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こっそり新緑の混じる竹林で落ち葉を拾い集め、売れ残りの芋を焼くこと…30分。

「ぅぉち。…あち。わち…わっちゃちゃちゃ・・・」

焚火に小枝を何度か差し入れると、ズンッと沈むような手ごたえを感じる。手前に引き出すと、真っ黒に焦げた塊があった。大葉にくるまれた”焼き芋”の変わり果てた姿である。『ふーふー』と小声を出しながら息を吹きかけ、程よい温度になった部位に向かって大口でかじりつく。「…うん。うまい!」 見た目こそ悪いが肥えた大地で育った作物である、不味いわけがない。しかし、人は外見を重視する生き物である。これが極上の味わいで、食さない事がこれほどもったいない事態なのだと・・・そう思い知る機会もないまま、今を生きる。そんな人で溢れているのが、この世界。いや、世の理なのだと、改めて考えさせられていた。すると、

”何じゃ、わっちわっち言うやつがおると思ったら・・・っ・・・ふむ?”

くんくん。鼻を鳴らす仕草で僕に向かって近づいてくる。そのまま周囲をぐるりと一周半ほどしたかと思えば、今度は御用聞きでもするかのように両手を交差させた格好で前かがみになり、上品に伺いをたてるかのような姿勢でこちらを下から覗き込んできた。

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”わっちに何か言うことは・・・ないかや?”

何だろう。表情はとても優しく穏やかな”笑顔”なのだが、それはとっても”怖い”気配を発していた。…うん、ほんと怖い。背筋が少しひんやりしてしまった。『残りは夜食にと思ったんだけどね…』少し残念そうなセリフとともに懐から都合4つの焼き芋を取り出し彼女に向って差し出す。どれも小ぶりで形は歪だが、味は今ほど確認したものと同じだろう。

”にししっ、こやつが犯人か。…くふ。これは美味そうじゃ♪”

”ぐわし!”との効果音が聞こえそうな勢いで僕の手から奪い取ると、満面の笑みで一つ二つと食していく。途中”けほけほ…”と喉を詰まらせる場面もあったが、どこに隠し持っていたのか、手にしたジョッキの中身を全て飲み干す勢いで液体を流し込み、無理やり事態の解消を図っていた。素知らぬ顔で再び食事を再開したかと思えば、僕の懐にもう2つ隠し持っていた芋まで探り当て、”こやつらもわっちのじゃ♪”とのセリフと同時、ひょいひょいとその口に放り込む。『あぁぁぁ・・・ぁあぁぁ…』間抜けな声を出してしまった僕を見て少しは悪いと思ったのか、”ご馳走様”の合唱をした後、手指をペロペロ舐めながら僕の膝に腰掛け、背伸びをするようにもたれ掛かりながら囁いた。

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”ご飯にする?お風呂にする??…それとも、わっち???”

ここで最後の選択肢を答えたら彼女はどうするつもりなのだろう・・・そんな事を思いながら『はいはい』と余裕の受け答えを返す。彼女はとても不満げな視線を残しつつも、しばし僕と睨めっこ。・・・そうしたかと思えば”ふぅ…”とため息一つ。”にししし”と聞こえそうな笑顔と共に”この甲斐性なし!”とでも言いたげな”(とても可愛らしい)あかんベー”をして小走りに立ち去っていった。

その後ろ姿は、ひょこひょこ揺れる立派なしっぽに見惚れてしまいそうな、そんな愛らしい姿で、ときおり立ち止まってこっちの様子を振り返って確認する、そんな微笑ましい仕草も混ざっていた。

芋の一つ二つ・・・まぁ都合6つの芋を取られた訳だが、そんなもので彼女の愛くるしさを感じられるのなら安いものである。いや、もうありがとう・・・違うな。ごちそうさま!、そう言いたい。などとひとしお感謝の念を思いつつも、ウエストポーチの蓋を開き、中から秘蔵の(羊の胃をなめした)小袋を取り出す。

『さすがに彼女もこの中身にまでは気づかなかったようだな…』 

焼き芋は全部で10個。最初に4つをこの中にしまっておき、そののちに味見をしていたのだ。食欲の神なのではないか?と疑いの視線を向けたくなるほど彼女の鼻は鋭敏なため、万全を排して警戒したのだが今回は成功のようである。”してやったり!”そう思ったのもつかの間、僅かな重量の違和感を感じてしまう。『ま、まさか・・・』念のため中身を確認してみると、案の定、中身がすり替わっていた・・・

”わっちの鼻を出し抜こうなど、100年早いわ♪”

そう書き記したメモと一緒に、形が不均一な、でも一生懸命作ったんだと見て取れる、そんな”御結び”が4つ入っていた。”いくら旨くても芋ばかりじゃ身体を壊してしまうもんじゃ”そんな事を昨晩彼女と話していたのを思い出す。具材は”りんご”、”ぶどう”、”塩レモン”、”塩バター”という変わり種ばかりであったが、意外と・・・いや、やっぱりというか、ちょっと癖のある、そんな大味な御結びであった。

食べ終わって包み紙を丸めて捨てようとした際、メモがもう一枚入っていたことに気づく。”御結びのように・・・” そこまでを読んだところで、不意に背中に嬉し恥ずかしいような、重さと暖かさを感じる。一呼吸の間を置いたあと、その文面の続きが背中越しに聞こえてきた。

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”わっちのことも、早う・・・食べてくりゃれ♪”

『うあ、…ちょ、ま、・・・って。』と、あたふたしている間に押し倒され・・・そうしたいちゃこらした日常が、もうしばらく二人の間で続きました・・・とさ。






(・・・続く)



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