|
空き地
この場所は ずーっと 子供のころから 田中君の家だった場所だ
いつの間にか 家はなくなり もう 田中君がどこに行ったのか 誰も知ら ない
勉強ばかりしていた俺には 数少ない 遊び友達で
皆がよくやっていた ベーゴマやめんこはやらなかったが
とにかく よくおしゃべりをした
田中君は 痩せていて ちんちくりんの長ズボンに 古びた下駄を履き
変電所の角の 金子駄菓子店にいりびたって
寒天にストローでアナを開ける競争をしたものだった
よく覚えていないが 何個か以上穴を開けると
10円の金券がもらえたからだ
思い出すと 田中君のお母さんは 俺たちのお母さんとくらべると
かなり 歳を取っていたように思う
たぶん 50台後半にみえた
家に遊びに行くと お母さんはいないときが多く
そんなときは 二人で 煉瓦を拾ってきて小さな竈を玄関前につくり
火遊びをした
田中君は それがばれて ひどく殴られたので
翌日は 顔を腫らせていることもあったが
俺たちは 懲りなかった
大きくなったら 消防士になるのが 田中君の夢だった
「だって 俺 火が大好きだから。」
5時になると いつも俺のうちまで送ってきてくれた
田中君には 門限がなかったのだ
今では どこにいて 何をしているのだろう
勉強もできなかったし 先生の言いつけも守らない子だったから
不良になって 悪い道を歩んだのだと思う
うわさでは 少年院に行って やくざになったとか
顔がかわいかったので ジゴロになったとか
悪い話が多かったが 真相は分からない
なあ 田中君よ
もし 生きていたら また この場所に戻っておいでよ
みんな年取ったんだから 昔のことなんか忘れて
この階段で チヨコレイトでも やらないか
まけたら 銀球鉄砲の弾 一箱もらうよ
だから 帰ってきなよ
また 幼子にもどって 地元で遊ぼうよ
地元には、 最近、古い家を壊して空き地にし、 売り出しているところが多い。 こんなにすみやすいところなのに、 どんどん人が出ていってしまう。 昔の友達の家が壊されると、 とても悲しくなる。
今は、 建売がどんどん建ち、 新しい人たちが入ってもくるが、 あの昭和のわが町は、 もうどこにもない。
時代は 変わっていく。 景色も変わっていく。 何でも 移ろうものだから、 俺たちは 寂しさになれないとやっていけなくなっている。 人生って、そんなものなのかもしれない。
じゃあ またね。
|
散文詩
[ リスト | 詳細 ]
|
ベトナムにも、 綺麗な花は咲く。 あんまり 鑑賞してもらえないから、 後光はさしていない。 スターが輝くには、 観客が必要なのだ。
サイゴンの中心には、 公園が多いが、 その中の一つに、俺が内緒で、 「不忍の池」 もどきと呼んでいる池がある。 小さな池だが、 綺麗なハスの花が咲く。 それでも、 あまり感動しないのは、 やはり 場所のせいだろうか。 それとも、 俺の心のありように 問題があるのだろうか。
花の嘆き
思いっきり 咲いてみたけど
誰もみてくれない
気を引こうと思って 赤く咲いたのに
俺を眺めているのか 一人の老人が
ただじっと 池のふちに座り込んで
視線を漂わせている
水の中の 地獄なんか 気にしていない
気を抜けば 喰われてしまう
ここも 人間の世界と同じなんだよ
そうして 老いてきた人は
それも 考えていない
ただ 何も考えない 頭脳をもてあます
虚無の風が 収穫をぬぐい去ってしまった
荒れた畑のような
美しい者たちよ
あきらめずに そこに咲いていてくれ
俺と一緒に 咲いていてくれ
ずーっと 咲いていてくれ
きっと 君がみにきてくれるから
でも、 どうせなるなら、 大きなマンゴスチンになって、 君にに食べてもらほうがいいな。
じゃあ またね。
|
|
ときどき、 何の脈絡もなく、 昔見た景色や、 遠く離れた人々を思い出すことがある。 俺が 「鍵」 と呼んでいる 物、音、匂いなどに出会うと、 思い出のフィルムが、 回り始める。
フィルムは、 どこか、 くりぬいたように見えるときもあるし、 映画のような時もある。
普段見たら、 なんの感情も移入できない景色でも、 思い出の中の景色は、 限りなく 懐かしく、 意味もなく涙が、 流れてくる。
花色の憂鬱
その男が 生きていた時の
重苦しい 花色の憂鬱が
薄汚れた 南蛮の土地で
少し 濃い 二酸化炭素になって
漂っている
俺の 瞳も 彼を見ようと
誰もあるはずのない 空気の中に
漂っている
生きることがすべてでは ないことは
その男の 曖昧な微笑みで 知ったが
雑踏で 漂う二酸化炭素の姿を読み取るには
随分と時間がかかった
なあ お前よ
俺の純金の 耳かきを貸してあげるから
戻ってこないか
蓮座に座り 成仏している お前よ
もう一度 どぶに浮かんだ蓮の上の 浮世の中を
二人で 彷徨ってみないか
いまなら 俺は 黄色い帽子をかぶった毒蛇も
白くやせ細った 狼も
まあるい鳥のような 桃色の女も
ポリカーボネイトの 透明の鎧も
何でもかんでも 用意してあげる
生きてみないか
もう一度
もう一度 俺と遊ばないか
その 二酸化炭素の塊よ
俺には 分かっている
おまえはそこにいる
実は 仏にはなっていないのだ
じっと いつも俺を見ていてくれる
いいから もういいから 戻ってきてくれ
陽明山でみた 桜の下の 山吹に
限りない 憂鬱が潜むのは
実らない 山吹のせいではない
お前の 亡きが 故である
車窓をぬらす 雨のしずくが、思い出のフィルムを 曇らせてゆく。 やがてゆっくり、 俺は、 現実の世界に戻ってゆくのだが、 その前に、 かつて、よく台湾に一緒に行った その男が見られると 嬉しい。
じゃあ またね。
|
|
今ほしいもの: 計量スプーン 大小
計量カップ
お蕎麦(更科乾麺) 3袋 (ほりぶん)
海苔たま 2袋 (ローソン)
レトルトハヤシ 2個
レトルトカレー 2個
利尻昆布 1袋
ほんだし 詰め替え用 2袋
海苔 2袋
ファブリ-ズ(お茶の香り) つめかえ用 1袋
油こし(保存缶)
チョコレート(倉知からもらえたら。)
お願いにゃー!
