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かなりの意欲作です


安彦良和の ナムジ-大國主-(全5巻) を読了。

古事記を元に安彦良和が日本古代史を大胆に解釈し綴った大河物語。
スサノオの娘婿であるオオクニヌシを主人公とし、倭国争乱を描く。


最近、妙に安彦良和にハマっています。

そんな中での安彦良和が語る古事記。

一般に「記紀」と並び称される「古事記と日本書紀」ですが、言うまでもなく世界にも類を見ない
万世一系の血脈を保つ天皇家の起源とされる書物です。
端的に言えば、神話です。
神話ですが、その神話で語られる一族の血脈が現存していることに大いなる矛盾と浪漫があります。


さて、本作ですが大国主命(オオクニヌシノミコト)の運命を中心として、非常に大胆な仮説や物語構成で
描かれています。
作者自身のあとがきからも推察できますが、相当に日本古代史について調べ上げ考察した結果を
昇華させた作品であり力作です。

本来、「記紀」に記されてはいない邪馬台国をも絡ませていますが、マンガにおけるフィクションで
終わらず、作者独自の解釈による「仮説」として非常に興味深い物語でした。

その端々まで触れてしまうと収拾がつかなくなりますので省略しますが、記紀に関して多少の知識と
日本古代史が抱える様々な課題を念頭に置きながら読むと、本当に面白いです。


私も一時期、日本古代史に興味を持ち、少しだけ手をつけたことがありますが、すぐに断念しました。
一言で言うと諸説異説が多いんですね。どれを基準にして知識を系統立てたらいいのやら・・・
それこそ大学の先生や古代史マニアでもない限り、混乱が混乱を生むのです。

結局のところ、神話の世界から続いている天皇家というものが現存していることから、肝心なところに
踏み込もうとするとタブーになってしまうからなんでしょう。
他の国にはありませんもんね・・・神話から続く家系なんて。

考古学などにおいては遺跡調査が重要なんですが、日本の場合、その古墳調査自体がタブーです。
加えて、戦前までにおける皇統史観から不敬にもなりかねないので踏み込めない。
(でも、心情的には学問のために先祖の墓をあばかれ科学調査なんかされたくないよなぁ。天皇家も)


そんな空白の時代だからこそ、フィクションの入る隙間が大いにあるし、決して専門家ではない
安彦良和も大胆な仮説を構築できるのだと思います。
そして、それが古代史の一番の魅力でもあるのでしょう。
(確たる資料がないわけですから、素人でも言いたい放題言える余地があるわけです)


古事記などは神話としても非常に面白い物語なのですが、如何せんギリシャ神話などに比べると
取っつきが悪いです。
人名は長いし、読みも難しいし、一人に複数の名前まであるものですから慣れるまで酷く時間が
かかります。


ただ神話がそのまま日本史の起源に繋がるという世界でも希有な物語です。
マンガなどのサブカルチャーが好きな人は神話好きな人も多いですが、意外に古事記を知らない人が
多い。
ギリシャ神話や北欧、インド神話も確かに面白いですけど、古事記を知らずにいるのは単純に勿体ない
と思います。
そんな方々にこのマンガは、とてもお薦めです。


ただ、あまりに大胆な仮説をもの凄く説得力ある構成で描かれているので、この作品を読んだ後は
その辺にある古代史入門とか古事記入門の類を読むと、更に楽しいと思います。

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