私見暴論−Japon Renaissance

和魂覚醒の時は至れり。(FC2支所 「荒魂」)

〚論壇紹介〛

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<乾 正人>(産経論説委員) 『「小沢帝国」誕生の足音 』

 あっという間に政権交代という大きなドラマが起きた今年も仕事納めを迎えた。主役は母親から毎月1500万円もらっていながら「知らなかった」と言い訳する鳩山由紀夫首相ではなく、天皇陛下の胸中まで手に取るようにわかるらしい民主党の小沢一郎幹事長であることは、賢明な読者のみなさんには自明のことだと思う。
 誰も褒めてくれないので、少々自慢しておくと、5月に小沢氏が西松事件で代表の座を降りたとき、私は「まだ早い『さらば、小沢一郎』」と予言し、鳩山氏が民主党代表に選ばれた際には「傀儡(かいらい)とはいいたくないが」と書いた。民主党支持者とおぼしき読者からお叱(しか)りのはがきや手紙を多数頂戴(ちょうだい)したが、結果はご覧の通りである。
 首相があれほどこだわっていたガソリン税の暫定税率廃止は、小沢氏の一喝で実質的に維持されることになった。本人は否定しているが、天皇陛下と中国の習近平国家副主席との会見も小沢氏が首相サイドに強く「要請」して実現したと多くの関係者が証言している。どちらがこの国を動かしているかは一目瞭然(りょうぜん)である。
 最近になって小沢氏は、「総理大臣になって、本当にみんなのためにやれると皆さんが思ってくださるときがあれば、拒む必要はないと思っている」(テレビ東京の番組)と首相就任にも意欲をみせるようになった。裏側から首相を操るよりは、よほどすっきりするが、「小沢首相」誕生は、この国の議会制民主主義を破壊しかねない大きなリスクを伴う
 「お前が小沢嫌いだからそんなオーバーなことを書くのだろう」というお叱りを受けるのは承知の上だが、証拠をあげよう。小沢氏は首相官邸を訪ね、来年度予算に関する要望書を渡した際、こう発言している。
 「党というより、全国民からの要望なので、可能な限り予算に反映させてほしい」
 民主党の要望は、ガソリンの暫定税率維持など18項目だったが、少なくとも国民の一人である私は、これらの要望をした覚えもなければ、賛成した記憶もない。むろん自民や公明、共産といった野党支持者の声もほとんど反映されていない。
 もっとあきれたのは、首相が「党というより国民の思い。感謝したい」と応じたことである。「民主党の方針=国民の意向」論を何の疑問もなく受け入れたのである。私なぞは「非国民」というわけだ。
 これは、全体主義に近い「一党制」を志向する考え方である。一党制とは何か。本棚で埃(ほこり)をかぶっていた政治学の教科書を引っ張り出してみると、「全体の利益を独占的に代表すると称する一つの政党が、政治による社会の統制を再生産していく」システムとある(「政治学講義」佐々木毅著)。
 一党制では、自由な政治的意思表示と選択の機会がない。共産党が支配する中国の国家体制に近く、小沢氏が自らを人民解放軍の司令官になぞらえたのも単なる偶然ではない。
 過日、盛岡市内で開かれたパーティーで地元選出の国会議員がこうあいさつした。
 「(岩手では)小沢王国が完成した。しっかりと国会で仕事をして小沢帝国を目指します」
 帝国の誕生はすぐそこまで迫っている。
(2009.12.28)

