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★ brillat savarin の 麦酒天国 ★
ビール王国2016年11月号(ワイン王国 別冊)より、「ベルギービール解体新書」というコーナーを書かせて頂くことになりました。

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トラピストビールのうち、最も入手困難なものは、シント・シクストゥス(Sint Sixtus)修道院の造る「ウエストフレテレン(Westvleteren)」の3銘柄であることは、ベルギービールにちょっと嵌った方ならば誰でも知っていることでしょう。
緑色のキャップのブロント(Blond:ABV 5.8%)、ブルーキャップのエクストラ(Extra:ABV 8.0%)、イエローキャップのアプト(Abt:ABV 10.2%)の3種類があります。

その価格は、24本当たりブロントは30ユーロ(1本当たり1.25ユーロ)、エクストラは34ユーロ(1本当たり約1.42ユーロ)、アプトは39ユーロ(1本当たり約1.63ユーロ)で、瓶(0.1×24=2.4ユーロ)と木箱(9.6ユーロ)のデポジット計12ユーロがここに加算されます。

このビールは「転売禁止」ということで知られ、建前の上では、個人消費者にのみ直売するということが明示されてきました。実際、売店では6本単位で販売されてもいますが、そこは「敬虔さと現実主義」の妥協というべきか、「転売禁止」といいつつも、修道院は木箱ケース(クレート)で24本単位でも販売しています。ベルギーのボトルショップや日本にまで流入し、高値で取引されているのは、このバルク販売によるものです。

「ドイツ人は哲学を行動に移すから恐ろしい」とは誰の弁だったか忘れましたが、そこを程々に(いい加減に)してしまうところが「ヨーロッパ的な智恵(狡知?)」というべきで、もし本気で「転売禁止」の意志を貫徹すべきならば、最初から24本単位で「まとめ売り」するべきではないのです。

このような態度は、いわば、「敬虔さと現実主義の狭間」というべきもので、――私は、“ウエストフレテレン輸入の博士”を擁護する気はなかったのですが――この「敬虔な教え」は「適度に真面目に受け取とれば十分(笑)」と、このブログ内ではありませんが、意見を述べたことがありました。

この私のアイディアは、さほど的外れではなかったのかもしれません。

「De Standaard.biz」(2011年10月13日付)によれば、このたび、ウエストフレテレンが初めて修道院の壁を越えて、ベルギーのスーパーマーケット「Colruyt(コールレイト)」の全店で2011年11月3日に販売されることが決定しました(写真2枚目)。

その数は、ウエストフレテレン・アプト6本+グラス2個セットのパックが、1個25ユーロで、93,000セットも販売されます(ただし、De Standaard、 Knack、Le Vifの11月2日号のチケットと引き換える必要があります。これはやはり無制限な買い付けを防止する意図があるのでしょう)。

修道士の名誉にかけて付け加えますと、この大量の売り上げは、修道院の全面的な再建に使われるそうです。

さて、シント・シクストゥス修道院併設のビアカフェ「イン・ドゥ・ヴリードゥ(In de Vrede)」では、ブロント、エクストラ、アプトのビールが瓶で飲めます(サーブ後にグラスで運ばれてくるので、「生」だと勘違いされる方も多いが、瓶である)。
私の少ない経験では、ブリュッセルなどで――“転売禁止”を破って――横流しで販売されているウエストフレテレンのほうが、「イン・ドゥ・ヴリードゥ」で飲んだものよりも遥かに美味しく感じられました。

「イン・ドゥ・ヴリードゥ」のウエストフレテレンは回転が早いためか、熟成感が皆無に等しく、アルコール感が尖っており、若く荒々しい印象が強かったからです。こういう一見するとパラドックスに見える現象は、ビールの世界には溢れ返っていますが、冷静に考えれば、パラドックスではありません(ある種の並行品の方が、正規輸入品を標榜するものより美味しいという事は事実としてあります)。

味覚は常に現実的で、敬虔さからは程遠いということを示唆しています。

【参考記事】
Abdij legt trappist Westvleteren in winkelrekken. donderdag 13 oktober 2011.
http://www.standaard.be/artikel/detail.aspx?artikelid=DMF20111013_052

写真:In de Vredeで飲むウエストフレテレン・ブロント

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    「味覚と敬虔さ」…思わずにやりとする、修道院ビールならではの記事ですね。
    私にとっても現実的な問題は、スーパーで販売することで「大量生産→品質の劣化」に繋がらないかということです。もっとも、日本ではウエストフレテレン自体の入手が困難なので、味の判断をする機会すら難しいですが。
    蛇足ですが、2001年購入のブルーキャップが残り一本です。
    10年経ったことですし、今度一緒に飲みましょう(笑)。

