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 三 月性の長詩

こうして月性の詩学が深いことを認めた松陰は、転じて、一月後の安政二年十一月一日、月性宛て書簡では、周防国遠崎に在る聾僧黙霖を紹介してくれるよう頼んだ後に、更に、

 詩稿一冊、録上仕り候。御呵正の儀、伏して願ひ奉り候。霖師へも同様御頼
 み仕り候。旧稿も一并に御改制御贈廻待ち奉り候。時事の感、千百啻ならず、詩中にも十一を著はし
置き候間、御一咲祈り奉り候。

と、自分の詩稿を月性に送って批正するよう依頼することになるのである。

 月性がこの松陰の詩稿を読んで、その読後感を総合したともいうべき大長編「贈二十一回猛士在野山獄中」(二十一回猛士の野山獄中に在るに贈る)を安政二年十二月十日に松陰の兄の杉梅太郎のもとに送ったことは、「贈正四位月性上人年譜」(立泉昭雄編)に記されている。一方、松陰は、間近い十二月十五日に野山獄幽囚を免ぜられたのであるが、早速それを読んだことは、同二年十二月二十二日、兄杉梅太郎の名に仮託して出した月性宛て書簡に、

 御贈与の盛篇、返復吟詠、大手筆、二十一回猛士此れを得て、死して不朽との事、

とあることによって知られる。松陰は、月性の毎句押韻の長詩全八十韻を読んで大感激したのである。即ち、該詩は安政二年十一・十二月の交に作製されたであろうことが判明するのである。
この詩の訳注には吉富治一のものがあって、なかなか力作であるが(『維新の先覚 月性の研究』)、ここには私がこのたび作製したものを挙げておこう。

  君不聞輿地球周九万里  君聞かずや 輿地球の周 九万里
  航海諸蛮由一水   航海の諸蛮 一水に由る
  大火輪船旋転駛   大火の 輪船 旋転して駛(はや)し
  輾波千里猶弾指   波に輾ずること千里なるも 猶お指を弾(はじ)くがごとく
  東海西洋無遠邇   東海 西洋 遠邇無し
  通商拓土不窮已   商を通じ 土を拓きて 窮り已まず
我国神山環海峙   我が国の 神山 海を環りて峙(そばだ)ち
絶壁暗礁天造塁   絶壁 暗礁 天造の塁
皇基頼固三千紀   皇基 頼いに固し 三千紀
未受外蛮凌辱耻   未だ受けず 外蛮の凌辱の耻
  東海墨夷素蠢爾   東海の墨夷 素より蠢爾
  近請幕府開互市   近ろ幕府に請いて 互市を開く
  千年綱紀一朝弛   千年の綱紀 一朝に弛み
  遂割神州養犬豕   遂に神州を割きて 犬豕を養う
  豆州南港霜田涘   豆州の南港 霜田の涘(きし)
  人禽雑糅相接趾   人禽 雑糅して 趾(あと)を相接す
  海内多難従此始   海内の 多難 此より始まり
慷慨何人不切歯   慷慨して 何人か 切歯せざらんや

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