週刊ダイヤモンド編集部 「鳩山政権の規律不在のばら撒き予算は、将来にツケ回す亡国の愚策だ。」

 鳩山由紀夫内閣は15日、国家予算に関して、将来に重いツケを回す二つの閣議決定を行った。
 第一は、2009年度の国債発行額を過去最大の53兆4550億円に膨張させる結果を招く第2次補正を決めたことだ。
 そして第二は、2010年度の本予算の編成方針で「約44兆円」というなんとも曖昧な国債発行枠を設けて、当初予算として過去最悪のばら撒き予算を編成する方向に舵を切ったことである。
 日本の財政史上、これらの閣議決定ほどの愚策を過去に捜すのは難しいのではないだろうか。
 ちなみに、当時、財源には、麻生太郎政権が編成した第1次補正予算の一部執行停止などでねん出した2.7兆円をあてることが検討されていた。
 だが、この第2次補正予算の編成には、首を傾げざるを得ない。というのは、ドバイショックの震度が当初予想されたほど深刻なものではないことが明らかになったのに、ブレーキを踏むことなく、鳩山政権が大盤振る舞いを断行してしまったからである。
 日本企業の状況を部門別に見てみよう。例えば、大手ゼネコンなどの日系企業がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国の政府や政府系企業に対して持っている工事代金などの債権のうち、未回収分は約75億ドル(約6600億円)にとどまっていることが、11日までの日本政府の集計で明らかになっていた。
 また、それ以前には、新聞報道によって、邦銀の現地融資が総額で1000億円程度にとどまっていることも判明していた。個別には、最大が三菱東京UFJ銀行の600億円程度、三井住友銀行が200億円弱、みずほコーポレート銀行が約100億円などとなっていた。これは決して少ない額とは言えないが、メガバンクならば十分に自力で処理できる金額である。
 さらに言えば、ドバイショックの問題の本質は、ドバイ当局などの無責任な情報公開姿勢にあり、経済的損失は懸念されたよりはるかに小さいことが把握できたことから、円を含む外国為替相場も落ち着きを取り戻していたのである。

−国債発行額が税収を上回るのは63年ぶり−

 それにもかかわらず、鳩山政権は、政治的なパフォーマンスを優先した。そのために、15日の閣議で、当初想定していた2.7兆円を大きく上回る7兆2013億円の緊急経済対策を含む第2次補正を断行したのである。
 当然のことながら、自公政権が編成した第1次補正予算の一部執行停止でねん出した2.7兆円では財源が不足した。9.3兆円の新規国債を追加発行せざるをえなくなったのだ。
 その結果、2009年度予算の歳出入規模は102.5兆円に急膨張した。税収の方も当初見込みから9.2兆円の下方修正があって36.8兆円に減った。穴埋めもあって、新規国債の発行額は、過去最大の53.4兆円に膨らんだ。国債発行額が税収を上回るのは、終戦の翌年にあたる1946年度以来、実に63年ぶりのことである。
そして、驚くべきことに、鳩山政権は引き続き、この政権にとって最初の本年度予算編成となる2010年度予算でも、政治の意志として、この緩んだ財政規律を締め直さないまま、編成作業を推し進めようとしている。
 その象徴が、すったもんだの末、いかにも拘束力はないと言わんばかりの「約44兆円」という表現にとどまった国債発行の上限枠を設定したことだ。藤井裕久財務大臣が繰り返し、その重要性を説いていたにもかかわらず、鳩山由紀夫首相と平野博文官房長官らがその発言を無視して、こういう結果を招いてしまった。
 民主党が先にまとめた概算要求では、歳出が実に95兆円の巨費に達している。だが、これはある種の過少見積もりだ。実態に合うように、予算額を具体的に記入しなかった「事項要求」を勘案すると、概算要求規模は98兆円にのぼると見るのが妥当だろう。
 鳩山政権は、埋蔵金の掘り起こしなどによる税外収入で10兆円程度を賄うとか、歳出は91兆円まで削るとか勇ましい掛け声をかけているが、実現が容易でないことは明らかである。鳩山首相が8月の総選挙のマニフェストの冒頭で掲げた「税金のムダづかいを徹底的になくし、国民生活の立て直しに使う。それが、民主党の政権交代です」という言葉は、むなしく響くばかりである。

