2011年3月11日東北地方を襲った東日本大震災に見舞われた宮城県名取市閖上の酒蔵で、津波に洗われながら奇跡的に流されずに生き残った生原酒「宝船 波の音」の泥つき一升瓶を、昨年5月に見舞いに訪れた折に一本頂ただいて帰った。新幹線の中をバッグに入れ抱きしめて東京に帰って来たのだ。
あの日から満一年目に当たる今月3月10日から11日にかけて、若い友人と二人で祈りと共にこの奇跡の酒の栓を開けて共にしみじみ味わった。造り手の酒蔵の当主からは「火入れしていない生のままの原酒で、瓶詰めしてから丸一年以上たっているので味は保証できない。」と言い渡されたのだが、瞑目しながら味わった「浪の音」の味わいは、かってのあの閖上の海よりもさらに濃密、豊饒、饒舌で円熟した滋味に満ち、さらに言えば官能的でさえあり、二人は新たな奇跡にしたたかに酔った。
当主の子供達が仙台市内の他の蔵を借りて、新しい酒「宝船 波の音 純米酒 閖 (ゆり)」を造り売り出したと、先日書いたがこの小さな蔵の復興を祈るや、切にである。
|