タンゴ練習帳

アルゼンチンタンゴを演奏するベーシスト(希少価値!)の練習日記

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NHK BSプレミアムで、3/14(木)と3/21(木)の2週にかけてオンエアされる、タンゴをテーマにした番組。昨年放送された「栗山千明のタンゴカフェ」という番組が好評だったのかどうか知らないが、その続編となる。前作は、完全なサロンタンゴ入門というアプローチの番組だったのだが、今回は本場ブエノスアイレスまで行って、ステージタンゴを学んじゃおうという(そしてステージに上がっちゃおう)という大胆な企画。わずか1週間程度で何ができるんだよ!という諸兄のツッコミが聞こえてきそうだが、まあそこは番組ですから。ね。暖かく見守りましょう。
 
 
その前半を先ほど見終わった。ストーリーとしては、ブエノスアイレスの現地に行き、そこで、タンゴの世界チャンピオンに輝いたこともあるガスパルとそのパートナー、アレハンドラに栗山千明がステージタンゴの手ほどきを受けるというもの。その中で、タンゴの理解を深めるために、ミロンガに行ったり、タンゲリアに行ったり、サンテルモ地区の広場に出かけたりと、ブエノスの空気を一杯吸い込むわけだが、見ているだけでよだれが垂れそうだ。こうやって見ると(NHKのカメラマンの腕がいいこともあるが)、ブエノス行きたいなーと思ってしまう。それだけでも、見ていて楽しい番組ではある。
 
僕はダンスはほとんどやらないので、ダンスについてあまり語ることはできないが、ガスパルが千明と踊るための曲として選んだのが、プグリエセの「Recuerdo」。ちょっとタンゴを知っている人なら、「なんて大胆な!」と思うだろう。何しろ、この曲は有名中の有名曲で、タンゴのマエストロの中でもマエストロと呼ばれる巨匠プグリエセが、19歳のときに作ったという名曲である。かのアニバル・トロイロも、この曲を聴いて、「私はこれまでいろんな曲を作ったが、死ぬまでにこんな曲を一曲でいいから作ってみたい」と言ったとか言わないとか。それほど、タンゴを愛する人達に愛され慕われ口ずさまれてきた曲だ。日本だったら、さしずめ美空ひばりの曲を外国人が歌うくらいのインパクトだろう。イタリアのオペラだったら、ヴェルディの椿姫を歌うようなものか。それだけ、愛されている曲なので、タンゴ好きなら誰でも知っている。知っているどころか、深い思い入れがあるはず。かく言う僕だってそうなのだから、本場ブエノスの人がこの曲に対して抱いている感情なんて、それこそ計り知れない。
 
そう思っていたら、ガスパルがまずはこの曲を聴きましょうと言って、踊る前にまず曲を3人で黙って聴くシーンがあった。聴き終わって彼が何を言うのかと思ったら、「ダメだ、泣いてしまいそう」だって。パートナーのアレハンドラも同じことを言っていて、目頭を押さえている。これを見たとき、僕は「わかるー、わかるよー!」と、一人テレビの前で盛り上がってしまったのだが、そう、そういうもんだと思う。ダンスの前に音楽がある。その音楽をまずは理解すること。それこそがまずはタンゴを知るうえで大事なことだと思う。何もそんな難しいことを言ってるんじゃなくて、音楽を感じて、そこに感情を乗せればいいのだ。そういう意味では、この「Recuerdo」という曲は、誰が聴いてもいい曲だし、ドラマチックで、その世界をイメージしやすい。おそらくそういう意味で、ガスパルもこの曲を選んだのだろう(深読みしすぎ?)。
 
で、レッスンが始まる。最初のシーンは、昔の恋人同士がばったり出会うシーンだ。千明ちゃんは緊張しているのか、どうも身体が硬い。そして反応が鈍い。そこを見てすかさずアレハンドラが突っ込む。「あなたはとても日本人だ(Muy japonesa)。下ばかり見てる。もっと顔を上げなさい。アルゼンチンの女になりきりなさい。アルゼンチンの女はこうやって胸をそらして、踊るのよ」と。そしてこうも言っていた。「久しぶりに出会った恋人なのよ。イメージして。驚きを表現して」(内容はアバウトです)。うん、それもよくわかる。結局のところ、ステージタンゴというのは、演技と同じ。ダンスではあるが、エチュード芝居と同じだ。そこでは役柄を演じきらなければいけない。それも、常に観客に見られているという意識を持って。これもまさに芝居の基本。もしかすると、千明ちゃん、あなたが学ばなければいけないのは、演技そのものなのかもしれないよ(彼女、女優なんだけどね)。
 
実はつい最近、同じようなテーマで少しものを書いたりしてたので、あまりにもタイミングよすぎたので、ちょっとびっくりしたというか。タンゴを表現する有名な文句として、「El tango es un pensamiento triste que se baila.」(タンゴは、踊ることのできる悲しい感情である)というのがあるけど、じゃあ、ステージダンサーはどうやってタンゴを踊ればいいのか。今日の番組内では、千明ちゃん、やたらと「どうやって自分を表現できるのか?」みたいなことを言ってたけど(まあ脚本だとは思うけど)、確かにタンゴダンスはある意味、自己表現だけど、「自分を表現する」なんてことは思わないほうが僕はいいと思う。タンゴというのは、悲しみや苦しみや嘆きそのもので、タンゴという音楽はそれを表現している。だから、タンゴを踊ると言うことは、すなわち悲しみを踊ることなのだ。そういう行為の中で、いかに自分をそのタンゴに溶け込ませていくか。それには、自分の中にある悲しみや苦しみを増幅させるしかない。ただひたすらに、無我夢中で悲しみにひたる、悲しみをまとった音楽にゆだねる、それこそが、究極のタンゴ的表現なのではないかなと思ったりもするのだ。
 
番組の中で、かつて「タンゴ・アルヘンティーノ」を全世界に広めた偉大なダンサーのマエストロ宅を訪れる場面があったが、そこでマエストロ夫妻が話していた言葉もやはり印象的だった。「いろんなダンス学んだけど、タンゴにかなうものはなかった」「タンゴは人生でなくてはならない存在。これからもずっと」。タンゴ界ではよく聴かれる言葉ではあるが、つまり、タンゴというのは単なる音楽やダンスではない。それは、生きていくために必要な、悲しみや苦しみといった感情のはけ口でもあり、さらには明日へつながる希望を提示してくれる何かである。そこに寄り添い、その調べに乗せて、自分達の感情を、呼吸とリズムと身体の動きで出していく。それがタンゴなんじゃないだろうか。ある種、宗教的な部分もあるし、ある種気功とか太極拳なんかにも通じるところがある。ダンスはもちろんテクニックなのだが、テクニックだけを教えないというのは、アルゼンチンに限らずヨーロッパなどでもよくある話で、日本から留学した人が結構指摘されることでもあるが、この番組でも、振り付けを覚える前に最初からそういう本質に触れる話がよく出ていた。あとはリズム。この感じ方だろうな。きっと。タンゴは2拍子ということがもっとわかれば、踊りにもメリハリが自然とつくように思うのだが。また次週、期待しよう。
 

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