−膨大な需給ギャップは財政出動では埋められない−

 現下の経済状況について、鳩山政権は15日に閣議決定した「予算編成の基本方針」の中で、雇用環境の一層の悪化や円高懸念などに加えて、先行きに「デフレによる景気抑制圧力の拡大」と「財政悪化に伴う長期金利の上昇」という打つべき手が相反する、2つの懸念材料が存在すると述べている。
 このうち、デフレ懸念の方は、ゼロ金利下での流動性の供給という金融政策だけでは力不足であり、需給不足を補うための財政出動という政策の採用が正当化される問題である。こうした観点から、有力エコノミストの中に「積極財政が必要だ。その結果としての財政赤字は歓迎すべきである」といった意見も確かに存在する。
 しかし、ここで冷静に考えてほしいのは、やはり15日、内閣府が発表した日本経済の需給ギャップのマイナス幅が、2009年7〜9月期に年35兆円程度とあまりにも巨大だったことである。このギャップは、すでに、少しぐらい財政支出を膨らませたぐらいで埋められるような規模ではないのである。
その一方で、財務省によると、すでに2008年の段階で、先進7ヵ国のうち、国と地方をあわせた政府部門の債務残高がGDPを上回っているのは、日本とイタリアの2ヵ国だけだ。しかも、日本はその比率が170.9%とイタリアのそれ(117.1%)を大きく上回るワースト国家なのである。積極財政という痛み止めを打ち続けられるような体力は、日本の財政に残っていないのだ。
 あえて、こうした中で、痛み止めを打ち続ければ、鳩山政権自身が基本方針でそのリスクを認めたように、「財政悪化に伴う長期金利の上昇」という、もうひとつの経済危機を招きかねない。
 加えて、今後の財政政策を組み立てるうえで、どうしても勘案しないわけにはいかないのが、世界に例のないスピードで進んでいる日本の少子高齢化と人口の減少という問題である。
 国立社会保障・人口問題研究所によると、2025年の総人口は1億1927万人と2005年より850万人も減る見通しだ。そして、そのうち65歳以上の高齢者が占める割合は31%と、同じく20年間に10%も上昇するという。つまり、日本は、経済や財政を支える現役世代が層として厚みを失うにもかかわらず、全体としての負担が激増し続けるという苦難に直面しているのである。

−真に必要なのはばら撒きではない抜本策−

 繰り返すが、ばら撒き財政は単にマニフェスト違反であるだけでなく、鳩山内閣の亡国行為である。むしろ、必要なのは、将来を見据えた抜本策である。
 いつの間にか有耶無耶にされてしまった日米の自由貿易協定を足場に、中国や東アジア全体を取り込む壮大な自由貿易圏を構築し、人口減少と需要の減少に苦しむ日本経済のテコ入れを図る戦略は不可欠だ。出産後の女性の離職を減らして、労働力人口を増やすだけでなく、家事・子育て需要を創出する政策も有効なはずである。あるいは、技術者を中心とした外国人労働者や移民の受け入れ拡大による消費人口の増大を目指す案もあるだろう。
 下がったとはいえ、まだ鳩山政権に対する世論の支持率は高い。なんとか、国民の感情的な反発を抑えて、コンセンサスを作る指導力を発揮してほしいものである。
(2009年12月18日 ダイヤモンドオンライン)

花岡 信昭(拓殖大学大学院教授) 日米同盟を重視しない政権は倒れる

 鳩山政権が直面している難問は「3K」だという。基地、献金、経済(景気)だ。いずれも政権を揺さぶる大問題だが、献金と経済はいってみれば「内向き」の話である。それに比べて基地問題は日米関係そのものに直結する。重要度はおのずと違ってくる。
 
 日米関係を悪化させた政権はもたない、というのが日本の政界の半ば常識である。鈴木善幸氏がそうだった。「日米同盟には軍事的側面は含まれない」といった発言をして、米側の不信感をあおりたててしまった。 
 1981年5月、当時のレーガン大統領との会談後の記者会見での発言である。日米関係は一気にぎくしゃくしたものとなり、伊東正義外相の辞任という事態にまで発展した。これによって、日米関係の悪化は当面は食い止められたかに見えたが、そうではなかったようだ。
 
