ジャーナリスト堤未果のブログ

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「都知事選の重み」

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           「都知事選の重み」
                     ジャーナリスト 堤 未果
 
 安倍政権の今後を大きく左右する、東京都知事選へのカウントダウンが始まった。
 
 世界が注視しているのは「原発問題」と「オリンピック」だろう。
 80億ドル以上の膨大な資金がつぎこまれる東京オリンピック。
 開催都市に選ばれるプロセスの中でIOC(国際オリンピック委員会)が懸念したのは、いまだ収束していない福島第原発による影響だ。
 これに対し日本側は「原発はコントロール下にある」という総理の言葉で開催地競争に勝利した。だが根拠のない安全宣言では世界の科学者や専門家の指摘するリスクは払しょくできず、国際社会の中での信頼性や報道の自由度ランキングは顕著に下がり続けている。
 
 もう一つ疑問の声が上がっているのは、日本政府が事故後も推進し続けている原発輸出や再稼働政策だ。
 シカゴ在住の経済アナリスト、マイケル・フィッシャーマンは、日本政府がインドとの間で進めている原子力協定交渉についてこう指摘する。
 「果たして日本の国民は、原発に関するインドの法律について知らされているのだろうか?」
 
 2010年、インド政府は世界でも珍しい、インド国内の原発事故における責任を原子炉メーカー側が負うという法律を成立させ、世界の原子炉企業群を震撼させた。
 アメリカ大手原子炉メーカージェネラルエレクトリック社のCEOであるジェフリー・インメルト氏は、同法がインドでの原発ビジネスのリスクを一気に高めたと指摘している。
この法律が施行されている間は、GE社はインドでの原発ビジネスに着手する事はないだろう。そんなリスクを取る事は論外だからだ」
 
 だが日本政府は「世界トップクラスの日本の技術をアピールできるチャンスだ」と余裕の姿勢を維持、リスクについては一切言及していない。
 
 「原発問題」は国政課題、都知事選には関係ないと言う声がある。
 だが本当にそうだろうか。
 スウェーデンの国家予算に匹敵する13兆円超の予算編成権を持ち、47都道府県中唯一国からの「地方交付金」をもらわない東京都。
 GDP(国内総生産)は世界の自治体でもトップの91兆1390億円で日本全体の五分の一を占め、経済規模はメキシコや韓国を超えている。
 東京電力の大株主であり、福島第1原発からの最大電力受給者である東京都が「全国知事会」を通して発信する方向性に他県が追随すれば、日本全体のエネルギー政策に大きな影響を与えるだろう。
 
 原発やオリンピックだけではない。東京都知事は、1千万人以上の暮らしとその行方も左右する立場にいる。
 
 思えば1999年に始まった石原都政下で、都の福祉は次々に切り捨てられてきた。23区の餓死者は倍以上になり、都立病院は統廃合と民営化が進められ、医師の給与は全国自治体病院中最低レベルに据え置かれたままだ。福祉削減のあおりを受けた待機児童問題は、女性たちの肩に重くのしかかり、都営住宅増設廃止は高齢者と低所得者の行き場を奪っている。 消費税増税は、増え続ける年収300万以下の層を直撃するだろう。
 
 もう一つ批判の声が強いのは、今まで都が進めてきた「教育改革」だ。
 98年に208校あった全日制都立高は12年には176校に減少、中堅以下は「進学校」として統合され、成績が中位以下の生徒の行き場は激減した。夜間定時制学校と聾唖(ろうあ)学校および寄宿舎は約半数に減少、弱者への受け皿は次々に切り捨てられている。
 生徒たちだけでなく、教職員への管理体制と厳罰化も進められた。職員会議での挙手と採決が禁止され、代わりに「指導教諭制度」を導入、卒業式や入学式での国旗への起立と国歌斉唱が義務化され、従わなければ違反した教員への処分だけでなく、同僚全員が連帯責任」校内研修を受けさせられる。深刻化する教師の病気休職者数増加に歯止めをかけなければ、今後もしわ寄せはますます子供たちに向かうだろう。
 
 さらに今後安倍政権下の「国家戦略特区法」で教育の市場化や労働基準規制緩和が実施されれば、こうした現状は間違いなく加速する。
 
 いのちと暮らし、そして国の未来までも左右する重い一票が、都民の手の中にある。
 
(北海道新聞 2月7日 連載「各自核論」掲載記事)
  
 
*この記事を含め、各自核論で大変お世話になった同紙の池野編集委員に対し、心からご冥福をお祈りいたします

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