これが日本ではあまりない、レタスの茎の漬物だ。 おかゆや、白いご飯によく合う便利な瓶詰め。
うしろのコップが敷いている座布団は、手縫いでつくったコースターだ。 ちょっと歪んでいるが、 可愛い。
イメージは、座布団。 なんて、縫物なども、こなしていたのだが、パニック障害になってから、手が震えることがある。 もちろん老眼もも進んでいるので、糸が通りにくい。 運針で、指を刺す。 年取るのもいいが、 主婦なら賞味期限切れかもしれない。 尽くしてあげたい君も遠くだし、まあ、よしとしよう。
ミシン
縁側の板の間の隅に
足踏みミシンが置いてある
広くもなく 鯉もいないが 庭に向かって
カタカタと ペダルを 踏めば
悠久の時を縫いこむ 雑巾ができる
雑巾は たくさんの埃と 家庭の困難を 吸い込み
ぼろぼろになるが いつまでも この母なるミシンを
拭き続ける
欅の木が 落とす陰が 庭の乾いた土に
シュールな 絵を描いて
その上を 世界をさまよう オランダ人のような
蟻んこが 歩いてゆく
父は 俺を ムースとか、ますらお君とか
名付けて笑うが おれは 家事がすきなので
気にならない
母と台所で すごく時間が この上なく たのしい
日本は 大掃除になるのだろう
年の暮れ だから 雑巾は 活躍する
それを作る ミシンも 活躍する
日常を尊ぶ人間たちも 活躍するのだろう
「おかあさん。 雑巾できたよ。」
いつか 自分が さまよえる日本人になるとは
思いもはせぬ
少年時代
いまだに 雑巾のように生きている
今日も、一日忙しかった。 注文をさばききれない。 みんな、気でも狂ったのか、狂気のように ベトナムに押し寄せる。 将棋よりは、囲碁に似ている
難しさの中で、 雑巾のように働いている。 頭脳の蟹工船 だ。
じゃあ またね。
|
|
酷いことになったものだ。 どうやら、ここ数カ月の間に起きた、突然の「心の爆発」 は、パニック障害らしい。 シンガポールでも、数回あり、この3日で、4回も発作が起きた。
突然 の発汗、 顔が真っ赤になってそのあと白くなる、 心臓がドキドキする、息苦しい、なんだか負の感情がかたまって毒蛇にでも噛まれたようにものすごい不安感、 罪悪感、 息苦しく、 目眩がする。
ーー狂うなら 狂ってしまおう 初めから 普通ではない 人生なればーー
事務所のスタッフが、心配して、横になったらと勧めてくれるが、3分もすると、あれは何だったんだろうという程度の発作であるので、横になっても治らない。
死んでしまうか狂ってしまうかという恐怖もあるが、それよりも、アルツハイマーの前兆ではないかと心配になる。 今日は、午前中は、会社を休む。 あまりにも、不思議な病気だが、ネットで調べると 3%ぐらいの人間が経験する、問題のない精神状態らしい。 が、実際は、ものすごい苦しさだ。
広場恐怖という状態になると、外に出られなくなるらしい。
勇気の方向
壁に掲げた 蛙の縁取りの 時計には
俺の歴史が 表示されている
恥ずかしいことも 誇らしいことも
平等に ただ単に 事実として 表示されている
俺がどこを見るかは 自由だが
パニックが来ると 見えるのは
醜いものばかり 厭らしいことばかり
なあ 神様 俺が嫌いなのなら
どんなに苦しめてもいいが
たまには 絶望を忘れられる 時間を
くれてもいいんじゃないか
変わりばんことは言わないが 喜びも ほしい
絶望の後でもいいから
ハマグリの味のする 罪悪感の塊は
空色の「空」を 携え
俺の小さな精神を襲ってくるが
俺は 耐える
だって 俺には運が付いている
福がある
絶対に 綻んだりは しない
負けはしない
膨大なパニック軍が 俺に 付けを払わせようとしている
俺は 絶対に払わない
ヘップバーンの仮面をかぶった女を
なあ 神様 俺がたらしこんだと 思っているだろう
俺は その時 あんたの 声を聞いた
「やめておけ。」
でも 誤解だ そらは 青くて大きいのだ
知ってるぞ 神様 あんたは いないんだ
今いる 俺がすべてなんだ
ちょっと、 精神に異常が出ている。 今日はごめん。
ーーながらえん いのちもてあまし あらざらん
このよにおもい のこすことなしーー
じゃあ またね。
|