 鈴木氏は翌82年秋の自民党総裁選で当時の党内事情からいえば再選確実とされていたが、自ら退陣を表明した。この理由として、米側の「圧力」がささやかれた。

−米側の「圧力」はあったのか−

 あの当時を思い出すと、82年6月、鈴木氏はパリのベルサイユ・サミット(先進国首脳会議)に出席、筆者は政治部記者として同行した。いま考えれば、ずいぶんと贅沢な旅をしたものだと思うが、サミットを終えてからニューヨークで国連軍縮総会に出席、さらにペルー、ブラジルを訪問し、最後に時差調整の名目でハワイに寄った。
 17日間世界一周である。当時は政府専用機がなかったから、チャーター便であった。サミットまでは経済部なども同行したから、チャーター便の記者席はぎっしりと埋まっていたが、3日間、ほとんど徹夜状態でサミットを終えると、あとは政治部の担当記者だけになった。
 チャーター機の窓際にそれぞれが席を占め、ゆったりと座った。隣の席があいているから、訪問国で不要なものはそのまま置いておけた。旅の最後に、ハワイで同行記者との「内政懇談」が行われた。
 内政懇談というのは政界要人の外遊のさい、同行する政治部記者としてはもっとも重要なものだ。内政について話すのなら国内でやればいいではないかといわれそうだが、外国での発言だから、多少踏み込んでも許されるという慣例があった。
 懇談の焦点は当然ながら、その年の秋に迫った自民党総裁選への対応であった。鈴木氏はウイスキーの水割りのグラスをカラカラと揺らせながら(これが鈴木氏のクセで、担当記者はこういう懇談の場を「カラカラ亭」と呼んでいた)、「自然体で臨むよ。オレはいつもそうしている」と述べた。
 自民党内では再選確実と見られていたから、自然体ならば再選の流れに乗るという意味になる。各社とも「鈴木氏、再選に意欲」という記事を送稿した。結果的には、これが米側をいたく刺激したようだ。

−アメリカ重視派の中曽根氏へ政権移行−

 鈴木氏は総裁選を前に突然の退陣表明を行うことになる。ハワイ発の記事は誤報となってしまった。鈴木氏はその後も退陣表明に至る裏事情を語ることはなかった。表向きには「和の政治を掲げた以上、党内に亀裂が生じるようなら退陣すべきだと思った」などと説明していた。
 たしかに、党内親米派が「日米同盟は軍事同盟ではない」という鈴木氏の発言をめぐって揺さぶりをかけていたのは事実だ。その背後に米側の意図が透けて見えたのである。
 鈴木政権の後継者としてアメリカ重視派の中曽根康弘氏が登場したのも、そういう経緯からみれば納得できる。日米関係を悪化させた政権は長続きしないのだ。

−鈴木氏のケースより事態は深刻−

 鈴木氏の場合は「問題発言」から1年余りもったが、今回は事情が異なる。10数年の議論を経て、3年前に日米間で合意していた普天間基地のキャンプ・シュワブへの移設をどうするかという現実的な話である。
 鈴木氏の場合、政治家としての出発時点では社会党に籍を置いていた。軍事同盟ではないという発言の背後には、そうした経歴による政治信条がちらりと顔をのぞかせたのではないかとも見られた。
 普天間基地の移設問題を軸にして、アメリカ側の対日不信は頂点に達している。閣僚級の作業グループの開催打ち切りまで通告されてしまった。来日したオバマ大統領に「私を信じてほしい」と述べたとされる鳩山首相だが、移設問題の結論を出せないままだ。
 ここが鈴木氏のケースよりも深刻だとされるゆえんだ。鈴木氏は記者会見での発言が問題視されたのだが、今回は移設問題の政治決断が迫られているのである。
 鳩山首相はかつて「常時駐留なき安保」を主張したこともある。最高実力者の小沢一郎幹事長は「第7艦隊にまかせておけばいい」といった発言もした。
 米側が強い疑念を持っているのは、そうした背景があるからだ。小沢氏はよりによってこの重要な時期に所属議員140人を引き連れて訪中する。「親米派ではなく親中派」と米側が見るのも無理からぬところだ。

