誰がブタやねん

取り留めのない事をだらだらと書いています。

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なつ

 6月も終わりに近い26日という異例の遅れで梅雨入
りが発表されました。来週末は土用丑ですから、梅雨
明けも近いでしょう。
 いつからか静かな耳障りが聞こえていて、書類から
目を放すと其れはセミの声だと気付いた。

 何年前のことだろうか。「和宮様御留」がハードカバ
ーで出版されるやすぐに購入しました。
主人公の「フキ」の心細さは私自身を支配し、読み終
えるまでの数日を物静かに過ごしました。セミの声を
聞くと、あの時の気分が蘇ってしまう。

 子供達には待ち遠しい夏休みがすぐそこまで来てい
ます。私だけでしょうか、心が浮き立つのはそれの始
まりまでで、それからは残りの日数を数えるばかり。
日毎に憂鬱が募っていきます。

 子供の頃。それは半世紀ほど昔のこととなりますか
ら、何ともお恥ずかしい年齢になってしまいました。
 大手企業の社宅に住んでいました。引き戸の玄関が
あり、障子で仕切ったその奥に居間がありました。夏
は前も裏も開け放しますので、間に衝立(ついたて)を
立てて視線を遮っていました。簡素な部屋割りです。
おもては草原(くさはら)で、三角ベースの野球が出来
るほどの広さがあり、裏には30坪ほどの庭がありま
した。
 アスファルトは殆ど普及していませんでした。だから
でしょうか、真昼でも、草木の香りを抱いた風は涼し
く吹き、時には強く、衝立を倒すこともありました。
草いきれ、木立ちのセミ、キリギリスもまだいました。
あの頃の夏の音と夏の匂いです。
 草原の外れに稲荷社があり、大きなクスノキが1本。
夏でも冬でも「サワサワ、サワサワ」と葉擦れの音を
奏でていました。子供の頃の思い出には必ずこの音
が聞こえています。

 セミの声が止みました。
天井エアコンの吹き出し音がうるさい。
エレベーター前の踊り場に行き、外のようすを覗(うか
が)う。
海岸沿いの煙突の白煙が真っ直ぐに登っている。
山側の空は墨を流したような、おどろおどろしい姿に
なっています。
煙が棚引くまでは降っては来ないでしょう。そう思う短
い間にも黒雲はこちらに迫って来ている。

 突然の夕立にも「はっ」とする感動を覚える時があ
ります。
季節と言う自然が見せてくれる姿は、もしかしたら全
てが美しいのかも知れない。

 今、心の中のどこかで激しい雷雨を待ち望んでいま
す。

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