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10Kmくらい沖合いに出ると、御前崎の陸地も全く見えなくなった。伊豆側も見えないから、ここからは何時間にもわたって完全にコンパスだけを見続けて漕いでいくことになった。
風は、南東から吹き始め、次第に南風となった。風の強さは時間が経つにつれ強くなっていった。不安は募っていく。
はじめのうちはGPSが表示している現在のシーカヤックの時速に、一喜一憂をして、そのスピードを維持しようとして無理にスピードを上げようとしていたが、次第にそれが無駄なことに気がつきはじめ、どうでもよくなってきた。むしろ移動している時の通算の平均時速の方に気持ちがいくようになって、疲れないペース配分ができるようになってきた。しかし自分で言うのもなんだが、根っからの生真面目さが出てしまい、平均速度すらも2〜3時間かけて0.1Km上げようとがんばってしまう自分なのであった。だからGPSも次第に見なくなっていった。ひたすらデッキコンパスを見ながら漕いだ。
漕いでいる時は、肉体は全力で漕ぐ動作を続けているが、頭の中は全く別に作動し、様々なことを考えていた。その中の一つに、海流を外すのに北西に7Km移動したのだが、実際に北にはどれくらい移動したのだろうってことだった。そこで漕ぎながら、中学生に戻って数学の問題を解いてみた。
実際は異なるのだが、北東への正確にまっすぐ7Km移動したものと仮定し、ピタゴラスの定理より
xの2乗 + xの2乗 = 7の2乗
2xの2乗 = 49
xの2乗 = 24.5
x = √24.5 24.5を約25と仮定すれば
x=5
よって、北西に7Km移動すれば、真北に5Km移動したこととなる。そんなことなど、頭の中で考えていた。
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横断中、様々なことがありましたが、ここでは省略します。いつの日か、さらに詳細な発表が出来る機会がありましたら報告いたします。それまでお楽しみに)
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波、風ともどんどん上がってきて、気力・体力ともに消耗し尽くして、フラフラの状態で15時20分9時間ちょうどで、ようやく雲見に上陸した。
携帯電話でカミさん、海上保安庁に無事伊豆に到着したことを連絡して、塩島さんに雲見に着いたことを、携帯で報告した。
塩島さんが車でピックアップに来て下さって、その後下田でえんどっちさんや、ひげたきさん達と宴会をしてもらい楽しいひと時を過ごした。
あまりにも楽しかったので、毎日無事上陸したことを書き込んでいたインターネットの掲示板に、横断が無事成功したことを書き込むことを忘れていた。宴会のさなか掲示板を見ている人達が心配するのではないかと思い出し、6時半頃慌てて横断成功の一報の書き込みをした。
その夜は、爪木でキャンプ、ゆっくりと寝た。
相良町須々木 6:20 〜 松崎町雲見 15:20 54.55Km
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