−「寄せ集め政党」の弱さを露呈−

 先の総選挙で民主党マニフェストは、外交・安保問題にはほとんど言及していない。旧社会党から自民党までの「寄せ集め政党」の性格を持つから、統一された外交・安保感覚がないのである。これを議論しはじめると、党内の「バラバラ感」を表に出すことになってしまう。
 ここが鳩山政権の最もあやうい側面だ。繰り返すようだが、内政課題ならばなんとでもなる。日本の外交・安保政策の基軸であるべき日米関係に決定的なヒビを入れてしまっては、国際社会での国の位置づけそのものにかかわってくる。
 基地問題で決断ができないのは、いうまでもないが連立政権に社民党を抱えているためでもある。衆院では圧倒的多数を制しているのだが、参院では社民党や国民新党などの助けがないと過半数に達しない。
 社民党の福島瑞穂党首としては「米軍基地反対」が党是ともいえる拠り所だから、ここは一歩も引けない。キャンプ・シュワブへの移設をあっさりと容認するわけにはいかない。
 政治の世界のことだから、連立を組む3党で「玉虫色合意」が成立する可能性もなしとしない。どちらにも読み取れるような合意文書をつくり、鳩山首相が移設決断を表明する。社民党は3党合意に反すると表向きは異議をとなえるが、結局はこれに従うというシナリオだ。
 そういう「政治的芸当」ができるのかどうかということになるが、本来は外交・安保政策で水と油の社民党を抱え込まなくてはならないところに無理があったといわざるを得ない。

−日本の安全保障政策の根幹が問われている−

 改めて言うのもなんだが、日本の安全保障政策の根幹を踏まえる必要があるのではないか。日本の安保の核心はアメリカの「核の傘」である。これがあるからこそ、隣国に核保有国があらわれてもあわてなくてすむ。そのことを踏まえないと、安保政策は成り立たない。
 日米安保条約は世界の同盟条約を見ても、唯一といっていい特異なものである。日本が攻撃を受けた場合、アメリカが助けに来てくれるが、アメリカが攻撃を受けても日本は何もしなくてもいい。憲法9条によって、集団的自衛権の行使が容認されていないという事情による。
 こういう「片務条約」であるからこそ、日本がアメリカに基地を提供し、米軍が存在するのである。アメリカのプレゼンスがあってはじめて、日本の安全保障が保たれるということになる。
 グアムあたりにいれば十分ではないかという議論もあろうが、北朝鮮のミサイルは発射されたら10分たらずで日本に到達する。分秒を争う事態になるのであって、だからこそ、米軍基地が日本にあることの意味合いが出てくる。抑止力を形成する中軸が在日米軍基地ということになる。
 社民党などが主張するように、米軍基地の国外移設という事態が起きたら、東アジアの一角に軍事バランスの空白が生ずる。これは平和と安定を乱す要因になりかねない。
 いざというときに日米安保が有効に機能するのかどうか。その点の絶えざる検証が日本の安保政策にとって死活的に重要になる。これが安保政策のイロハである。
(2009年12月10日 NIKKEIBP)

田村 賢司(日経ビジネス編集委員) 地方発「さらば自民党」

 歴史的な大敗で下野したが、抜本的な改革の姿は見えない。来年夏の参院選に向けた公募制は広がらず、世襲も容認。業界団体も民主党に侵食され、地盤沈下が止まらない。
 「もう中央に頼っていてはダメだ。自民党は革命的な変革をしないと勝てないのに(党本部は)分かっていない」
 戦国武将、武田信玄の像がにらみを利かせるJR甲府駅前広場にほど近い自民党山梨県支部連合会。幹事長の皆川巖・県会議員は、来年7月の参議院選挙の県選挙区候補者を選ぶ公募が最終段階に来た12月5日、胸の内をぶちまけた。

 総選挙で歴史的な敗北を喫し、下野して3カ月余り。谷垣禎一・元財務相が新総裁に就任してからでも2カ月半が経つというのに、抜本的な改革はほとんど見られない。
 山梨県では前回の参院選(2007年)と今回の総選挙で大敗、自民党の国会議員がゼロになったが、こうした地域を中心に、地方の苛立ちはピークに達している。国会議員からも、「党の綱領を見直し、参院選もすべての選挙区で候補を公募するぐらい(の改革を)やったうえで選挙に臨まないと自民党はなくなる」(舛添要一・前厚生労働相)といった厳しい声が噴出。党内には不満のマグマがたまっている。

