今日は、安達玉樹バンド改め「Pedazo de Tango」(以下、Pedazo)の練習でした。ピアノの人が来られなくて、基本的にリズムはベースのみって状態だったので、いつも以上に疲れました(ちなみに前日はロスポジの練習日)。でも、いろいろいいところもあったので、バンドとしては上達したんじゃないかと。
今日練習したのは、「Remembranza」「Balada para mi muerte」「Ave Maria」の3曲。
「Remembranza」は以前もやってたけど、今のメンバーになってから譜面書き直したので、そういう意味では初の曲。まあ超有名曲だし、僕はロスポジでも、それ以外でもやってるので(最終的には歌っちゃってるしw)、おなじみの曲なのだが、やっぱりいい曲だ。ロスポジ版はゴビの演奏をベースにしており、Pedazo版はダリエンソ楽団の演奏をベースにしている。YouTubeでも観られるあれである。あんなにたくさんメンバーがいないのに、あの迫力を出そうとするのは無理があるのだが、それでもそういうノリに持っていきたいと思う。それがベーシストである。
ベース的にいうと、ダリエンソ楽団の演奏はひたすら疲れる演奏である。何しろほぼアルコ(弓)を使わない。ほぼ一辺倒でピチカートである。それも生半可なピチカートじゃない。ロカビリーのスラップベースに近いノリの激しいアタックを行うピチカートである。これを再現しようとすると、指が弦に激しくこすれるので、当然ながら指にダメージが来る。つまりマメができる。でも、これをやらなくてはダリエンソにならない。だから、僕は黙々と指が痛くてもマメができても、スラップし続ける。そして疲れる。これは宿命だ。ロスポジもダリエンソナンバーの持ち曲が多いが、3曲続けるのは自殺行為である。でもやる。マゾだ。完璧なマゾだ。でもやらざるを得ないのだ。ダリエンソとはそういう楽団なのだ。
ちなみに、こんな演奏をしていたら大変なので、プロのベーシストは、以前はこんな弾き方をしなかった。でも最近、こういう演奏をするようになった。みんなダリエンソのあのノリが出したくてたまらないのだろうな。
そんなわけで、「Remembranza」を1時間半くらいやった。中指にマメができそうだった。でも弾かないわけにはいかない。ピアノもいないし、ベースで引っ張るのだ。でも、そのノリはおそらくかなり伝わったと思う。かなりいいノリで仕上がった。やはり、タンゴバンドはベースで引っ張ってナンボだ。そう思わせる演奏だった。
後半は、ピアソラ2曲。それもかなりスローな作品。ダリエンソから打って変わっての展開である。静と動で言ったら、間違いなく静。しかも、ダリエンソの動は「跳躍」なのに対して、ピアソラのこの2曲は「抑制」がテーマだ。ピアソラの曲と言えば、「リベルタンゴ」に代表されるような「動」の印象が強いかもしれないが、実はそんなことはない。特にベーシストから見ると、ひたすら「忍耐」。これがピアソラのイメージである。
ピアソラの多くの曲に共通するコード展開として、ベース音(コード)を変えないというのがある。「リベルタンゴ」であれば、ベースは「A」でワンコーラス、16小節引っ張る。ほかの楽器、たとえばピアノは半音ずつ上がって(1あるいは下がって)いって、曲に動きをつけるが、その場合でもコードは「D on A」みたいな感じになる。要するに、ベース音は変えずに、コードだけが展開していくというわけ。「Milonga del Angel」でも「Romance de l Diablo」でも、ほかの楽器はともかく、ベースだけはひたすら同じコードを弾いていたりする。そしてそれが16小節続いたリする。これは忍耐でしかない。ほかの楽器が美しいメロを歌っている底で、ひたすら「レー、レー、レ」とか「ドー、ドー、ド」とかやっているのである。
でも、これは美学だ。このずっと変わらない通奏低音は、ピアソラの音楽(由来はバロック)に欠かせない要素なのだ。ベーシストであれば、もう少し動きのあるコード展開で弾きたいと思うだろうが、ここはひたすら踏ん張って、同じ音を引き続ける。これをカッコいいと思えるかどうか。僕は、こういうのを無性にカッコいいと思う。ベーシストの本領発揮だ。リズムをキープしながら、ずっと同じルート音を叩き続ける。マゾだ。でもマゾでもいい。ここで踏ん張る俺が最高にカッコいい、と思っているのだ。だから、俺はベーシストなのだ。
ま、そんなわけで、ピアソラの曲は、ベーシストとしての見せ所はほとんどなくても、実はすんごく疲れるわけです。バンドメンバーが勝手に気持ちいいところに行って、走りそうになったり冗長になりそうになったりするのを横目で見ながら、「こら!走るな!」とか「こら!遅い!」とか、そういうのを、少ない音とアイコンタクトと、めらめら燃えるオーラで伝えなくてはいけないのだから。でも、それもこれも含めて、そんなピアソラ曲のベースが大好きなのですよ。この前も、ロスポジの演奏で「Romance del Diablo」を久々に演奏しましたが、あれなんかまさにそんな曲。目立つのは、バンドネオンとバイオリンでいいんです。拍手も彼らに送られていいんです。ベーシストは、自分で納得しています。自分が頑張ったからこの曲が成り立ったんだと。
というわけで、まあ疲れる曲ばかり、ピアノ抜きでやったわけですが、安達君の無茶ぶりで、「Ave Maria」の最初の主旋律をベースが弾け、しかも、オクターブ高く弾けということになり、苦手なハイポジションの演奏に取り組んでいる次第。今日もぼろぼろでしたが、いい機会なので、この際、ハイポジ練習を頑張ろうかと。いつか、ちゃんと弾けるようになるといいなあ。頑張ります。
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