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友人、Madokakipのブログ、Opera!Opera!Opera!上でも何度か紹介されたこの映画、「The Audition 〜メトロポリタン歌劇場への扉」は、NYのメトロポリタン歌劇場で毎年行われているという、オーディションのドキュメンタリー映画です。

いい、いい、と巷で聞いてはいても、上映期間が2週間と非常に短く、上映も限られた劇場でのみ、回数はどこも大体1日1回、という厳しい条件の中では行ける日を見つけるのにも一苦労。今シーズンはHDのチャンスを見事なまでに全て逃し、口惜しい思いをしている私なのですが、ようやく見つけたスロットにどうにかこうにか予定を押し込んで、前日急遽誘った母と2人での鑑賞となりました。

ここのところ仕事にしろ、遊びにしろ、スケジュールが満々な私は、これではもう観るチャンスを失っても仕方あるまい、と半ば諦めていたのですが、何故かこの作品だけは見逃してはならないような気がして前夜思い立って何とかスケジュール調整したのですが、その甲斐ある、余韻の残るいい映画でした。


この映画の内容に関しては、Madokakipのレポ(上映直後)東京国際映画祭上映決定のお知らせ一般公開が決まった際の追加のレポにて詳細が書かれていますから、行った後だけでなく、余裕があれば行く前にも是非お読みになっていただきたいと思います。



さすがにオーディションを勝ち抜いて残ってきた11人であるからこそ、その実力たるや素晴しいものです。
しかし、映画の中で、芸術監督であるジョナサン・フレンドのたった一言がシンプル。
今までも同様のことを思ってはいても、彼のような一流のオペラハウスの芸術監督がさらっと言うその一言は本当に重く感じるのです。

「大切なのは技術ではなくどう伝えるか。」

そう。
技術はある一定以上であれば、というかプロフェッショナルであるということは素人とは完全に違うわけですからある一定以上であるのはある意味当然なことなのですが、技術が優れていても伝えることが出来なければ聴く人を感動させることは出来ないのです。

こんなに技術が優れているのに感動が湧き上ってこない、と今までにも何度かブログでコメントしたことがありますが、やはり伝わってこなかったということが毎回の原因であることは明らか。
多少音が正しいところにヒットしなくても伝わってきた時はそれすらも許せてしまうものなのです。


それにしてもマルコ・アルミリアートって本当、実際もきっといい人なんだろうな、って思いました。
メトで指揮を振っているとは思えないほど、いい感じで力が抜けていてなんだか彼の人柄の暖かい感じが伝わってきます。

マルコだけではありません。
周囲の指導者達が、誰も彼も厳しいながら非常に暖かいのです。

そこで一つ気付いたことがありました。
私が勤務している会社には上司、同僚、部下、360度から評価をもらい、それをまとめ上げたものをその年の評価として上司が部下に伝えるというプロセスがあるのですが、日本人上司は減点方式で「あそこはいいけどここが良くない、もっとそこを伸ばさないといけないよ。」といった言い方をするのに対し、欧米出身の上司は加点方式で「ここは良くなかったけれど、あそこは本当に良かったよ、ここを伸ばすともっと良くなるよ。」といった言い方をします。

前者は本当に凹んでしまうんだけれど、後者の方は注意をされても、「やってやる」という明るい気持ちになるのです。

このフィルムに出てくる指導者達もまさにその通りで、褒めて上げていく、といった同様の方法で、しかも一流の魔法のような指導法にこれまた感嘆。

少しの指導で歌手達が見る見るうちに上達していく様が魔法のようで不思議。ミラクルなのです!

皆それぞれに上手いのですが、全体の中で私はワーグナーを歌ったアンバー・ワーグナー、「ノルマ」から「清き女神」を歌ったアンジェラ・ミード、「連隊の娘」から「メザミ」でハイCをしっかり決めた、madokakip曰くゆるキャラのアレック・シュレーダー、そしてチレアを歌ったライアン・スミスの4人が特に気に入りました。

女性二人はとにかく体格も迫力ですが、伝える力が凄い。そして技術もぴったりついてきています。
シュレーダーは母の大のお気に入りになってしまったようで、見終わった後も『カワイイ、カワイイ!』を連発(笑)。

しかしライアン・スミスのチレア(誰かー、正確な歌のタイトルを教えてください、羊の、、、とかだったような)には大感動。

私は歌っている最中に感動してしまって目をしばたくだけでは済まずに涙が落ちてしまい、思わず指先で拭ってしまいました。

様々な葛藤、人間模様、そして短い期間にもかかわらず最高の指導者達の元、暖かい励ましと的確なインストラクションで更なる成長を遂げていく歌手達の底力というものを目の当たりにすることが出来、改めて世界の舞台に上がる歌手達の努力、底力、しかし芸の道への厳しさを思い知ったのですが、それと共に夢を目指して進むということはなんと素晴しいことなんだろうと改めて感じる、とてもいい映画だったと思います。

歌手達がメトで歌い終わって感極まったのと一緒に私も感極まり、
あまりの素晴しい歌に感極まり、
色んな思いに感極まり、何度も映画を見ながら目をしばしばさせなくてはなりませんでした。

そして、ここに書かれている以外のある出来事をこの映画上映以前に知ったということもあり、冒頭から様々なシーンで様々な思いが溢れ出てきて止まらず、鼻がツーンとなってしまいました。

最後のテロップでも出ましたが、この映画から一年半後の2008年11月、ライアン・スミス氏が悪性リンパ腫でこの世を去ったそうです。

映画の中で彼はいつもいつも楽しそうに笑ってしました。
自己破産してクレジットカードも取り上げられ、歌を続けることが出来ずに歌から一旦は離れた彼。
二年だけ、二年経って芽が出なければ歌手の道は諦めると両親と約束し、歌の道に戻ってきた彼。

素晴しい指導者の下、信じられないスピードで素晴しい歌手へと変貌していった様、
歌い終わってものすごい拍手の中、小走りで舞台の袖に引っ込んだら、ボイスの先生がそのあまりの素晴しさに涙しながら駆け寄り彼をハグして、彼もハグされながらやり遂げた感で満々の笑顔。

そう、歌を愛して愛して病まないという気持ちがあらわれる素晴しい笑顔でした。

彼のボエームも聴きたかったし、
舞台で彼がこれからどういう風になっていくはずだったのかも観たかったです。

残念ながら彼は大きく華々しくこの世に出ることは叶わなかったけれど、こうして人生の一瞬の素晴しさを切り取ったような、こんないいフィルムが残ったことにきっと彼の周りにいた人達は感謝していることだろうと思います。

改めて心よりご冥福をお祈り申し上げます。





さて、神経質でいい小悪人キャラだったファビアーノ君をはじめとする残りの入賞者も、入賞しなかった人たちも各々活躍をしているようですね。
いつかきっとどこかで彼らの舞台にめぐり合って、いつかいつかいつかきっと、また違う感動を得たいものです。




http://www.cdjournal.com/main/watch/watch.php?wno=1200000931
もしかしたら期間限定かもしれませんがここで一部動画が見られます。

抜粋で歌っている順番は以下の通り。(コメントは省きます。)
ライアン・スミス
マイケル・ファビアーノ
アレック・シュレーダー
ライアン・スミス
アンジェラ・ミード
キーラ・ダフィー
マイケル・ファビアーノ
アレック・シュレーダー

、、、、しかしいいテノールが揃ってますね。



さて、このレポをあげる前にコメントくださったFさんご夫妻のご感想も楽しみ。

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