−容認に転じた議員世襲−

 改革の停滞は今、2つの方向から自民党に危機をもたらそうとしている。1つは総選挙大敗の要因になった自民党の古い体質が温存される危機だ。
 例えば、政権奪還を目指し、党の再生策を議論する場として谷垣総裁就任後に設けられた「政権構想会議」。派閥領袖の伊吹文明・元幹事長が議長代理として取り仕切るが、具体的な改革案は出てこない。
 
−「和魂党」への党名変更案も飛び出した自民党「政権構想会議」−
 「党の体質、長年政権与党であった慢心、驕り、しがらみなどの結果としての人事の在り方、管理能力の劣化に対し多くの国民が不信感を持ち、我が党の感受性の鈍さ、スピード感欠如に政権交代を選択したのではないか」
 11月6日に出した1次勧告は、総選挙大敗直後に、「自民党再生会議」が総括した敗因とほぼ同じ(下表参照)。再生会議の議論を基に、新たな党再生の理念、方策を練るのが「政権構想会議」の本来の在り方と思われるが、実際には大きく後退した部分がある。
 
−谷垣禎一・自民党総裁には抜本的な改革を求める声が高まるが…− 
 その典型が候補の世襲制限問題。総選挙時のマニフェスト(政権公約)では「3親等以内の親族が同一選挙区から出る場合は次回衆院選から公認しない」としていた。ところが、1次勧告は「現職議員の親族の(候補者)公募への参加を検討する」と容認姿勢に転じた。

 それと引き換えに公募制の積極的活用を打ち出したが、これもその後、公募や党員投票の原則化は「来年の参院選には適用しない」ことになり、結局改革は停滞したままとなった。
 県連が既に候補者を内定している場合は方針を再確認すれば選考し直す必要はないとしたが、候補者未定の選挙区などで公募を行う際に、応募資格に(1)県内の党員20人の推薦(2)選挙区内の有権者100人の推薦(3)県連か支部の推薦――のうち2つを満たすことという厳しい条件をつけた。事実上、その選挙区に何らかの縁故がない限り、応募し難いものだ。

−「党本部の言いなりではダメだ」−

 冒頭の山梨県連などは、そうした改革の遅れに“反発”し、独自の候補者選びを進めている。党本部がつけた党員や有権者の推薦といった条件はすべて外し、「自薦」を受け付けるほか、県議や市町村支部など200人の推薦委員が候補者を推す「他薦」を加えた。その候補者を対象に県連3役と市町村支部、職域支部、青年局、女性局、民間の代表ら15人による選考委員会が候補を選ぶ仕組みに変えたのである。

 結果として、応募は他薦12人、自薦7人の計19人に上った。幹部主導と批判されるのを避けるために、県連会長の堀内光雄・元自民党総務会長は選考委員に加わらず、選考委員会の会長も県連幹部以外から選んだ。

 徹底して現場の意思を尊重したのは「県連幹部が候補を決めて押しつけるような方法ではもうダメ。より幅広い民意を吸い上げるため」(堀内氏)だが、背景には、1つの経験があった。
 前回の参院選で「実際には最初から候補が決まっていながら公募を行い、敗北した」(県連幹部)という手痛い教訓である。当時の公募には八代英太・元郵政相も応募し話題にはなったが、“出来レース”で盛り上がりに欠けた。党幹部主導の選挙では勝てないとの思いはこんなところからも出ている。
 
 山梨県連の皆川幹事長は「山梨の方式を他県でも使えばいい。何でも党本部の言いなりではダメだ」と言う。だが、実態としては大島理森・自民党幹事長の地元である青森県などが党本部の規定通りの方式にする一方、高知県などでは予備選挙を導入するなどバラバラ。勝てる候補を選ぶために選考方法を統一しようという動きはない。
 
 執行部は、「本来、自民党は上から何でも命令してやらせる党ではない」(茂木敏充・幹事長代理)と言う。しかし、国会議員の中からも「公募の際には、外部の有識者やマーケティングの専門家などによる委員会を設けて、『本当に勝てる候補』を選ぶ改革をしないと参院選ではまた大敗しかねない」(平将明・衆院議員)という声が上がる。

