ここから本文です
三輪山裏

書庫全体表示

2018412日、衆議院第一議員会館の国際会議室にて「世系に基づく差別撤廃のための国際シンポジウムー国連と市民社会の協力―」が開催された。日本、南アジア、アフリカ西部を含み、世界各地に存在する世系に基づく差別の撤廃は国際社会の大きな課題であり、国連は昨年「世系に基づく差別撤廃のためのガイダンス・ツール」を作成して、国連の活動に反映させることを決めた。「誰も取り残さない」ために、「ジェンダーに基づく暴力」をこれ以上見過ごさないために、世系に基づく差別撤廃について国連、世界のNGO、日本の市民社会と共に考えるシンポジウムが開催された。

イメージ 1

まず初めに、ガイダンス・ツールの草案者の一人である国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のミシェル・ブトーさんが基調報告を行った。「人種差別撤廃委員会(CERD)2002年にカーストおよびそれに類似する地位の世襲制度が世系に基づく差別であると結論づけ、いかなる法律、政策または実務も、人種、皮膚の色、世系および多くの事由に基づいて差別を行う目的または効果を有しないとする一般的勧告が出されたにもかかわらず、多くの国がその取り組みを行っていない。差別が続くのは国が義務を遵守していないから。世系に基づく差別に焦点を当てたOHCHRの取組みは2011年に始まった。バングラデシュ、インド、日本、ネパール、スリランカなど、これらの地域の国々の市民社会による関与があり、国連、各国政府および地域機関の関与を進めていくための戦略を発展させる機運が高まった。数億人の人々の苦境を、古来からの伝統によって正当化することはできない。世系を共有する集団に属する人々が発言権を持ち、これらの人々のエンパワーメントを目的とする戦略の策定、実施および評価に、そして自国の問題に平等な立場で全面的に参加していけるようにするため、一丸となって、そして政府とともに、創造的に取り組んでいく道を見出しましょう。」
次に国連から人種差別撤廃委員会(CERD)委員のリタ・イザック・ンジャエさんの報告があった。「カースト及び類似のシステムに基づく差別は、世界的な現象であり、世界中で25,000万人を超える人々に悪影響を及ぼしている。この深刻な人権侵害は、普遍的な人間の尊厳と平等という基本原則を侵害するものである。あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(ICERD)は、世系に基づく差別に対する保護について、主要な法源を規定している。条約第1条第1項は、人種差別を「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限または優先」と定義している。ICERDの履行監視の任務を負う機関であるCERD1996年以降、「世系」をカースト及び類似の地位の世襲制を含むものと解釈し、2002年の一般勧告によって確固たるものとなった。ガイダンス・ツールは、諸国家が職業と世系に基づく差別を明示的に禁止する法的枠組みを構築・履行し、国内や地方レベルで、不可触制と隔離の廃止を実行するために行動計画を確立するための具体的な勧告を定式化している。この草案はまた、影響を受けている集団について調査・研究を実施すること、多様な分野における職業と世系に基づく差別と闘うことを諸国家に勧告している。」
引き続き、アジアからアジア・ダリット権利フォーラム(ADRF)のポール・ディバカーさんから南アジアのダリットと、カーストに対処する国内メカニズムについての報告があった。そして、これからの展望として、ガイダンス・ツールが南アジアのダリット集団の参加と、これらの集団に対する開発資源の平等なまたは比例的な配分を確保する上で重要な役割を果たし、ダリットが国家から低開発集団として法的に承認されることの一助となりうること、さらには司法への平等かつ効果的なアクセスおよびカーストに基づく暴力の減少を確保するための鍵となりうると話された。
また、国内から部落解放同盟中央執行委員の山鈴子さんの報告があった。「1985年、女性差別撤廃条約を批准した年の第3回世界女性会議(ナイロビ会議)NGOフォーラムに参加し刺激を受け、1995年の第4回世界女性会議(北京会議)NGOフォーラムには56人の部落女性で参加しワークショップを開催し、さらには2003年にニューヨークで開催された国連・女性差別撤廃委員会を傍聴し、各委員に部落女性の差別の実態を訴えた。こうした活動の成果として、日本政府に対して、マイノリティ女性の労働・雇用・健康・教育・暴力などの実態をデーターとして出すよう勧告が出された。2005年、部落解放第50回全国女性集会でアンケート調査を実施し、その調査結果をもとに、政府・自治体へ23項目、女性団体等へ2項目、マイノリティ内部へ4項目の提言を行った。その後も7府県連女性部でアンケート調査を続け、2006年から2013年にかけて11,265人が回答した。2009年、2016年には国連・女性差別撤廃委員会からの勧告があったが政府は無視している。部落解放同盟では、男女平等社会実現基本方針を2016年に決定し、12の具体的項目を実現しようと努力している。」
続いて大阪歯科大学講師、反差別国際運動(IMADR)特別研究員の李嘉永さんからの報告だった。「現在、日本について効力を発生している国連人権諸条約は14に上る。しかし日本政府は、最高裁判所を最終審とする裁判制度との整合性を懸念して、いわゆる個人通報制度に関する権限を認めていない。そのため、日本について利用可能な条約の履行監視制度は、国家報告制度のみとなっている。日本政府は、世系に基づく差別に関して、カーストやそれに類似する地位の世襲制に基づく差別を含むとする人権差別撤廃委員会の解釈を受け入れておらず、人種差別撤廃条約上の規定は、部落問題に関して適用されないという立場を崩していない。人権理事会で十分に議論されておらず、進展がみられる見通しもない状態である。このような課題を克服するには、部落差別解消推進法の履行に関し、これらのさまざまな文書・勧告の内容を加味して、差別解消のための取り組みを粘り強く働きかけることが必要である。そうすることによって、実質的に、それらの国際機関の勧告が履行されることにつながっていくと思われる。またその際、このたび取りまとめられたガイダンス・ツールで示された人権条約上の規範を具体化する手法は、大いに参考になるだろう。」
最後に質疑応答があり、シンポジウムは終了した。世系に基づく差別によって苦しんできた何億もの人たちも、そうでない人たちもガイダンス・ツールを基に連帯することを切に願う。

副住職拝

この記事に

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
  • 名前
  • パスワード
  • ブログ

本文はここまでですこのページの先頭へ
みんなの更新記事