    和 醸 良 酒

    2011/10/21(金) 午前 10:00

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  • 和醸さん、仰るように、いかなる敬虔な目的であろうと、大量生産により、我々の味覚を裏切らなければ、と思います。
    これが、煩悩多き人間の祈りです(笑)。

    2001年購入のブルーキャップとは、流石はベルギービール歴の賜物ですね。今度お相伴に預かりたいところです

    [ brillat savarin ]

    2011/10/22(土) 午前 0:08

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    いつぞやは拙ブログで関連のご教示ありがとうございましたm(__)m。
    質低下が無ければ、いくらかでも入手しやすくなるのは歓迎ですね。 削除

    [ Hira ]

    2011/10/22(土) 午前 11:04

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    93,000セットとは思い切りましたね。委託生産なのでしょうか?実際に飲んで違いを確かめたいですね。 削除

    [ silvia ]

    2011/10/23(日) 午前 7:26

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  • Hiraさん、そうですね、幾分かでも入手しやすくなるということがあれば良いかと思います。
    一方、日本に今まで流入していたバルク売りのものは若干減りつつあるようで、そうだとしますと、逆に日本で飲みにくくなる可能性は否定できないと思います。

    [ brillat savarin ]

    2011/10/23(日) 午後 0:47

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  • silviaさん、トラピストビールの性格上、委託生産ということは無いのではないかと思います。
    なお、Westvleterenの年間生産量は4,750hLといわれています。今回の93,000セットで約1,840hL(=0.33*6*93000/100)ですから、計算上、通常の年間生産量の38.7%程度の分量と計算されます。

    [ brillat savarin ]

    2011/10/23(日) 午後 0:52

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    コピペに毛の生えたような内容ですが、言及してブログ記事書きましたのでお断りカキコです(汗)。 削除

    [ Hira ]

    2011/10/23(日) 午後 11:03

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  • Hiraさん、有難うございます。
    ふと松本繋がりのためか、2007年の第1回ウイスキーフェスティバルin東京で、摩幌美の堀内さんにWestvleterenを差し上げたことを思い出しました。
    いつか松本で一緒にWestvleterenを飲めたらいいですね!

    [ brillat savarin ]

    2011/10/24(月) 午後 1:11

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  • ウエストフレテレンは愛知県のリトルワールドで発見したのが初めてでした。意外と珍品があったのが穴場のお土産屋さんで。

    ジン君

    2011/11/4(金) 午前 3:50

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  • ジン君、実に意外なところで売ってたのですね!

    [ brillat savarin ]

    2011/11/5(土) 午後 8:03

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    去年の冬に発表されてから心待ちにしていました。
    私の住むエノー州では、クーポンの付いている雑誌の搬入が遅れて参っちゃいましたよ。
    でも、予想していた通りニュースで朝から並んで山積みのフレテレンが売れて行く姿は、我が家の最寄りのcolruytにはなく、現在も山積みです。
    一人一箱までの制限付きと言っても交渉してみたところ、クーポンがあればレシートを分けさえすれば購入可能でした。
    今回もブリュッセルのお土産屋や、e-bayあたりで高値で販売されるのは目に見えてますね。 削除

    [ mi-wa ]

    2011/11/6(日) 午後 7:02

    返信する
  • mi-waさん、コメント頂きまして有難うございます。この件、去年の冬に発表されていたのですね。知りませんでした。ちょっとエノー州の、少々のんびりした町らしいエピソードですね。
    ebay.beを見ましたら、予想通り、大量に4倍以上の値段で売りに出されていました(笑)。これ、3、4年すると更に恐ろしい値段になるのでしょうね・・・。

    [ brillat savarin ]

    2011/11/7(月) 午前 1:15

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    本年もよろしくお願いいたします。購入1年、1本目を開栓したということでブログ記事書きました。まだまだ熟成が進まず並みの美味しさという印象でしょうか(;^ω^)。1年1本ずつ開けてく予定です。 削除

    [ Hira ]

    2014/1/9(木) 午前 11:38

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    Hiraさん、コメント有難うございます。
    1年ずつ空けていくとは風流人ですね。
    ぜひこのビールに限らず、何か発見がありましたらお教え下さい!

    [ brillat savarin ]

    2014/1/10(金) 午後 11:38

    返信する

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