−勝負は2011年の統一地方選−

 地方任せは、ベテラン議員への配慮ではないか、といううがった見方もある。「特定の人が権力を握っている参院自民党の方が体質はさらに古い」(ある自民党衆院議員)。そうなると、「現職のいる選挙区で公募をするのは難しい」(柴山昌彦・衆院議員)というのだ。

 一方の民主党は、地方の団体からの陳情を地元県連が一括して受け、党本部の幹事長室に上げる方式を取り始めている。表向きは、「族議員の発生をなくし、必要な事業を選別して進めるため」(山梨県選出の民主党参院議員、米長晴信氏)とする。だが、実際には業界団体をまとめることで、「風頼み」「組織力のなさ」といった弱点を払拭する狙いもありそうだ。

 今でも地方議会は自民党が圧倒的な勢力を持つところが多い。自民党の国会議員がゼロの山梨でも県議会は自民党22議席に対し、民主党3議席。だが、各種団体が民主党になびけば、地方議会の勢力図をひっくり返しかねない。ここに自民党の2つ目の危機がある。

 「山梨では自民党支持の地元業界団体が民主党支持に転じている事実はない」と皆川幹事長は言う。だが、その山梨県でさえ、医師会や農協、建設業協会など主要団体の一部が民主党に秋波を送り始めたとの噂が広がる。こうした業界団体の変化に、県議の間にも動揺が広がっているとの声もある。

 「本当の勝負は(2011年の)次の統一地方選挙」(樋口雄一・民主党山梨県連幹事長)。民主党の攻勢に改革なき自民党はいよいよ窮地に追い込まれかねなくなっている。
(2009年12月14日  日経ビジネス)

<経済アナリスト 森永卓郎> ガソリン「暫定税率なくして環境税導入」の裏には、とんでもない「疑惑のカラクリ」があった。


 11月29日の読売新聞の報道によれば、民主党が来年4月からの道路特定財源の暫定税率廃止と同時に、温暖化対策税(環境税)を導入する方向で検討に入ったという。
 では、それによってガソリンの価格はどうなるのか。
 現在ガソリンにかかっている暫定税率は1リットル当たり25.1円なので、それを廃止すれば、その分だけガソリン価格が安くなるはずだ。
 ところが、11月11日に発表された環境省の「地球温暖化対策税の具体案」(PDFファイル)によれば、ガソリンには1リットル当たり20.1円の温暖化対策税が課税されることになっている。
 暫定税率の廃止は、民主党がマニフェストに盛り込んだ主要公約だ。つまり、民主党のマニフェストを信じて、ガソリンが1リットルあたり約25円安くなると期待していたのに、実際には5円しか安くならないことになる。
 これでは、国民はだまし討ちにあったようなものではないか。百歩譲って、それが地球環境保全に大きく貢献することになるのならいい。ところが、ここにはどうにも納得できないからくりが隠されているのだ。
2年間の「暫定」のはずが、35年間も延長を重ねてきた
 
