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小野湖山と橋本蓉塘

 『江戸風雅』第四号に、板倉環女史の「橋本蓉塘年譜稿」が掲載されている。これを更に充実させるべく、私が年来作製中の「小野湖山年譜」の内から、蓉塘に関する記事を抜き出して挙げておく。

 明治十三年(一八八〇) 庚辰 六十七歳
 ○九月、橋本容塘の『容塘詩鈔』(二巻二冊、明治十四年二月刊、翫古齋蔵板)に批評を施す。該書巻末に批語が載せられる。その訓読文は次の通り。
  往年、塩田随齋、大沼枕山の詩に序して曰く、子寿は天下の奇
  才なりと。当時之を非とする者曰く、天下の奇才は、是れ司馬
  懿、孔明を評するの語、以て子寿を評するべからずと。余、之
  を解して曰く、孔明は固より天下の奇才なり、子寿も亦た天下
  の奇才なり。但だ其の功業と詞章とに、大小の異有るのみ。今
  静甫の詩を読む、因りて之を評して曰く、静甫の詩に於ける、
  実に天下の奇才なり。随齋の語に於いて、之於詩の三字を補は
  ば、人其れ之を許さんか。
   庚辰九月  湖山老人潜評(巻上)
  余、静甫の詩二巻を読み、徹頭透尾、唯だ賛嘆有るのみにして箴規無し。下問に答ふるの誼を欠くに
  似たり。乃ち一棒を下し、喝して曰く、士衡は多きを患ふと。
   庚辰秋晩、於木犀香深処  湖山老禿長愿妄評(巻下)

 静甫は、蓉塘の字。巻下の批語は、天下の奇才だが、晋の陸機のように才が多いのが却って欠点だ、と言う見解である。湖山の各詩に対する評は、枚挙に堪えないほど多いが、中で湖山自身に関するもののみ挙げておこう。

  清人郁東堂の悲歌六首、余、青年の時に、愛して之を誦す。今
  猶ほ忘れず。

  往年、亡友遠雲如に墨水三十律有り。近日、関痴堂も亦た十数首を作る。余、此の什を併せて一集と
  為し、以て墨上の勝に添えんと欲す。(「東京嬉春詞三十首」録九に対して)

  余、六言詩を喜ばず、然れども此の詩の如きは、亦た大いに喜ぶべきを覚ゆ。

  亡友遠雲如の詩、一種風調の美有り、星(巌)翁毎に之を称す、而れども其の病は腹笥の乏しきこと
  に在り、時に雷同を免れず。翁も又た之を言ふ。今、静甫の詩は、其の美有りて、其の病無し。余、
  恨むらくは星翁をして之等の詩を一読せしめざることを。(「冬日雑感三十首、録七」)

  余も亦た往年に喜びて七律の秋日雑感・冬日雑吟等を作ること、少なしと為さず。今、高作を読む
  に、一切其の稿を焚かんと欲す。(「冬日雑吟三十首」)

  余も亦た深く槐南の才を愛し、贈ること有らんと欲すれども、未だ能くせず。四首殆ど尽くせり。蓋
  し静甫の筆に非ざれば、槐南を尽くすこと能はず。余亦た何をか云はん。(「槐南に贈る、四首」)

  余、嚮に池塘に寓すること一歳余、数ば星翁の十律に和せんと欲し、反覆吟翫、終に能くせずして止
  む。今、此の和什を読むに、風神閑雅、格律厳整、略ぼ原作に譲らず、。而して其の成るや咄嗟の間
  に在り。吁、余の静甫に推服する、豈已むことを得んや。(「小西湖雑詩、追って星巌翁の氷華吟館
  題壁の韻に次す、十首」)

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年譜を発展させ、蓉塘周辺人物の交流から、幕末維新期における歴史事実の発掘を目論みましたが、目標が高すぎたようで、資料の山に埋まっています。基礎資料の整理分析に戻り地道に書いてみます。ご教授ありがとうございました。

2011/10/4(火) 午前 11:29 [ 多 麻記 ]


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