心の世界と家族

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 「ファシリテーティッド・コミュニケーション」のお陰で、イアンはより良くコミュニケーションが出来るようになり・物語まで書き始めたことは、二つの大切なことを教えてくれる。
第一は、役立つ技術・善意の人々の努力の前に立ちはだかる大きな壁の存在である。現代科学は、「真理、或いは役立つ技術とは、新薬開発の二重盲見試験のように、専門家がテスト・証明できることを公認する」が原則であるようなのだ。
2008年2月17日の本ブログが紹介したように、「対象となる自閉症者と初対面の研究者によって、慎重にコントロールされた研究所で行われた実験結果は、あまりはかばかしくない。」大きな理由は、そうゆう場所では・負担やストレスが非常に大きく、成果を阻害することにある。一方、被験者が暮らしていたり働いたりしている場所や・通っている学校で行われた経験的な調査や観察では、説得力あるデータが集まっている。
社会科学は、自然科学の原則だけでなく、人間学の側面も考慮するべきだと思うのだが、既存の学説(自分が信じてきた説)と符合しない面がある理論・技術を認めたがらない人々も多いのが現実である。障害者の心身状態は、健常者とは違う場合が多い、障害者のニーズに応じた対応:ストレスや負担を極小にする環境・条件を作る必要性を誰もが認めることになれば、多くの問題が解決に向かうと思う。この方面の社会科学の発展・普及、そして人々の理解が望まれる。

 第二は、脳内や神経系統に損傷がある人は、脳に多くの情報が殺到しても・健常者と同じ情報処理が出来ないため、常に苦悩にさいなまれていることだ。
アナフラニールを服用する前は、イアンの頭の中には声が存在し・定期的に声を聞いていたこと、それも自分が望まない命令を度々下していたことがある。この事実はイアンだけの問題ではなく、脳に問題がある人全てに起こっていることを無視するならば、事故防止や適切な教育は望むべきも無い。障害者の自立・安定した生活を援助することとは、関係する人々がストレスや負担を極小にする環境・条件を調えることが絶対必要と思われる。
この問題は、障害のある人々だけの問題ではなく、病気・疲労・(経済的)困難など様々な状態にある健常者にも起こることであり、身体の衰えが来る人の問題でもある。
この本は、「全ての人の人生に起こりうる多くの問題」を教えてくれたと思う。

 米国は、北欧諸国のような福祉大国兼教育大国ではないが、福祉も教育も日本とは比べようも無いほど充実していると、つくづく思った。障害児への適切援助、両親の希望を生かした援助と教育がある、両親の希望を生かす道、選択が可能であり、最大限に生かされる制度が機能していることに感心した。
2才のイアンに自閉症との診断が下ったとき、両親はイアンにコミュニケーション手段を与えたい・能力を高めたいと願い、コロラド大学のJFK言語研究所のスタッフに相談したところ、適切な・そしてその後定期的なアドバイスを受けた。両親はコロラド大学に特別のコネを持っていたわけではなく、コロラド州に住んでいたので相談したと推定される。
<この様なケース、日本で一般市民が適切な大学や研究機関を紹介してもらえるのだろうか? 日本の大学に相談したら、そのような研究所を紹介してくれるのだろうか? 日本の大学で言語研究所や障害児教育・リハビリ研究所を併設し、いつでも相談に乗ってくれる・援助してくれる大学があれば、知りたいものである。>

イアンが就学(米国では幼稚園から公費負担の義務教育)の時期が迫ったときのP.P.教育サービス共同委員会の特殊教育(障害児教育)委員たちの存在と、活動、学校との関係、両親が勧告を拒否し・普通児童との共学を主張しても、その後のイアンの学校生活には何の影響も無く、最適の教育環境が得られたことも、印象に残った。その際も、両親の希望に沿って、JFK言語研究所が教育委員会や学校当局と働きかけをしてくれていた。勿論両親の家庭教育の成果を、研究所が把握していたからであるが。
そしてイアンは、健常児童が学ぶ幼稚園・小学校で健常児と共に学び、健常児の友達も沢山出来、紆余曲折はあったが学校生活を楽しむようになった。それを可能にしたのは、学校では・母親代わりの(代用)専任教員・M.ルーが常に気を配り・障害児教育に理解ある先生が別にクラス担任となっている。日本に、このような普通小学校があるのだろうか?
ちなみに、米国の統計「Statistical Abstract of the United States:2007」と日本の統計を比較すると、米国の教員数は同一人口比で日本の倍以上居るのに加えて、M.ルーに相当する補助教員が947,000人:約百万人もいるのである。教育重視・投資が、困難を抱える人・家族を救うだけでなく、雇用も増やしている。 続く