 そもそも、暫定税率がスタートしたのは1974年度のこと。第1次石油ショック後の不況対策として道路工事を進めようという発想のもとに、田中角栄内閣の1974年に導入されたものだ。
 当初はその名の通り、2年間の暫定的な措置とされていた。ところが、それから35年間もずるずると延長を重ねてきたのである。
 当時は、今ほどは自家用車が普及していなかった。自家用車を所有しているのは金持ちが中心だったといってよい。そんな金持ちから税金をとって、道路をつくろうとしたわけである。
 だが、時代は変わって、庶民も自家用車を持つようになった。また、すでに道路建設の必要性は当時ほどはない。
 それなら、いったん廃止して本来の形に戻しましょうというのが民主党の主張であった。確かに、この考えは筋が通っている。
ところが民主党は、暫定税率廃止でガソリンを1リットル当たり25円引き下げると約束したとたん、温暖化対策税として減税分の8割を増税するというのだ。
 これに対して、「民主党は環境重視なのだから仕方がない」と思う人も多いだろう。鳩山総理は温室効果ガス25%減を公言した以上、温暖化対策になんらかの負担が生じることもやむをえないという意見はありうる。
 だが、本当に二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスを減らそうというのであれば、排出する量に応じた税金を課さないといけない。
 二酸化炭素をたくさん出すものに多く課税をして、それほど出さないものには少ない課税額にするということにしないと、環境対策にはならない。これは、わたしがあえていうまでもなく当然のことである。
 ところが環境省の温暖化対策税を見ると、そうはなっていないのだ。
そこで、もう一度「地球温暖化対策税の具体案」(PDFファイル)を見てみよう。
 原油、石油製品の温暖化対策税は、1リットル当たり2.78円である。ところが、ガソリンだけはそれに上乗せ課税として、1リットル当たり17.32円がプラスされることになっている。
 つまり、灯油や軽油、重油などは、1リットル当たり2.78円の税額なのに、ガソリンだけは1リットルあたり20.1円になるわけだ。7倍以上の税額になってしまうのである。
 仮に、ガソリンのほうが灯油や軽油、重油よりも7倍以上の二酸化炭素を排出するならば、これも納得できる。だが、同じ石油製品でそんなに二酸化炭素排出量が極端に違うわけはない。
排出する二酸化炭素はガソリンよりも灯油や軽油のほうが多い
 
 では、それぞれの燃料1リットルが完全燃焼した場合の二酸化炭素排出量を比較してみよう。
 環境省が発表している「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令 第3条 排出係数一覧表」(PDFファイル)によれば、ガソリンが2.32キログラム、灯油は2.49キログラム、軽油は2.62キログラム、A重油は2.71キログラムとなっている。(表の一番右の「参考」の値。化学的に計算してみると、前提条件によっては、この数値とは多少の誤差が生じるものの大きな違いではない)
 こうしてくらべてみると、排出する二酸化炭素の量はそれほど変わらない。いや、それどころか、灯油や軽油のほうがガソリンよりも二酸化炭素を多く排出することがわかる。
 それなのに、灯油や軽油の温暖化対策税がガソリンの7分の1以下というのは、誰が考えてもおかしいのではないか。
ガソリンに対する温暖化対策税の額が飛び抜けている理由
 
 さらに、石炭の温暖化対策税は、1キロ当たり2.74円とされている。では、石炭1キロが排出する二酸化炭素はどれだけかというと、石炭の品質にもよるが、さきほどの環境省の資料によれば、一般炭であれば2.41キログラムとなっている。
 液体の燃料と石炭を比較するのは難しいが、二酸化炭素排出量1キログラムあたりの温暖化対策税ならくらべることができる。すると、ガソリンが8.66円、灯油が1.12円、石炭が6.60円ということになる。
 地球温暖化にとって目の敵にされている石炭よりも、ガソリンは大きな温暖化対策税を課せられることになるのがわかる。これはいくらなんでもおかしいのではないか。
 この矛盾に対する答えは1つである。いま政府が検討しているガソリンの温暖化対策税は、暫定税率の看板の掛け替えに過ぎないということだ。
暫定税率を維持したければ素直に国民に説明すべき
 
 暫定税率を廃止するといいながら、温暖化対策税でその8割を埋め合わせするというのは、まるで詐欺ではないか。どうしても暫定税率を廃止するのが難しいというならば、鳩山総理は国民に対して素直に謝罪して、次のように説明すべきではないか。
 「本当は暫定税率を今すぐにでも廃止したいのだが、それでは予算を組めない。申し訳ないが、少し待ってほしい」
 国民も財政が苦しいのはわかっているのだから、「そういうことだったら仕方がない」と納得する人も多いだろう。
 だが、環境を隠れ蓑にして、暫定税率を事実上復活させるなどとは言語道断である。
 わたしは、鳩山総理が掲げた「2020年に温室効果ガス排出量を1990年比で25%減にする」とした目標は、大変に立派なものだと評価している。
 だが、それを実現させるためには、省エネルギー機器の開発と普及を中心とすべきであり、今回の温暖化対策税のような姑息な手段でやるべきではないと思うのだ。
(2009年 12月14日 日経ビジネス)

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