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九月二十二日、「毀誉は外に在る的(もの)なれば、安(いず)んぞ能く避け得ん。只だ自修何如(いかん)を要するのみ」と抄録されているのは、『伝習録』下の五五の本文であり、毀誉褒貶にこだわることなく、修業すべきことを説いたものであることに、松陰は感銘したのであろう。この毀誉褒貶にこだわらない、という態度は、その後の松陰の過激な行動に通じている所がある。

同じく九月二十三日、『伝習録』を読み、「時々刻々、須らく一棒一條の痕、一掴一掌の血なるべし」(下、一三一)を抄録している。これは、聖人とならんとする心を立てるためには、四六時中、棒で打たれてその痕が付き、張り手を受けて手のひら様の血が付くほどの覚悟を持ってこそ、陽明の講話を聴くことができる、茫々と日を過ごしているのでは、一塊の死肉のようで、打たれても何の痛痒も感じず、旧套から脱しられない、という意を表わす。松陰は、日々刻刻、血の滲むような精進ということに感銘して、これを抄録したのであろうが、その事は後年、松下村塾で生徒を教える際に参考にされていたかも知れない。

 かくして、九月十四日に葉山佐内から借りた『伝習録』三冊附一冊、『大學古本旁釈』一冊を、ほぼ十日間で卒業している。熱心に読んだと言えるのである。

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