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嘉永四年四月六日、箱根を越える。 松陰は言う、「筥(ばこ)根(ね)嶺は上下八里許(ばか)り、道嶮にして泥滑(なめら)かに、人踣(たお)れ馬仆(たお)る、所謂(いわゆ)る天険なるものなり。戯れに小詩を作る」と。 風波起平地 風波 平地に起り 荊棘塞通衢 荊棘(けいきょく) 通衢(つうく)を塞(ふさ)ぐ 誰謂箱根険 誰(たれ)れか謂(い)う 箱根は険なりと 請嘗観世途 請う嘗(こころ)みに 世(せい)途(と)を観よ 風や波が平地に起り、 荊(いばら)や棘(とげ)が通り道を塞ぐ。 箱根路は険しいというが、そうだろうか。 ためしに人生行路を見てみたまえ。(もっと険しいよ) 起承の二句が対をなす対起こりである。箱根路と世の荒波を対比した思い付きを詩にしたので、その軽さをみずから「小詩」と称したのである。
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