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母が鬼のように洋裁の内職をしていたって話しは折に触れお話ししていたと思います。
父も実直なサラリーマンでしたが、我ら(娘3人)が、それぞれ自分の部屋を持ち、
高等教育を受けられたのは母の内職のタマモノであると感謝しています。
母の実家は洋裁一家でした。
特に叔母(母の妹)の洋裁は内職の範疇を出ていたので
叔母の仕事が立て込んでくると母は娘3人、叔母は娘2人を連れて実家に帰り
叔母がミシンを踏んで祖母と母とが交互にアイロンをかけ、交互に
かがったり、ボタンをつけたり、シツケ糸を抜いたり殺気立っていました。
オンナばかり5人の孫の面倒を見させれらていた祖父のことも忘れず記しておきます。
これは母がまだ40になる前の話しですが、今でも母は
『昔取った杵柄』で自分の食い扶持程度は稼げる人だと思っているので
母が「後期高齢者保険料が上がった」とか、父亡き後に「年金が半分になった」と
嘆くたび、「玄関先と電信柱、自動販売機の横と病院のロビーに
『お直しいたします』ってビラを貼ってこようか?」
「お父さんの年金の埋め合わせができるかどうかわからないけど、
保険料の値上がり分なんてスカートのホックを2−3個付け換えりゃ即じゃん〜」と
提案しています。
ある時は「一緒にNYへ行こう。アタシが客を取ってくる。
NYのデパートはただですそ直しなんてしてくれないから、おかぁさん
ドル箱稼ぐお直しさんになれるよ」と、提案してみました。
母は私が提案すると決まって「ちょっとちょっとこっち見て?」と
自分を見るように指示し、私が顔をあげると 待ってましたとばかりに
「あっかんべー」と小憎らしく両手で目を下げます。
「やりたくないなら嘆くな!!!」お定まりの母子の会話です。
母は、私がイイトシして何もできないのは、大いに自分に責任がある!と
わかっているらしく、私は毎年帰国のたびに『ポケットの穴埋め』『ファスナー換え』、
『大掛かりなすそ直し』『袖丈直し』など持ち帰ってそのたび怒られますが、
「アーッ寒気がする」とか言いながら、私が付け替えたボタンなども
全部付け替えてくれるのでほんとに有難い事と感謝しています。
母は82歳、現在洋裁は母の趣味です。
大きなものは全く作らなくなりましたが、買ってきたものの襟ぐりを広くしたり、
肩パットをはずしたり、胸のところに2重に布を当ててブラジャーしないで
着られるTシャツなど自分に着易いようにお直しちゃぁ
「アタシってほんと仕事が速い!!おまけに仕事が綺麗だ」と自慢します〜。
この辺の自意識過剰は、82になっても枯れることはありません。
趣味なので、ヒトサマのものにはもはや触りませんが、
相変わらず、母がヒトサマのためにセッセと縫っているのがこのアームカバーです。
デパートで見てきて作ってみたら すごく調子が良くて
見る人が皆「あら いいわねぇー。欲しいわぁ」って言うので
暇さえあれば作って配ってるようです。
「フリーマーケットに持ってって売ってこようか?」と言いたいところですが
母のリアクションがわかってるので黙っています。
アームカバーはリバーシブルです。
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