〚論壇紹介〛
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11月29日の読売新聞の報道によれば、民主党が来年4月からの道路特定財源の暫定税率廃止と同時に、温暖化対策税(環境税)を導入する方向で検討に入ったという。 では、それによってガソリンの価格はどうなるのか。 現在ガソリンにかかっている暫定税率は1リットル当たり25.1円なので、それを廃止すれば、その分だけガソリン価格が安くなるはずだ。 ところが、11月11日に発表された環境省の「地球温暖化対策税の具体案」(PDFファイル)によれば、ガソリンには1リットル当たり20.1円の温暖化対策税が課税されることになっている。 暫定税率の廃止は、民主党がマニフェストに盛り込んだ主要公約だ。つまり、民主党のマニフェストを信じて、ガソリンが1リットルあたり約25円安くなると期待していたのに、実際には5円しか安くならないことになる。 これでは、国民はだまし討ちにあったようなものではないか。百歩譲って、それが地球環境保全に大きく貢献することになるのならいい。ところが、ここにはどうにも納得できないからくりが隠されているのだ。 2年間の「暫定」のはずが、35年間も延長を重ねてきた そもそも、暫定税率がスタートしたのは1974年度のこと。第1次石油ショック後の不況対策として道路工事を進めようという発想のもとに、田中角栄内閣の1974年に導入されたものだ。 当初はその名の通り、2年間の暫定的な措置とされていた。ところが、それから35年間もずるずると延長を重ねてきたのである。 当時は、今ほどは自家用車が普及していなかった。自家用車を所有しているのは金持ちが中心だったといってよい。そんな金持ちから税金をとって、道路をつくろうとしたわけである。 だが、時代は変わって、庶民も自家用車を持つようになった。また、すでに道路建設の必要性は当時ほどはない。 それなら、いったん廃止して本来の形に戻しましょうというのが民主党の主張であった。確かに、この考えは筋が通っている。 ところが民主党は、暫定税率廃止でガソリンを1リットル当たり25円引き下げると約束したとたん、温暖化対策税として減税分の8割を増税するというのだ。 これに対して、「民主党は環境重視なのだから仕方がない」と思う人も多いだろう。鳩山総理は温室効果ガス25%減を公言した以上、温暖化対策になんらかの負担が生じることもやむをえないという意見はありうる。 だが、本当に二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスを減らそうというのであれば、排出する量に応じた税金を課さないといけない。 二酸化炭素をたくさん出すものに多く課税をして、それほど出さないものには少ない課税額にするということにしないと、環境対策にはならない。これは、わたしがあえていうまでもなく当然のことである。 ところが環境省の温暖化対策税を見ると、そうはなっていないのだ。 そこで、もう一度「地球温暖化対策税の具体案」(PDFファイル)を見てみよう。 原油、石油製品の温暖化対策税は、1リットル当たり2.78円である。ところが、ガソリンだけはそれに上乗せ課税として、1リットル当たり17.32円がプラスされることになっている。 つまり、灯油や軽油、重油などは、1リットル当たり2.78円の税額なのに、ガソリンだけは1リットルあたり20.1円になるわけだ。7倍以上の税額になってしまうのである。 仮に、ガソリンのほうが灯油や軽油、重油よりも7倍以上の二酸化炭素を排出するならば、これも納得できる。だが、同じ石油製品でそんなに二酸化炭素排出量が極端に違うわけはない。 排出する二酸化炭素はガソリンよりも灯油や軽油のほうが多い では、それぞれの燃料1リットルが完全燃焼した場合の二酸化炭素排出量を比較してみよう。 環境省が発表している「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令 第3条 排出係数一覧表」(PDFファイル)によれば、ガソリンが2.32キログラム、灯油は2.49キログラム、軽油は2.62キログラム、A重油は2.71キログラムとなっている。(表の一番右の「参考」の値。化学的に計算してみると、前提条件によっては、この数値とは多少の誤差が生じるものの大きな違いではない) こうしてくらべてみると、排出する二酸化炭素の量はそれほど変わらない。いや、それどころか、灯油や軽油のほうがガソリンよりも二酸化炭素を多く排出することがわかる。 それなのに、灯油や軽油の温暖化対策税がガソリンの7分の1以下というのは、誰が考えてもおかしいのではないか。 ガソリンに対する温暖化対策税の額が飛び抜けている理由 さらに、石炭の温暖化対策税は、1キロ当たり2.74円とされている。では、石炭1キロが排出する二酸化炭素はどれだけかというと、石炭の品質にもよるが、さきほどの環境省の資料によれば、一般炭であれば2.41キログラムとなっている。 液体の燃料と石炭を比較するのは難しいが、二酸化炭素排出量1キログラムあたりの温暖化対策税ならくらべることができる。すると、ガソリンが8.66円、灯油が1.12円、石炭が6.60円ということになる。 地球温暖化にとって目の敵にされている石炭よりも、ガソリンは大きな温暖化対策税を課せられることになるのがわかる。これはいくらなんでもおかしいのではないか。 この矛盾に対する答えは1つである。いま政府が検討しているガソリンの温暖化対策税は、暫定税率の看板の掛け替えに過ぎないということだ。 暫定税率を維持したければ素直に国民に説明すべき 暫定税率を廃止するといいながら、温暖化対策税でその8割を埋め合わせするというのは、まるで詐欺ではないか。どうしても暫定税率を廃止するのが難しいというならば、鳩山総理は国民に対して素直に謝罪して、次のように説明すべきではないか。 「本当は暫定税率を今すぐにでも廃止したいのだが、それでは予算を組めない。申し訳ないが、少し待ってほしい」 国民も財政が苦しいのはわかっているのだから、「そういうことだったら仕方がない」と納得する人も多いだろう。 だが、環境を隠れ蓑にして、暫定税率を事実上復活させるなどとは言語道断である。 わたしは、鳩山総理が掲げた「2020年に温室効果ガス排出量を1990年比で25%減にする」とした目標は、大変に立派なものだと評価している。 だが、それを実現させるためには、省エネルギー機器の開発と普及を中心とすべきであり、今回の温暖化対策税のような姑息な手段でやるべきではないと思うのだ。(2009年 12月14日 日経ビジネス) |




