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 お待たせしました。『江戸風雅』第六号は、六月中旬に刊行の予定です。以下に、編集後記を掲げます。

 御愛顧のほど願い奉る。


   ○第六号編集後記

 徳田武「頼春水の新出文章」は、広島市立図書館浅野文庫所蔵の与楽園叢書に収まる『春水詩文稿』の内、刊本『春水遺稿』に収録されていない詩文を紹介し、春水の伝記や思想などを明らかにするために資する、という意図のもとに、今回は、安永二年の「黄鳥図に題す、萱君誉の為にす」と天明五年の「洪水記事五条」を取り上げたものである。ともに訓読と現代語訳を掲げ、その意義を簡単に述べた。

 徳田武「上田秋成と『国府台戦記』―「修羅の時」の共用―」は、天文六年十月の小弓(おゆみ)公方(くぼう)足利義明の北条氏綱・足利晴氏連合軍に対する敗亡を記した戦記である『国府台戦記』に、『雨月物語』の「白峰と「仏法僧」執筆に刺激を与えたであろう部分があることを紹介し、とりわけ義明の若君が「修羅の時」を告げられて修羅に赴く結末が「仏法僧」のそれと類似し、両者共に「修羅の時」という句を用いている点にその証左を見る、というものである。そして、秋成が「浅茅が宿」執筆のために関東の戦乱を扱った軍記を調査していた、という可能性に言及した。

 徳田武「『南総里見八犬伝』論―領土獲得の予兆―」(一)は、読本は典拠の文学であるという、当然にして、しかもなおざりにされがちである観点を、あらためて基本原則として『八犬伝』全編を論じようと意図するもので、今回は、第一輯序と第一回を取り上げた。従来知られている典拠を確認し、新たなそれを加えた上で、第一回の性格を里見の領土獲得を予兆しているもの、と観た。特に義実の竜論に就いては、従来、出所の確認がおろそかにされていたのを、煩を厭わず昭代叢書「竜経」、『五雜組』『潜確居類書』などに就いて明らかにした。

 徳田武・神田正行「曲亭馬琴『傾城水滸伝』第五編 翻刻と影印」は、大箱(原作の宋江)による義太吉(閻婆惜)殺しに始まり、竹世(武松)の虎退治、そして西門屋の阿啓(西門慶)と金蓮介(潘金蓮)の姦通譚を経て、竹世による復讐へと至る。『水滸伝』の中でも名高い場面の連続であり、馬琴は数年後に同じ武松の物語を、『新編金瓶梅』においても翻案している。両作を読み比べてみるのもまた一興であろう。

 徳田武「『三遂平妖伝国字評』を評す」は、元来は、一九九三年八月から九月にかけて中国北京市の香山飯店において中国社会科学院文学研究所が開催した国際中国古代小説検討会で発表した旧稿「評滝沢馬琴『三遂平妖伝』提要」(『中国小説国際検討会論文集』、一九九六年七月、開明出版社刊。中国語)を、このたび大幅に増訂したものである。その会場で上海の復旦大学の中国語言文学研究所教授黄霖氏からいきなり「あなたの論文を読んだ」と声を掛けられて驚いた覚えがある。馬琴の名がこの著名な中国文学理論研究者に知ってもらえたのは、嬉しい事であった。本論は特に、馬琴が『平妖伝』の二十回本を評価していたこと、主人公の名前永児に就いて特異な意見を有していたことなどに就いて論評したものである。

 小財陽平・長田和也「植木玉僉慇庄愧飮淹譟拮昭瓠焚次法廚任蓮∩姐罎飽き続き、玉僉慇庄愧飮淹譟拜柑綾充鵑慮緘晶集渕鵑北注を施している。鮎歌、鳴子瓜、淀橋の水車といった新宿の風物を散りばめながら、男女の情態を詠じた作品に佳作が多い。また前号よりも語釈の用例が充実している。ことに第二十四首の、白居易の「売炭翁」との関連は、いささか勢いが良すぎるふしもあるが、これを典拠とする説は肯綮に中っている。

 徳田武「安積五郎の『東海文稿』」は、尊皇攘夷の志士として有名な清川八郎(新撰組の前身新徴組のまた前身たる浪士組の創設者)の盟友である安積五郎の東条一堂塾における在りようや八郎との交友ぶりを、その自筆稿本『東海文稿』の内容を紹介しつつ窺ったもので、五郎が漢学者としてもなかなかの水準に達していたことを説いたものである。その結果、ペリー来航以前の漢学書生の大平な生活と意識とが相当に明らかにされたであろう。

 徳田武・小財陽平「訳注『明治詩話』(四)」は前号に引き続き、結城凡鳥、赤松半牛、大沢東軒、土屋鳳洲、小林渓水、奥谷渟蘇、板橋雲山、佐野竹軒、釈蘭谷、釈伏堂、津田聿水、奥田丘村、瀧川菊浦、筒井秋水の部分の現代語訳を収める。詩酒に沈湎し、自宅が火事になっても平然として酒を呑んでいたという豪放無頼な結城凡鳥の生涯を皮切りに、今ではあまり知られていない十四人の詩人を紹介する。

 黒川桃子による拙著『朝彦親王伝』『会津藩儒将 秋月韋軒伝』の紹介は、同人がこの種の文章を善くするので、依頼したものである。

   平成二十四年五月十日
                                徳田 武




『江戸風雅』 第六号
     平成二十四年六月一日
発行所 〒一六八‐八五五五
     東京都杉並区永福一‐九‐一
     明治大学和泉校舎 徳田武研究室

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