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だんだん寒くなってきました。
こちら南国でもブルブル震えるぐらいの寒さです。
そんな中、いつものように夜、波戸に出かけました。
私の目の前には隣の島が見えていました。
深い闇です。
月もなく、星さえも雲に隠れていました。
波戸の街灯だけはいつものようにオレンジ色を放ち、
付近の海面だけが明るくなっていました。
10月頃と比べて、何という寂しさでしょう。
小魚の群れも、エイもいません。
ただ、静かな波が波戸をそっと叩くだけです。
そんなとき、私の耳にかすかな人の声が聞こえてきました。
誰だろう。釣り人かな。
そう思っても、波戸には誰一人いません。
私だけです。
じっと耳を澄ましていると、その声は暗い海の方から聞こえてくるではありませんか。
波戸の沖、数十メートルに見えた緑色と黄色の光。
それは小さな漁船でした。
どうやら漁をしているようです。
すると、微かな風とともに歌声が届いてきました。
先ほどの声とは違います。
確かに歌声です。
船頭さんが歌っているのです。
しばらく聞いていましたが、いい調子で歌っています。
低く、それでいて太い歌声です。
演歌ではなく、いかにも船頭さんが歌う感じの曲でした。
なんという風情でしょう。
私はじっと立ち止まり、暗い海を見つめながら歌声に聞き入っていました。
船頭さんから私は見えるはずです。
でも、漁をしているからでしょうか、いつまでも歌い続けていました。
こんな体験、初めてでした。
本当の舟歌を聞くなんて。
漆黒の闇の中のほのかな灯りを眺めながら、離島の情緒に浸っていたひとときでありました。
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