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日本近代のうねりを扱った読み応えがありました


安彦良和の 王道の狗(全6巻) を読了。

明治期。政治闘争の末席に身を投じていた加納周助は、つまらぬ事件から囚人となり北海道開発で
強制労働されていた。
何とか脱獄にした周助だったが、追っ手から逃れる必要から和人からアイヌへと身分を移す。
加納周助からアイヌ人クワンとして生き始めた男が、明治黎明期を支えた要人たちとの数奇な
出会いから大きな時代のうねりの中に身を投じることになる。
明治期における政治闘争、日清戦争、辛亥革命に関わる男の生き様を描く。


辞書で調べてみますと、
「王道」とは「有徳の君主が仁義に基づいて国を治める政道」であり、
「狗」とは「猟犬・番犬・牧畜犬」とのことです。

主人公である加納周助は日本人であることを捨てたときから、義に生きていきます。
義に生きる彼の前に王道を示す男たちが現れ導いていきます。

アイヌ人・ニシテ、開拓者・徳弘正輝、武道家・武田惣角、朝鮮の開明派政治家金玉均、勝海舟、孫文・・
史実に登場する人物を絡め、主人公の置かれる境遇も激しく変わっていく様がドラマチックで
物語に引き込まれます。

1巻の時点ではアイヌに生まれ変わった主人公が身分差別と闘う物語と思いきや、明治という時代を
壮大に描く大河ドラマに移り変わっていく過程に興奮しました。
日本史が大好きな私ですが、恥ずかしながら金玉均の存在を知りませんでしたし、明治期における
清朝の政情は知っていても、朝鮮半島の事情は同じく知りませんでした。

それだけに教科書からは窺い知れない興奮を感じることができ、明治という時代における人々の
熱さがビンビン伝わってきました。
悪役として描かれる陸奥宗光、李鴻章などにおいても立場の違いからくる反面の正義という視点も
よく理解できる素晴らしい語り口です。

幕末動乱から帝国主義の狭間にある明治期特有の人々の特性もよく描かれています。
ある意味で日本人が一番大きく変革した時代の匂いを感じ取れます。


安彦良和が面相筆のみで描く独特の画風から匂う風土感みたいなものも相まってお薦めの作品です。

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