タンゴ練習帳

アルゼンチンタンゴを演奏するベーシスト(希少価値!)の練習日記

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La Juan D'Arienzo 日本公演

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先日、2月6日(金)に、La Juan D'Arienzoの日本ツアー・越谷公演に行ってきた。

正直「La Juan D'Arienzo」なる楽団がどんな楽団なのかはさっぱり知らなかった。webで調べてみたところ、あのダリエンソ楽団のトップバンドネオニスタであったカルロス・ラサリの孫であるファクンド・ラサリが率いる楽団ということらしい。こういうパターンは割と失望することが多い。もちろん、偉大なマエストロと比べてはいけないのだが、サルガンにしてもアグリにしても、という感じがある。そういういろんな意味の不安と期待を感じつつ、会場に向かった。

ほんの2週間前くらいにチケットを取ったのだが、ものすごい前のほうの席だったので、これはチケット売れてないんじゃないのかと思いつつ行ったのだが、会場は1階席はほぼ満席。越谷とはいえ、結構大きめのホールだったのだが、これには驚いた。まあ民音プロデュースなんで、学会関係で席は埋められるのだろうが、それにしてもすごい。僕は前から4列目、しかもセンターという、かつてないほどいい席で観ることができた。

コンサートが始まる。ダリエンソの定番ナンバーが生の音で迫ってくる。ファクンド君はものすごく若い。オルケスタもすごく若い。でも、みんなファン・ダリエンソのサウンドを一生懸命出そうと追求している。いや、かなりいい線で再現している。ダリエンソのような、あそこまでのカリスマもいなければ、カルロス・ラサリや、サラマンカのような才能もいないのに、楽団全体で、あのダリエンソらしいリズムと高揚感を出そうとしている。いや、出している。僕も自分のバンドでダリエンソはよく演奏するからよくわかる。きれいな音、というよりは、迫力のあるややデフォルメ気味のサウンド。キレが勝負。ピアニシモとフォルテシモのダイナミズム。突然訪れる、いたずらっ子のようなブレイク。静寂、そして緊張。ときには優雅に、ときには激しく、ときにはいたずらっぽく跳ねて飛んで遊んで。それがダリエンソのタンゴ。そして、このLa Juan D'Arienzoは、そのサウンドをまったく自分のものにしていた。いいじゃないか!

テクニックがどうこう、お祖父さんのラサリがどうこう。そんなことを言う人もいるだろう。でも、僕にとっては、今、生で聞ける唯一と言ってもいいダリエンソ・サウンドに、前進シャワーのように包まれていた。よく知っている曲、Felicia、Loca、Nueve de Julio、Desde el Alma、El Internado、Hotel Victoria・・・。どの曲も染みついているくらいに身体に叩き込まれている。ここでブレイク、ここでクレッシェンド、ここでフォルテッシモ、ここでバリアシオン、ここでバイオリンソロ、すべて知っている。そのなじみのサウンドが生で襲いかかる。ああ、なんて幸せな瞬間! ステージ上の彼らの気持ちと、4列目で見つめている僕の気持ちがシンクロする。僕はやっぱりダリエンソが好きだ! タンゴが好きなんだ!

オルケスタもよかったが、ダンサーや歌手も一級品だった。歌手は、これまでもダリエンソ楽団とは多くのステージを重ねてきたフェルナンド・ロダスが登場。すばらしき声量の、これぞまさしくアルヘンティーナとも言うべき声で舞台を圧倒した。なかでも、彼の歌った「Paciencia」「La Ultima Copa」「Remenbranza」「Canzoneta」は忘れられない。いまどき、なかなか生で聞くことのない歌バンであるし、何よりダリエンソスタイルの、エッジの効いたサウンドをバックに歌うのである。僕の先輩のTさんという歌手の人が、「ダリエンソ楽団と歌ったときは大変だった。何しろリズム第一で、揺らせないんだから」と言っていたが、このカチカチッとした楽団のリズムを感じながら揺らすのが、歌手の醍醐味なんではないだろうかと思った。それくらい、このロダスさんは、堂々と、力強く、タンゴを歌い上げていた。そこへ、被さってくるダリエンソサウンド。これはたまりません! これが生で聞けただけでも、来た甲斐があったというもの!

さらに、ダンサー陣が素晴らしかった! タンゴのコンサートにはダンスは付きものだが、今回のツアーには、タンゴのダンス世界選手権でチャンピオンになった2組のペアが随行しており、さらに今ブエノスで人気のダンサー1組を加えた3組が、この楽団に付いて全国を回っている。僕はダンスはさほど詳しくないが、やはりチャンピオンのダンスは何かが違う。特に、日本でもあちこちで名前を馳せているカルラ&ガスパルのダンスは、キレといい、雰囲気といい、これまで見た、こうした楽団付きのダンスの中でもかなりいいパフォーマンスだったように思う。

そんなこんなで、楽団ももちろん頑張っていたし、みんなでダリエンソのタンゴならではの迫力と楽しさを出そうとすごく頑張っていて、それもよかったし、歌もダンスも一流だったので、文句なしにエンターテインメントとして楽しめた舞台だった。これまで「外タレ」的な楽団のコンサートで、あまり感動したことはないのだけど、今回の「La Juan D'Arienzo」は、文句なしに楽しいステージでした! と同時に、僕の心の奥底に眠っていたダリエンソ魂をかなり刺激してもらいました! タンゴを聴き始めて最初にいいなと思ったのは、ダリエンソ楽団とトロイロ楽団だった僕ですが、やっぱりダリエンソは好きです! これまでもいろいろな曲を演奏してきましたが、まだまだやってないいい曲いっぱいあるので、ぜひやってみたいと思いました! もちろん歌バンもね。

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