 本書より学んだこと・感じたことを、思い出せるかぎり、まとめてみたい。先ず、人間の健康は様々であり、生まれつき・病原菌の攻撃に弱い人・強い人がおり、年令によっても違うことである。本書は「自閉症児イアン少年の物語」であるが、イアンは幼いとき・(死亡させた)ウイルスのワクチンが脳・神経組織に損傷を与えたため発症したことは、確実であるらしい。大多数の子供は発症しないのに、何故イアンが発症したのか?それはアレルギー体質が大きな要因であるらしいこと、ウイルスの恐ろしさ・強力なことも、友人の神経医が診察した様々な患者の状態・苦しみの描写を通して知った。
 この情報を公的機関が生かすならば、多くの家族が、特にアレルギー体質の子供が居る両親がウイルスに対する適切な知識を持ち・予防処置をするならば、多くの不幸な事態発生を防ぐことが出来ることを本書は示唆している。本ブログでは紹介しなかったが、舞踏病、麻痺、口顔ジスキネジー(運動障害)、痙攣性斜頸、それに見る人を驚かせる(フランスの医師、J.ド・ラ・トゥトレットの名前をつけた)トゥトレット症候群などの神経系統の病気は、健康な大人にも起こる可能性があるようだ。老人に多いパーキンソン病も運動障害の一種であるらしいし、自閉症とも共通点があるようだ。
 即ち、自閉症の研究は運動障害に関係する病気の研究の進歩にも関係する、別の表現では、自閉症児の研究・教育の進展は、健常人の健康維持・罹患の予防にも貢献することとなる。別の視点では、人間の一番重要な時期は、幼児から子供への発達時期であり、脳や身体の正常な発達・言語能力の獲得と発達が、心の形成・ノーマルな思春期への移行等に極めて重要であることも教えてくれる。そしてその分野の多くの学説、それを取り巻く人々の群像、IT技術が人々の苦悩解決に一役買っていること、薬の役割・副作用の問題と、副作用の無い・弱い薬の開発を待ち望んでいる人々の存在、さらに障害児を取り巻く社会は人間社会の縮図でもあり、善意の人々の努力と苦闘が果てることなく続いていることも教えている。
言語と脳の関係、神経系統の構造と働き、覚えるのに苦労する名称など知ることが出来たことを感謝したい。 また、このような情報持つ人が増えれば増えるほど、人間に対する理解が進み、不幸な出来事の予防、不幸に遭遇する人が減るはずだと思う。
 世の中には専門書は多いが、本書は、普通の人の知識獲得に役立つ本も、非常に重要なことも教えている。 続く

 「イアンは、こうして言語を獲得したにだが、めでたし、めでたし」では終わらない。言葉で表現できるようになっても、あいかわらずイアンは自閉症のままで、話し言葉はつたないし、反復行動やこだわりは消えない。イアン自身が「あくむ だ」という自閉症は消えない。翻訳を通して本書にのめりこんでいった訳者にとって、辛い終わりだった。しかし、それが現実というものなのかもしれない。
 それに言語表現という手段を・いったん手にしたイアンの成長が、そこで止まるはずは無い。「こんなにたくさんの あいに かこまれていたら いつもふこうでいることは できない」と語ったイアンの人生に、どうか幸あれと祈られずにはいられない。

 そして本ブログは、小さな姉サラのいじらしい・そして切実な願いを忘れることは出来ない。その願いは、2月23と24日に紹介したように、“サラはクリスマスの朝、ついに家族全員が待ち望んでいた贈り物、大きなピカピカのビンに入っている「自閉症その他の病気の薬」を受け取った・クリスマスツリーの下に贈り物を見つけたことです。そして一家は、直ぐにイアンに薬を飲ませた、‐‐‐‐‐しかし、‐‐‐‐‐部屋を横切ってイアンの方に走ったのだが、何故かサラの動きはとても遅く、水の中を走っているようであり、ようやくイアンの側に寄り、両腕を開いて、愛情をこめて・しっかり抱きしめた。ところが、突然全てが変わったのです。イアンの腕は、曲がった固い柱になりました。身体は縮んで・やっぱり固く、小さくなりました。クリスマス・ツリーの灯と・窓からの明かりが薄れて暗くなり、小さなナイトランプの明かりが・サラの衣装ダンスを照らしているだけでした。
 サラは、ベッドの柱を抱きしめていた腕を・ゆっくり振りほどき、毛布の下にもぐりこんで、寝返りを打ちました。ふたたび眠りにつく頃には、枕が涙で濡れていました。“
 欧米では、サラやイアンのような境遇の人々の切実な願いを、実現させようと努力している大勢の人達がいる。そしてその夢の薬や様々な援助用具の開発を促進する、研究体制と研究資金供与制度が機能している。この制度が存在するため、社会科学だけでなく医学や心理学の人材が多く育ち、障害児やその家族だけでなく、健常人も恩恵を受け・経済も発展している。日本にも、その日が来ることを切実に願う。

 幼いイアンの状態は・それだったのではないかと、著者は言う。五感から入ってくるあらゆる刺激が、無差別に・無意味に襲ってくる混沌とした状態を、考えてみて頂きたい。
(健常人は、日頃考えたことが無いであろうが、)それがどんなに辛く恐ろしいものであるのか、その中で生きていくとは・どういうことなのか。そして、そのような状態のなかで、イアン少年のように、「言葉で表現する術」を手に入れたときの喜びがどれほど大きいかを! 
 本書は勿論、言葉と脳の本であると同時に、イアンと家族の物語である。(ロッキー山脈の麓)コロラドの豊かな自然の中で展開されるイアンと姉と両親の苦闘、涙や喜びを、読者は叔父である著者の目を通して知る。
(日本には同じ境遇の子供たちが多いのに、イアン一家のように・理解ある親族・友人・学校関係者はどれほど居るのだろうか? 多ければ、イジメ自殺の頻発や、大多数の障害者が失業状態などの事態は起きていないはずなのだが)
 ‐‐‐‐‐ ‐‐‐‐‐ このとてつもなく手のかかる弟の世話でへとへとの両親を思いやって、物語の世界に逃げ込むことで・自分を支えている小さな姉のいじらしさに打たれる。理解の無い隣人の仕打ちに(学校には理解ある人々がいても、<日本には受験勉強・塾・予備校至上主義のため居ない?>)に、翻訳者も怒りを覚える。やがて、「ファシリテーティッド・コミュニケーション」という道具を使って語りだしたイアンが、「ぱぱと ままを あいしている」とタイプするとき、多分読者の皆さんと同じように・訳者も目頭が熱くなる。
(日本に普及しているのだろうか、普及の努力は? 障害者の自立を助けようとしている人達はどれほどいるのだろうか? 専門学会は? 理解あるマスコミは?)

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