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嘉永三年十月頃、平戸にて家に寄せる書簡を作った。その際の詩が次のようなものである。

 寄家       家に寄す

欲裁短楮附双魚  短楮(たんちょ)を裁(き)りて双(そう)魚(ぎょ)に附(ふ)せんと欲(ほっ)し
情事万般逐次書  情事 万般(ばんぱん) 逐(ちく)次(じ)に書す
却想家庭坼緘日  却つて想う 家庭 緘(かん)を拆(ひら)くの日
爺嬢聚首遠思余  爺(や)嬢(じょう) 首(こうべ)を聚(あつ)めて 遠く余を思わんを

短い書簡を作って郵送しようと思い、
あれこれと状況を箇条書きにして伝えた。
我が家で封じ目を開く折に、
お父さんとお母さんが顔を寄せて読み、遥かに私を偲ぶことだろう。

〇韻字 魚・書・余(上平声六魚)

〇 双鯉に同じで、書信のこと。古楽府に「客遠方より到り、我に双鯉魚を遺る、童を呼びて鯉魚を烹(に)せしむれば、中に尺素の書あり」とあり、鯉の腹の中から出たという謂れに基づく。〇爺嬢 父と母という唐代の俗語。杜甫の「兵車行」に「爺嬢妻子走りて相送る」。

 独り遠い異郷に在って異客と為り、今頃はきっと家族が自分の事を思っているであろう、と想像するのは、唐の王維の七絶「九月九日、山東の兄弟を憶う」の転結句「遥かに知る兄弟高きに登る処、遍く茱萸を挿(さ)すも一人を少(か)くを」以来の定型である。


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