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   帰宅

ついに松陰は、脚を萩に向ける。

十二月二十六日、久留米を発し、内野(福岡県飯塚市内野)着。

二十七日、内野を発し、小倉(北九州市小倉区)着。

内野を発す
杖底天辺万畳山  杖底(じょうてい) 天辺(てんぺん) 万畳の山
眼明遠近最高山  眼に明らかなり 遠近 最高の山
昨過冷嶺送温嶽  昨は冷(れい)嶺(れい)を過ぎ 温(おん)嶽(がく)を送り
今日又迎国見山  今日 又た迎う 国見山

杖の下方も天空も幾重にも重なる山ばかり、
遠くにも近くにも非常に高い山々が眼にも鮮やかに見える。
昨日は冷水(ひやみず)峠を過ぎ、雲(うん)泉(せん)岳(だけ)を見送り、
今日はまた国見(くにみ)山を迎えることだ。

 二十六日の日記に、「この所にても尚お温嶽をみる。また佐(さ)嘉(が)・柳川より遥観せし山は印ち冰(ひや)水(みず)嶺(とうげ)なり」という景を詠じた。寛政八年(一七九六)、頼山陽が十七歳で詠じた六言絶句「石州路上」(『山陽詩鈔』一)に、「今朝杖底の千岩は、昨日天辺の寸碧」という。昨日と今日とを対比し、下方と上方とに視線を遣るという山陽の句法を取り入れたものである。また、意図的に「山」という韻字を三度繰り返して、その重層感を出そうとしている。

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